第4話カンスト
世界防衛機構には魔力に目覚めた人を検査するための受付が設けられているらしい。
俺もいつかはそこに行きたいと考えていたが、まさか四十歳でしかもこんなエラーの相談で来るとは思っても見なかった。
思ってたのとは違うけど、このままは心配なので、しっかり歯を磨いてから防衛機構へと向かった。
思わず朝から飲んでしまったので、臭いで酔っ払いのたわごとと受け取られてしまわないかだけが心配だ。
身支度を済ませ電車に乗って防衛機構のビルへと向かう。
「ここだな」
かなり大きなビルだ。
悪い事をしたわけじゃないけどなんとなく入るのに気後れしてしまいそうになる。
覚悟を決めて防衛機構へと踏み込む。
「あの〜すいません。ステータスのことで相談にのって欲しいんですけど」
「はい。どのような内容でしょうか?」
「はい、それが今日になって突然魔力のステータスが生えた。じゃなくてゼロじゃなくなったんです」
「それはおめでとうございます。稀ですが年齢を重ねてから魔力に目覚めることもありますから」
「はあ、そうなんですか。だけど俺のはそういうんじゃないと思うんです。なにかのエラーじゃないかと」
「エラーですか? ステータス値にエラーというのは考えられないと思いますが」
「いや、俺もそう思うんですけど、そうとしか考えられないんですよ」
「とにかく一度検査させていただいてよろしいですか?」
「はい、お願いします」
俺は受付の人に案内されて検査する場所について行った。
「それじゃあ、そこに座ってください」
「はい」
測定器と思われるものの前に座らされて測定が始まるが、すぐに数値が表示される。
「え……うそ。これって……」
「どうですか」
「ちょ、ちょっと待ってください。もう一度測定させてください」
「はい、どうぞ」
もう一度測定されることになったがすぐに測定値が表示される。
「あ……999」
「どうですか やっぱりエラーですよね」
「エラー……そうかも。999って、そんな……」
測定してくれた女の人が戸惑いの表情を浮かべてあたふたしている。
やっぱり俺のステータスはおかしいみたいだ。
「どうすればいいですかね」
「あ、ああ、少しお待ちください。上司を呼んできます」
そう言って女の人はその場から出て行った。
やっぱり、係の人があんなにあたふたするぐらい俺のステータスはヤバいのか。
エラーか。
なにも悪いことしてないのにこんなのってあんまりじゃないか。
これから俺はどうなってしまうんだ?
不安に苛まれながら待っていると、係の女の人が上司らしき男性を連れて戻ってきた。
「花岡さんですね。お話は伺いました。この機械が測定を誤ることはまずありません。間違えたとしてもその誤差は5%以内です。なので花岡さんのステータス値もエラーではないと考えます」
「はい? エラーじゃないってどういうことでしょうか」
「ですので、信じられないようなことですが花岡さんの魔力系のステータスは全て999ということです」
「それは……マジですか?」
「はい、マジです」
「本当の本当ですか? ドッキリとかじゃなくて?」
「はい、本当の本当です。ドッキリじゃないです」
「………え〜〜〜〜〜!」
場所を弁えず思わず大きな声を出してしまった。
だけど、それもやむを得ない事だ。
嘘だろ。俺のステータスが本当に999⁉ ということはジョブに表示されていた大魔導師というのもエラーじゃないのか!
俺が大魔導師で魔力系のステータス999ってどうなってるんだ。
「あの〜、つかぬことをお伺いしますが、ステータスの上限値っていくつなんですかね」
「実際に見たのは花岡さんが初めてですが理論値の上限は999です」
「ということは俺の魔力系ステータスはカンストしてるってことですか?」
「はいカンストしてるってことですね」
だめだ。朝飲んだ酎ハイが今になって回ってきた。
頭が働かない。
ボ〜ッとしてきた。
俺がカンスト。
四十歳童貞の俺がカンスト。
独身の俺がカンスト。
え~っと、カンストってなんだっけ。
帰ってはやく酎ハイを飲みたい。
決してアル中とかではないのにお酒を飲んでしまいたくなる。
今の状況が理解できない。
いや本当は理解はできている。
だけど意味が分からない。
三十歳で魔法使いにはなれなかったのに、俺大魔導士になっちゃったのか?
本当に意味が分からない。
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