〇〇〇の神の申す事には

第４．２話 咲久、祠に触れる（後編）

「いや～、何年ぶりの現世（うつしよ）かのう？　なんにせよ久（ひ）っさしぶりじゃ～」

「わっ！　――ってぇ！」

　急に立ち上がった咲久（さく）に、陸は尻もちをついた。

「ってぇ～……何すんだよ！？」

　腰を擦りながら抗議した陸。

　咲久はドッキリのつもりでやったのかも知れない。けど、ハッキリ言って全然面白くなかった。

　しかも今尻もちついた時に結構腰にダメージが来たのだ。

　けれど咲久は、そんな陸に気を遣うつもりはないようで、

「おっとこうしてはおれん。まずは身体機能の確認からじゃな。ああ～、まずは……」

　彼女は「むくく……」などと漏らしながら、両手を前で組んで目いっぱいに背中を伸ばし始めたのだ。

　そしてそれが済むと次に首をぐりぐり、続いて肩をぐーるぐる。

　終いには「むっむっ」なんて言いながら前屈なんぞをやっていて、これじゃあ彼女の奇行に尻もちをつかされた陸は、その存在を完全に無視されているようなもので……

「……あーそうかよ」

　いよいよ頭に来た陸は、急に冷めた。

　そして、すっと立ち上がるとそのまま一人踵（きびす）を返す。

　どう言うつもりなのか知らないけど、そっちがその気ならもう知らん。あとでゴメンなんて謝ってきたって、もう許してやらないからな！

　けれど、そうして陸がこの場を立ち去ろうとすると――

「これ、そなた。一体何処（どこ）へ行くつもりじゃ？　娘の身に破滅が迫っておると言うに、そのように暢気（のんき）に構えておるとは。これはわらわが出て来て正解だったようじゃな」

　突然おかしなことを言い出した咲久に、陸は一度は背けた顔をもう一度向けた。