第30話 五日目。夜。自室。

 五日目。夜。自室。




「クシナダ様ー。今日はなにも起きませんでしたよー」


 風呂から上がったばかりのりくは、部屋に戻るなり奇稲田くしなだに呼びかけた。


「……ん~、やっぱ無理か……」


 出てこない奇稲田に、反省会を諦めた陸。ベッドにゴロンと横になる。


「まあ二千オーバーの割に若いのは確かなんだけど」


 陸は彼女を年寄り扱いしたことを後悔し始めていた。

 けど、謝ろうにも本人が出てくれないことには謝りようがないわけで。


「あ。神社に直接お参りすれば通じるか?」


 ふと思い付いた陸は、「よっ」と体を起こした。


 そうだ。奇稲田は元々氷室神社ひむろじんじゃ御祭神ごさいじん。なら直接神社まで行ってお参りすれば、確実に話ができるのでは?


「よし。じゃ、明日朝一でやってみっか」


 これでもう大丈夫。ちょっと気分が軽くなった陸は、スマホを取るとゲームを起動した。


 すると、――ぺこん――と、通知が来て、


┏━━━               ━━━┓


  りってぃ


  起きてます?


                    あ


                 福士朱音ふくしあかね


               起きてるけど

                  なに?


  シュオンです

  ちょっと

  悪いんですけど

  今から

  札の辻まで

  来てくれません?


                 札の辻?

                   今?


  はい

  今です


         もう10時過ぎてんじゃん

       今から寝るとこだったんだけど


  関係ないです

  アタシが

  来い

  って言ってるんだから

  黙って

  来ればいいんです


                   は?


                何様だよ?


         さっきは勝手に帰っといて

         今度は夜中に呼び出しとか


                 用件は?


  来れば分かります


                 ざけんな

                  行かね

           一人で勝手にやってろ

                 おやすみ


  そうですか


  残念


  来ないと


  氷室ひむろ

  咲久さく

  が

  大変なことになるけど


  そう言うことなら

  しょうがない

  です


  じゃあさよなら


                  待て!

                  行く!

                すぐ行く!

                待ってろ!


┗━━━               ━━━┛


 血相を変えた陸は、着替えるのも忘れて部屋を飛び出した。

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