第17話 「海の家」を満喫しようと思います
強い日差しが照り付けるカイ海は、波の動きに反射してキラキラと輝いていた。
夏のど真ん中のこの時期は遊泳客も多く、浮き輪でぷかぷか浮いている人、浜でかき氷を食べる人、ビーチバレーを楽しむ人など様々だ。
そしてアバウトの目の前にいるエレナは...
「うんしょ」
突然ワンピースを脱ぎ始めた。
「ちょ、ちょっと!?」
アバウトはとっさに手で目を覆いつつも、指の隙間からしっかりと見ている。そしてエレナが脱いだワンピースの次に目に入ってきたものは...!
「へへーん、驚いた?」
露出多めな水着を着た彼女の姿であった。彼女は腰に手をあて、どうだーと言わんばかりの顔をしている。
「海に入らずして何がアエスよ!アビーも一緒に入ろ」
アバウトも彼女に続き、着ていた服を脱いだ。1か月間で鍛えられた上半身が露わになる。
「...いい体してんじゃない」
「...おまえもな」
またもやラブコメディスタンスの登場である。
2人は火照った身体を冷やすため、ひんやりと冷たくて気持ちの良い海で遊んだ。水を掛け合ったり砂のお城を作ったりするのは、アバウトにとって初めてのことであった。誰から見てもその2人はカップルであったが、まだ付き合ってはいないというのが正直なところである。さらに同年代くらいの数人の男女グループとも友達になり、ビーチバレーやビーチフラッグス対決などをして楽しんだ。
時間はあっという間に過ぎ、辺りは暗くなり始めた。夕食の時間が近づいてきたので、アバウトとエレナは海の家で食事を取ることにした。
「らっしゃ~い!」
アバウトよりひと周り大きく、たくましい体をした上裸水着姿の若い男の人が元気よく2人を迎えた。
アバウトとエレナが開いている席へ座ると、その男性はこちらに向かって歩いてきた。
「シーサイドベースへようこそ。君たちみたいな若いカップル来てくれると、自分もその時に戻った気がして嬉しいよ」
「オレたちはカップルじゃ———」
「はい、そうですね!!」
エレナはアバウトの言葉を遮り、体を寄せて腕をグイっと組んで答えた。アバウトはもちろん、予想以上に急接近してしまったエレナも照れを隠すことはできなかった。
「なるほど~、仲いいんだね」
アバウトもカップルと言われて悪い気はしなかった。しかしこの話が続くとさすがに2人とも耐えられないので、話を変えた。
「お兄さん、いい体してますね」
「あー、そうか?まあ鍛えてはいるからな」
「何かやられているのですか?」
「まあ、今はアエスの守護者だな」
非常に納得感のある答えが返って来た。アエスやエノ、オートの守護者たちは、ノワールのとは違い完全なる武闘派であることを、アバウトとエレナは知っていた。使う武器もシンプルで、最も信じられるのは霊力ではなく、やはり己の身体そのものなのだ。
「お、オレ、アバウトといいます!ノワールの守護者目指してて、明日試験なんです!あとこのエレナも!」
「あ、どうも~」
エレナはペコっとお辞儀をし、手を振る。
「そうなのか!ノワール、いいよな~。あ、そうそう。俺はリアムだ。日曜日はここで働いて、そのほかの日は守護者として生活してる。君たち、ルミナス城は見てきたか?」
「ルミナス城...?」
アバウトの疑問にエレナが返す。
「ほーら、明日試験をするお城のことだよ」
「あーね」
「ここからでも見えるんだぞ?ほら、あそこ」
リアムが指さす方向を見てみると、確かに高い山の上にとても豪華なお城が見える。アエスとエノの境あたりにあるようだが、ぎりぎりエノの領土である。
「懐かしいなぁ。俺も7年前、あそこで試験受けたんだ。1人で行ったからすごく不安でな。でも君たちは大丈夫そうだ。近くにいてくれる人がいるのは大事なことだからな」
ちょっと待ってろと言ってリアムはキッチンへ行き、あるものを持ってきた。
「グリルドシ―フードプレートとトロピカルフルーツサラダ。うちの看板商品だ。俺から君たちへの応援の気持ちだ、これ食って体力付けな」
大きなプレートには、2人で食べきれるのかというほどたくさん盛り付けてある。
「これ...ほんとにいいんですか!?」
「もちろんだ。早く食わねえと冷めちゃうぞ~?」
「ありがとうリアム殿~!食べよ、アビー!」
そして2人はいただきますをして、箸を持つ。
「伏せろ!!!」
とリアムの声が響いたのはそのときだった。
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