第2話結婚相手は超イケメン!?

この世界ではよくあることらしいのだが、俺は結局、嫁入りの今日まで相手の顔を見ないままで結婚式を迎えた。

お母様の選んでくれた水色のフリルがたっぷりついたウエディングドレスに身を包み、俺は教会の控え室でおとなしく旦那様の到着を待っていた。この世界では、両親は親族席に先に座っているため、控室には俺1人きりである。新郎が俺を控室に迎えにきて、同時に入場するのが慣わしらしい。

「団長は昨日まで魔獣討伐の任務に着いておりますので、入場開始ギリギリに到着する予定です。申し訳ありませんが、もうしばらくお待ちください」

そう言って、騎士団の人が出て行ってからもう30分は経っただろうか。1人で待ちぼうけをしていると、いい加減眠くなってくる。何せ今日は、朝早くに起こされて風呂だ化粧だと忙しかったのだ。

熊のような大男が他人の容姿なんて気にするのかね。

俺があくびを噛み殺している時、控室の外が騒がしくなってきた。

「団長!いくら何でもその姿では……」

「せめて着替えてください!」

ぎゃあぎゃあと何やら騒ぐ声が聞こえる。何事かと椅子から俺が立ち上がった時、控室のドアが開いた。

「……待たせたな、花嫁よ」

そこには、全身が黒い毛皮に覆われた、頭にヤギの角を生やした骸骨面の大男が立っていた。

待って、騎士団長って、人外系だったの!?

俺が驚いている間に、大男は俺の前にズカズカと歩み寄ると、俺の右手を取って、軽く跪いた。

「待たせてすまなかったな」

「え、えっと……」

「だ、団長ー!お待ちくださいー!」

俺が戸惑っている間に、大男を追いかけてきた騎士団の人たちが駆け込んでくる。その中にいた可愛らしい顔をした女の人が、肩で息をしながら叫んだ。

「団長!流石にその格好のままはダメです!結婚式は女性にとって、一世一代の晴れ舞台なのですよ!?」

「……そうなのか?」

大男が俺に顔を向けると、俺は素直に頷いた。

「せめて、その骨の仮面はとってください!あと毛皮のマントも!」

えっ、それ仮面だったの。

部下に注意された大男が言われた通りに、仮面とマントを取る。そこに現れたのは、長身のすらっとした体型をした美男子だった。肩まで伸びた黒髪が、仮面を取った際にサラリと揺れる。切長の目に間抜けな顔をした俺の顔が写った。

めっちゃイケメンじゃん……。

俺の中で熊のような大男の姿がガラスのように割れて、目の前のイケメン団長の姿に変わる。思わず小さくガッツポーズをした時、控室に、まだなのかと痺れを切らした教会の人たちが呼びにきた。

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