第34話 「ふたたび」を満喫しようと思います


 洞窟の近くを散策していた男女がいた。

「ねえアブスさ~ん、どぉこ向かってるの?」

「え、あ、いや...ぼくは...」

「ぼくは?」

「ラテさんについて行ってるだけで...」

「あれ?そぉだったんだ。わたしもアブスに付いていってるだけなんだけど」


 ノワール守護者の集会でお叱りが決定した、2人の守護者アブスとラテである。


「あぁれ?あの子たちってどっかで見なかったっけ?」

「ほ、ほんとだ。スタン爺のところの...」

「あぁそうそう。なんでここにいるのぉ?」


 その時、魔力に包まれた刃が2人に襲い掛かった。

「...これはまずい!行くよアブス!」

「は、はい!」

 アブスとラテは武具を持ち、その相手に向けて霊力を込めた。




(ほお...霊力の使い方に慣れている。この子どもたち、なかなかやるぜ)


 タゼルとルベルの相手をする女性は、あることに気づいていた。

(誰かこっち見てんな...)


 草の陰からこちらをのぞく男女。

(ま、いっか)

 一発攻撃を仕掛けようと、タゼルに向けて刃を優しく振った。


 その瞬間、わずか先に女の子のほうが飛び出し、武具に霊力を込めた!


(動いたか...とにかく防いでおくかぁ...)


「魔力結界...!!」


 バリアを張った彼女はすぐに気づいた。

(これは...魔力拘束か!やるな、少女よ!)

 女性は魔力操作ができなくなっていた。


 その直後、あとから出てきた男の子も武具に霊力を込め...

 結界が破られた。

 そしてそれだけではない。


(魔力が霊力に変換されていく...おもしろいぞ少年!)


 

「どこにそんなものを作れる武具職人がいるんだ?われは大いに興味があ———」

「アブスくん!?」「ラテちゃん!?」

 タゼルとルベルは女性の言葉を遮った。

「待っててねぇタゼル、ルベル。今この人倒すからね」

「あぁぁちょっと待ってラテちゃん!この人悪い人じゃないから!」

「うぬ?」

「私たちの練習に付き合ってくれてるんだよ!」


 アブスとラテは少し考えた。

 

「あーそういうことだったかぁ...お姉さんごめん」

「ごめんなさい」

「気にするでないぞ少女と少年よ。それよりきみたちの武具をわれは気に入った」

「お姉さんが優しくて良かったよ~、ねえルベル」

「良かったー」




 ほぼ同じタイミングで、アバウトとエレナはこの場所へ到着した。

「この魔力、まさか...」

 アバウトが魔物の切断面からも感じ取った、この特徴的な魔力。

 そしてそこにいたのはタゼルとルベル、それに男女2人。もう1人は...


「魔王せんぱ~い!!」

「アバウトか!!久しぶりだなー!」


 魔王先輩。

 アバウトが魔王になる前、その座を有していた人物である。


「なぜここに魔王先輩が?」

「それはこっちのセリフであろうよ、アバウト。魔力が封印されているではないか。魔王ではなかったんか」

「それがですねー」

「おん」

「やめてしまいまして」

「やめただあ?これまたなぜじゃ?」

「...言っても怒りませんか?」

「怒らん!はよ言え」

「...だって恋愛したいじゃないっすか」

 アバウトはぶつぶつと言った。


「それはわれも思ったことがあったのう」 

 懐かしむように魔王先輩もつぶやいた。


「なら、われが相手してやろうぞ」

「あ、いやいいですって!今は相手いるので!」


 その言葉に、エレナはきゅんとした。

 そして魔王先輩は止まらず、「まあそう遠慮するなかれ」とアバウトに触れた。


 その瞬間、アバウトの目は青白く光った。

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