第2話 40歳の誕生日
俺のステータスがこれだ。
花岡修太朗 39
ジョブ 会社員
知力59
体力37
技術48
攻撃40
防御43
魔攻0
魔耐0
魔力0
ステータスの平均値が50なので本で知識を蓄えた知力以外は全て平均を下回っている。
20代のころは50を超えるステータスもいくつかあったが、三十を境にいくつかのステータスは下降線に入ってしまった。
これが世にいう老化の始まりかと思うと何とも言えない気分になる。
そして当然ながら魔法使いではない俺の魔法関係のステータスは全て0となっている。
仕事を終えた俺はいつものように家に戻ってコンビニ弁当を食べる。
「あ〜明日で俺も四十歳か…………独り身で四十歳は辛いな……」
会社には四十歳以上の独身者は俺以外いない。
多分レア中のレアだ。
ある意味SSRクラス。
いや童貞ということまで考えるとLRクラス。
もしかしたらこの世界に俺だけかもしれない。
さすがにそれは考え過ぎか?
だけど、多数ではないのは間違いない。
そう考えると辛い。
きっと五十歳になってもなにも変わらない。このまま独りこの部屋でコンビニ弁当を食べているに違いない。
そういうお店に行くことも真剣に考えた時期もあったけど、数十年保守的思考にどっぷりと浸かった俺には新しい扉を開く勇気もなく、今に至ってはそういう気力もない。
部屋で缶酎ハイを片手にテレビを見ながら過ごす。
明日は会社も休みだが、やることも特にないので夜更かしするつもりだ。
「もうこんな時間か。ハッピーバースデー俺。四十歳おめでとう。いやおめでたくはないな。は〜」
正直ため息しか出ない。
俺はこの日独りで誕生日を迎えてしまったが、やはり誕生日は虚しい。
もう何十年も誕生日が嬉しいとか思ったことはない。
誕生日、クリスマス、バレンタイン……。
なんでこの世の中にはこんなイベントが目白押しなんだ。
四十歳独身、童貞、彼女無し。
自分の人生に全くクロスオーバーしてこないイベントの存在は、別の世界の出来事とはいえ地味につらい。
虚しさも手伝い、いつもよりお酒がすすむ。
ここ数年はイベントのたびにお酒がすすんでる気がする。
この前のクリスマスには、雰囲気だけでもそれっぽくしてみようかとシャンパンを買ったりしてみたけど、お店の人に「奥さんとのまれるんですね」なんて笑顔で渡されたもんだから、{「まあ、そんなところです}と誤魔化してしまった。
やっぱりなれないことはするもんじゃない。
俺にはいつもの酎ハイがあってる。
最近のマイブームは、部屋で酎ハイを飲みながら子供の頃に憧れたヒーローものの動画視聴だ。
この時間だけは、仕事の事も忘れてあの頃に戻ったような気持ちになる。
こんな俺でもヒーローになってみんなを助ける気分に浸れる。
最近のお気に入りは沖縄のローカルヒーロー・ モブヤーだ。
あまりのシュールさにドはまりしてしまった。
特にシーズン1は最高だ。
相棒の犬が最高過ぎる。
今風に言えば獣人モフモフ。
リアルに言えばただのオッサン。
完全にやられてしまった。
あの意味不明な犬を引き連れ、悪の怪人を倒す自分を想像すると気分が上がる。
ヒーローに憧れていた残滓とでもいえばいいのか、今でも普段の生活の中で困った人を見かければ極力助けるようにはしている。
お年寄りを見れば席を譲ったり、結構前だけど柄にもなく不良に絡まれた女の子を見れば逃がしてあげたりしたなあ。
あの不良たち容赦なく殴ってきてシャレにならなかったけど、女の子は無事に逃がせたので、俺にしては上出来だった
犬に襲われそうになっていた女の子を助けた時は大変だった。
犬の意識が女の子から外れたのはよかったけど、完全にロックオンされた俺は襲われた。
必死に逃げたけど、犬の方が速かった。
買ったばかりのスーツが一着ダメになってしまった。
結構痛かったけど、あの時は狂犬病と破傷風のワクチン打ってて助かったな。
そういえば以前にも、一度だけ本格的にヒーローの真似事っぽい事をしたことがある。
普通に歩いていると目の前で車同士の衝突事故があり、一方の車から火の手が上がった。
車の中を見ると運転手の男の人は気を失っているようで、隣に乗っていた女の子も恐怖からか動けないようだった。
ガソリンに引火して燃え広がることも頭をよぎったけど、身体が勝手に動いていた。
急いでドアを開け、女の子を外に出し、運転席の男性のシートベルトを外し何とか外へと運び出すことが出来た。
程なくして2人共救急車で運ばれていったので多分大丈夫だったんじゃないだろうか。
今になって思い返してみるとリアルでも結構無茶してるな。
ヒーローものを見過ぎたせいかもしれない。
四十歳になったことだし身の丈に合わないことは控えよう。
過去の無茶を回想しているとお酒もいい感じに回ってきた。
本当は、もっと夜更かしするつもりだったけどいい気分のまま布団に入って寝ることにした。
イベント特有のひとり深酒のせいですぐに眠ることが出来た。
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本日2話目
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