おい姉ちゃんちょっと待て!!
椿カルア
第1話 姉、下ネタにつき。
突然だが、俺、花の高校ニ年生(そんなものは存在しない)
世間一般的に陽キャと呼ばれる俺の姉は、立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花なレベルの超絶美人で、家事もできる勉強もできる、おまけに俺のようなオタク趣味にも精通しているというハイスペックであるのだ。
まだここまではいい。
問題は、美人や超人などの人物には、必ずといっていいほどある変人じみた一面が尋常じゃないまでに俺の姉にあるということである。
姉の通う大学の奴らや俺のクラスメイトは、姉のことを『神が二物も三物も与えた天使』とか言う変に神格化したイメージがあるが、正直なところ俺にはまっっったくそんな印象はない、これっぽっちもミジンコほども無い。
神に誓ってそんなものはないと言えるレベルで無い。
こんなバカなことを考えつつ、スーパーバトラー(通称スバラー)、いわゆる家庭用の格ゲーを黙々とプレーする。
カチカチ、とゲームのプロコンを素早く押し、相手の早業をうまいことかわして反撃する。
あと三ポイントでプラチナランク到達、負けたらゴールドランクで五連勝しないと到達不可。
そんな想いを胸に、ただひたすらにプロコンのボタンを連打しまくる。
「…うっし、あとちょいあとちょい…、あ、そこ避ける?ならここに重撃撃ち込んで…」
カチカチ、カチカチとプロコンのボタンの音が響く。
もうプラチナランクは目前、といったところで俺に悪魔の声がかかる。
「ねー司ぁ〜」
「何?今めっちゃ忙しいんだけど、あ、そこ!よしいけいけ打ち込め!」
姉の声をよそに、ひたすらプロコンのボタンを押す。
「よし…、よっしゃ!!勝ったプラチナランク!
…で、何姉ちゃん」
ああ、もうすでに嫌な予感しかしない。
「あのさ〜」
「何?話しかけといてなにもないとかやめろよ?」
おい、今日はどっちなんだ?ヤバいのか?ヤバくないのか?…頼むはっきりしてくれ。
「何もなくはないよ〜あのね〜」
「……いや、何?」
今までに幾度となく姉ちゃんのあの発言聞いてきてんだ。今日くらいなにもない日があってもいいんじゃないか?
頼む、頼むから何事もなく終わってくれ…!
……後にこの願いは儚く散ることになることは、このときの俺はまだ知らないのだが。
「エリンギってドチャクソエロいよね」
…………うん。そりゃあそうですよね。
姉ちゃんが何事もなかったこと一度もなかったもんね今までに!
「おい姉ちゃんちょっと待て!」
「え、なに〜?」
「何じゃねえよ何つった姉ちゃん今?」
「え?だから、エリンギってドチャクソエロいよね〜って」
俺の姉の変人じみた一面。それは、
その日にあったこと、ふと思ったことを突拍子もなく口に出してくる爆弾発言魔というところである。
まあ、ただ爆弾発言をかましてくるだけならいいのだが(いや別に良くはないが)、残念なことに姉ちゃんはこれだけでは終わらない。
「姉ちゃん…、何をどう考えていきなりその思考に飛ぶんだよ?!」
「ん〜えっとね〜、BL読んでて脳内妄想が激しくなって暴走してたらこうなった✩」
「✩、じゃねえよ理由になってねぇわどんなエロシーン見たらそうなんだよ脳にミサイルでも落ちて思考焦土と化してんのか」
「はぁ〜ん?エリンギなんてもうモザイクかけたらあれじゃんもうチ○チンじゃん」
俺の体によっかかって自分の携帯をいじりながら姉の爆弾発言が見事に炸裂する。
「おい待て待て待て待て、会話の中にしれっと下ネタ、しかも男性器の話をぶっ込んでくるんじゃねえよ!脳みそイカれてんのか?」
そして、姉の爆弾発言のもう一つの問題点がここで発動する。
「んえぁ?なに?のり○まいじめてんのか?あんた急に何いってんの?」
姉の爆弾発言のもう一つの問題点。
それは、
聞き間違いで馬鹿みたいな迷言を連発し、人を笑わしに来ると言うところである。
「ゴフッwいや、wどんな聞き間違いだよww何での○たまいじめなならんのじゃ耳腐ってんのか!?w」
「はあ〜?腐ってるのは頭だけです〜!耳は腐ってませ〜〜ん」
「いーや絶対ぇ耳も腐ってるね姉ちゃんの聞き間違いで幾度となく人が笑いのドツボにはまってNK細胞が活性化してんだよふざけんな」
「いーじゃん免疫細胞活性化してんならいいことじゃん」
「笑わすのも少し節度を持ってやれ!笑わされすぎて酸欠になるんだよ!」
「酸欠になる方が悪い!肺活量増やせ肺活量!」
「いや暴論!!!」
……………とにかく、うちの姉ちゃんは色々ヤバい。
これは、生まれ持った運命としてツッコミ役を買いつつ何気に楽しんでる俺と、爆弾発言魔の姉の、主要人物は多分誰も死なないし誰も危ない目に遭わないただのコメディである―――――。
ちなみに、さっきの下ネタ大騒動はあの後一時間くらい続いた。
おい姉ちゃんちょっと待て!! 椿カルア @karua0222
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