非モテサラリーマン40歳の誕生日に突然大魔導士に覚醒する #花岡修太朗40歳独身彼女なしが世界トレンド1位

海翔

大魔導師 花岡修太朗

第1話 非モテサラリーマン花岡修太朗の絶望

この世の中には二種類の人間がいる。


勝ち組と負け組。


つまりは、モテる人間かモテない人間。

そして魔法が使える人間と魔法が使えない人間。

俺、花岡修太朗は両方ともに後者の負け組だ。

明日で四十歳の誕生日を迎えるというのに、結婚はおろか今まで一度も彼女ができたことはない。

彼女どころか、女性と最後に手を繋いだのは、小学校の運動会が最後だ。

理由はわかっている。

俺は小学生、いやもしかしたらもっと前から老けていた。

物心ついた時には、あだ名がオッサンになっていた。

子供心に傷ついたりもしたが、自分から見ても確かに俺の顔は老けており、当時から四十歳のオッサン呼ばわりされていた。

中学、高校、大学へと進学したが、そこでもずっと老け顔のせいで一切モテなかった。

ただ、老け顔が極まっていたせいか、歳を重ねても、顔がそれ以上老け込むことはなかった。

社会に出てからもずっとオッサン扱いをされていたが、気がつくといつのまにか本当のオッサンになってしまい、明日で四十歳を迎える。

おかしな言い方だが顔に実年齢が追いついてきたせいか、最近は以前のようにオッサン呼ばわりされることも減ってきた気がする。

本当のオッサンになったらオッサンって呼ばれなくなるって意味が分からないな。

しがない非モテのサラリーマン人生を送る俺には唯一心の支えとなる我が家に伝わる伝承があった。


『三十歳まで童貞を貫けば魔法使いになれる』


俺の何代か前のご先祖さまも老け顔で非モテだったそうだが三十歳を機に魔法使いとなり、モテ人生を歩み無事に子孫を残すことができたらしい。

そのおかげで俺も生を受けることができたのだが、覚醒遺伝とでもいうのだろうか、ご先祖さまの老け顔が俺の代で目覚めてしまった。


魔族やモンスターがダンジョンから溢れ、旧世界と呼ばれる時代から人口が三分の一以下まで減少してしまったこの世界では、国の政策もあり若年結婚は当たり前だ。

10代で学生結婚する者も多く、25歳で結婚していなければ行き遅れ、三十歳で結婚していなければ化石扱いと言っても過言ではない。

中には国から特別に認められ多数の異性と婚姻関係を結んでいる猛者までいる。

その為この世界において三十歳童貞はレア中のレア。

俺の知る限り、周囲に俺以外はいなかった。

しがないサラリーマンの俺だが、魔法使いになって魔法が使えるようになれば、世界防衛機構に入ってエリート人生を歩むことができる。

ご先祖様のように一発逆転人生も不可能ではない。

いまだに頻繁に魔族やモンスターがダンジョンから溢れ出て日常的に危険のあるこの世界では魔法を使えて人類の守護者とでもいうべき世界防衛機構のメンバーは人々から羨望の眼差しで見られていた。

当然のようにそのメンバーはモテる。

俺も三十歳でそのメンバーの仲間入りをする。

その未来を信じて二十九歳と三百六十四日を過ごし、ついに俺は三十歳の誕生日を迎えた。

その日間違いなく三十歳になった。だけどその記念すべき日に俺が魔法を使えることはなかった。


『三十歳まで童貞を貫けば魔法使いになれる』


我が家に伝わるこの伝承は真っ赤な嘘だった……。

周りに誰も該当者がいなかったので確かめようもなかった伝承だが、俺がついに該当者となったその日、俺は絶望に暮れた。


「終わった……」


魔法使いになれなくても俺の生活が終わるわけではない。絶望に暮れてもだからと言って自殺するようなことはなく、それからの10年は希望が潰えた無の状態で日々をやり過ごしてきた。

なんの希望もないのであればなにも期待しなければいい。

三十歳になったその日モテることも結婚することも人生の勝ち組になることも諦めた。

もちろん希望が潰えたからといって今の生活がなくなるわけじゃない。

負け組としての人生をしっかりと生き抜く必要がある。

高望みをせず、毎日しっかりと働く。

せめて、自分が社会の役に立っているという実感が欲しかったのかもしれない。

それからの10年は魔法使いへの未練を薄く削いでいく毎日だった。

仕事に打ち込み、ほぼ毎日、家で飲む缶酎ハイが憧れを薄めてくれた。

きっとアルコールは俺が夢の漂う中二病患者になるのを留めてくれた。

そして俺は明日ついに四十歳になる。

この10年長かったようなそうでもなかったような。

それに四十歳になったからと言ってなにも変わらない。

365日のうちのただの1日。

さすがにこの年になって自分の誕生日を一人で祝う気にはならない。


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久々の新作です。よろしくお願いします。

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