第46話 「嘘がバレた...」を満喫しようと思います


「バリエルさん、食べすぎでは?」

「いいんです、昼と夜を兼ねてるので!」


 両手にはフランクフルトと牛串とりんご飴。

 さっきは焼きそばも食べてたのに。


「それよりアバウトくん、何か食べませんか?」

「あ、いや実はオレ...お金持ってなくて」

「え」「え」


 フィレとバリエルはきょとんとしている。


「それなら早く言ってくれればよかったのにぃー!」

「え、でも———」

「いいんだアバウト。私たちに任せておきなさい。君の初めてのお給料日はまだもう少し先なんだから」

「ありがとうございます!それじゃ、あの...わたあめっていうの食べてみたいです」

「...もしかして食べたことない?あ、そっか!だってアバウトくん、元魔王だから」

「はい!」




「すみませーん、わたあめ1つください」


 わたあめの屋台の店員は、狐のお面をかぶっていた。

「少々お待ちになって、アバウト」


 ...!


 聞き慣れた声、見慣れた顔。

 そして1週間前のあの記憶!


「り...りす...」


 そして彼女は、ゆっくりとお面をはずした。

 その瞬間。


 彼女の周りを膨大な魔力が包んだ。

 明かりがついたばかりの提灯は、リリスの真上のものだけ激しく点滅していた。




 目にもとまらぬ速さで、アバウトの隣にいたフィレはリリスに攻撃を仕掛ける。


 そしてその直後。

 広場の上空に花開いたのは、青紫色に染まった一発の巨大な花火だった。

 その色が示す、この戦いの難易度は———


 最高レベルである。


 気付けば広場の人たちは、守護者たちの指示に従い避難行動を始めていた。




「あらら、そんなにお怒りにならないでほしいわ?ノワール指揮官のフィレさん」


 フィレは絶え間なく攻撃を続ける。

 リリスは膨大な魔力を一点に集中させ、それを軽々と受け止めている。


「フィレさん、それは私への宣戦布告と見ていいのね?」


 リリスがそう言った次の瞬間、フィレは10m以上も飛ばされた。



「うっ...ありがと...バリエル...」

 直前にバリエルがフィレにバリアを張っていなければ、フィレの身体は形を保てていなかったであろう、それだけ強力な一発だった。


 そしてバリエルは頭上に、黄色の閃光弾を撃ち上げた。

 守護者たちはその場で待機せよ、という命令である。


(バリエルはある程度の閃華武具も扱えるわけか...)

 アバウトがのんきに考えていると...。



「さ、アバウト。1週間ぶりね」

 リリスは口を開いた。


「...またオレを連れ戻しにきたのか?それともオレの力にねじ伏せられに——」

「私あの時から考えてたの、ずっと。そしたらやっぱりおかしいじゃない。だってあなたが使ったのは禁断の魔法。自らの魔力を封印する魔法じゃない?」


 そして、とうとうこのときが来てしまった。


「あれ、はったりだったんでしょ」

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