第21話 「入隊試験1」を満喫しようと思います
翌朝、アバウトとエレナは宿を出て、ルミナス城へ向かった。
2人がルミナス城の大広間へ到着したときには、20人ほどの参加者たちが集まっていた。昨日宿で出会ったセリーヌとメリッサはすでに大広間にいて、若い男性2人と話しているようだ。参加者たちの中には、専用の武器を持っている人もいれば、彼女たちのように手ぶらの人もいる。
「初めまして、入隊試験参加者の諸君...あ痛っ!」
壇上を歩きながら参加者へ挨拶をし、足を引っかけて転びそうになった人物。彼女こそがエノの指揮官、レアデルである。
「し、失礼。我が国のためによくここまで来てくれた。感謝する。はじめに君たちに、各区の指揮官を紹介する。ああ、こっちに来てくれ」
壇上を歩いてきたのは、3人の指揮官であった。少し場内がざわつく。
「まずはじめに、私はエノの指揮官、レアデルだ。対個人戦を得意としている」
「んぁ、えーと...リオネル。オートの指揮官。よろしく」
「わたくしはグランパスと申します。アエスの指揮官です」
そして。
「私はフィレ、ノワールの指揮官です」
銀色の長い髪の毛、前に噴水で見たときと同じ浴衣姿。アバウトが隣を見ると、「フィレ様...!」というように目を輝かせるエレナがいた。フィレはアバウトのほうを見て、はっと何かに気付いたような表情をしている。
「試験内容を説明する」
レアデルのその言葉に、大広間に緊張感が走る。
「今回の試験は...指揮官対参加者全員の一本勝負だ」
場内は再びざわめく。
「指揮官相手って...まじかよ」「それはさすがに無理があるんじゃないのか...」
一方でアバウトはピンとくるものがあった。一昨日の最終訓練でのフォロとの対決だ。今思えば彼女は、自分がこの試験を受けたときの記憶をもとに、その練習をさせてくれたのかもしれない。
「今回の試験は参加者が多いからな。私たち4人が君たちの相手をする。場所は城の敷地内にある山の一部で、木々や川など自然物も含まれている。君たちの目標は、私たちを戦闘不能にさせることだ」
参加者 vs 指揮官4人。
具体的な範囲指定はなかった。
「グループを作っても1匹狼でも構わない。私たちにかかってこい。万が一のことは気にするな、シスタンがいるから大丈夫だ」
壇の端っこのほうからひょこっと顔を出したのは、自信なさげな女の子だった。とはいっても、顔立ちこそ幼さが残っているが、歳はアバウトやエレナとあまり変わらない。
「あ、はい...お任せ、くださいな...なんちゃって」
そしてすぐにまた、カーテンの後ろに引っ込んだ。
壇上のレアデルとフィレは微笑み、グランパスはお硬い表情をほとんど変えず、そしてリオネルは目がとろけていた。どうやらシスタンに気があるようだ。
シスタンはレアデルのアシスタント役で、大人しくもあたふたしやすい性格であり、守護者たちからひそかに人気を集めている。
「まあそんなわけで、ルールは特にない。君たち一人一人を総合的に評価し、適性をみる。時間は今から1時間だ」
再び場内はざわめいた。
その間に指揮官の4人とシスタンは壇上から降り、裏の出口から外に出ていった。
「何をしている、君たちも行くぞ」
レアデルの言葉に、参加者たちは一歩を踏み出した。
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