どうやら異端のネクロマンサーは[體霊練成]スキルで魔王を倒しに行くようです!

新山田

第1話 暗殺者は転生しました



俺は暗殺者だ・・だが、

ただの暗殺者じゃない界隈では名の通る暗殺者だ。


名前は・・・仮にQとしよう。


俺は数々の暗殺をこなしてきた。


要人、政治家、ジャーナリスト、大富豪、もっと並べられるが今はやめておこう。


こんな話をするのは知ってほしかったからだ。


なぜなら俺はいまから”死ぬ”からだ。


キィー!ドンッ!


この音であらかた想像できるだろう。

人生の最後をいくつか考えていたがこれは予想外だ・・・。


まぁ毎5分ごとに12人が死亡しているんだ。あり得ないわけではないが・・・。


────────────────────


「ようやく起きたか・・・失敗したと思ったじゃ」


目の前にはシワシワの爺さん。


「ここは?」


とりあえず聞いてみた。


「わしの家じゃ」

「・・・なるほど」


どうして死んだはずの俺はこんないろんな生き物の標本と分厚い蔵書に囲まれた部屋にいるんだ?まさかここが天国だっていうのか・・・いや行くなら地獄か?


それなら以外に奇麗なところだ。


「さて」


じいさんが横に椅子を置き座る。


「どこから離したもんかな」


パイプにたばこの粉を入れ火をつけ一服。


「お前さんは記憶はあるか?」

「当たり前だろ」

「聞かせてくれるか?」


気は進まないが話してみた。


「ほっほっほ・・そうか、そうか」


シワシワの顔をさらにシワシワにしてすごくうれしそうだ。

人を殺した話をこんなに喜んで聞く奴なんて頭がイカれてるとしか思えない。


「話疲れた・・次はアンタの番だ」

「そうかもう少し聞きたかったが・・・まぁいい」


じいさんは話はじめた。


◇     ◇     ◇


「なるほど・・・するとアンタはその【ネクロマンサー】でさらにその中でも異端な方で自分の価値を証明するために俺をここに転生させたわけだな?」

「・・・その通りだ」


思ったよりも長く退屈な話で飽きてしまったが要はそういうことらしい。

まったくはた迷惑なじいさんだ・・・。


「お前さんには[禮霊練成]スキルというものを付与してある」

「また突拍子もない話だな」

「まぁ聞けじゃ」


このじいさん名前はシュノというらしい。


ネクロマンサーという、

魔術師の異端として扱われた者たちのさらに異端な存在だったようだ。


なにが異端かというと、

『死体や死霊を操る事こそ至高であり唯一の正解である』という、

ネクロマンサーの考え方に反しているから。


彼は、ネクロマンスはもっと可能性があるモノだと感じていた。

だから探した、その結果として[禮霊練成]スキルなる物を編み出した。


そしてその価値を示すために俺に、


「魔王を殺してきてくれじゃ」


ということらしい。


「・・・ふん」


少し考える。


「まぁいいだろう」

「ほんとか!」


思わずジュノは立ち上がった。


「まさか・・受け入れるとは思わなかったのか?」

「ああそうだ・・・突っ放られると思っとたじゃ。おかげでこいつを使わなくて済みそうじゃ」


虫の入った小瓶を下げる。


「なんだそれは?」

「ああこれか・・これはだな、お前さんが断ったら脳みそにこれを突っ込んで操ろうと思っとんじゃ」

「なるほどそれは良かった・・・断らなくて」

「ほっほっほ」


笑いどころじゃない。やっぱりこのじいさんは頭がおかしい。


「でもなぜ断らなかった?」

「それは・・・まぁ面白そうだったからな。魔法と剣のおとぎ話の世界でまさか”魔王”を殺す依頼をこなすなんて思わなかったからな」

「わしも対外じゃがお前さん大分あたまがきとるらしい・・・」

「アンタに言われたくない」

「たしかにな」


ジュノはテーブルの上にあった水を飲むと話をつづけた。


「受け入れてもらう以上いろいろと説明せんとな」


◇     ◇     ◇


場所は変わってジュノの屋敷の庭になる。


「ここに死体がある」

「ああ」


何の死体か分からないが獣の亡骸がいくつか転がっていた。


「まずは第一段階じゃ・・近くに寄れ」

「わかった」


獣の遺体に近付くと目の前にポップアップが表示された。


〈アックスノックの遺体を吸収しますか?〉


なんだこれは?


「どうしたじゃ?」

「なんか変な表示が出たぞ」


ポップアップに指を差す。


「なにも無いぞ」


ジュノには見えていないらしい。


「とにかくその死体を吸収してみろ、[禮霊練成]スキルを持つお前さんなら出来るはずじゃ」


〈アックスノックの遺体を吸収しますか?〉〈YES/NO〉


YESを選ぶ。

すると死体はみるみるミキサーにかけられた果物のように粉々になり、

赤いジュースとなって自分の体に吸収されていった。


へんな感じはない。


〈骨〉〈血〉〈肉〉ストックが 5 増えました!


またポップアップが表示され、目の端にはシークバーで量を表示している。


「よしよし、次じゃ!お前さんが吸収したのは──」

「〈骨〉〈血〉〈肉〉って書いてあるぞ?」

「書いてあ・・る?まぁいいが正解じゃ今度はそれを消費するんじゃ。これを使え」


ジュノはまた獣の遺体を転がした。


例に漏れずポップアップが現れる。


〈クロモロネズミを素体にして[禮霊練成]スキルの中から[武器練成]を行いますか?〉


YESを選択。


〈現在のストックで練成できるのは[尖った骨ナイフ]ですがよろしいですか?〉


YESを選択。


そしてクロモロネズミと呼ばれた亡骸は、

形は見事に[尖った骨ナイフ]へと変わった。


「なかなかいいぞ!」


ジュノは嬉しそうに説明を続けた。


────────────────────


「おそらく見えているのはお前さんの身体が原因じゃろうな」

「体?」

「そうじゃ、それには[勇者の死体]を使用しているからな」

「この体が・・・」


そのあとの説明によると勇者も転生してきたという伝説があるらしく、

もしかしたら似たような知識の中で選んだイメージが、

ポップアップだったのではということだった。


それから〈血〉〈肉〉ストックの使い方の一通り説明を受けた。


「それじゃあわしはこれで死ぬ」

「[禮霊練成]スキルが”価値を示す”のは見届けないのか?」

「そうしたいが無理じゃな。あと一か月ももたんのじゃこの体は」


ジュノは毒の入った小瓶を取り出した。


「わしの体、大事に使うんじゃぞ」


そういうと一口で飲んでしまった。


「おい!いまかよ!」


倒れるジュノの体を支える。


「いいか!・・・かなら・・ず・・かち・・を!」


血を吹き出したあと全身の力が抜けた。


◇     ◇     ◇


あのあとジュノの死体は埋めようかとも思った。

だがいっそジュノの死体で作った武器を使って、

魔王を殺すのも一興だという思いに至った。


〈素体[ジュノ]を練成を開始しますか?〉


何度か[禮霊練成]スキルを使用したことによって、

練成できる自由度を得たようで素体とする部位を選ぶことができた。


使うのは”背骨”。


〈[ジュノの脊椎紅體剣]を練成しますか?〉


YESを選択。


────────────────────

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読んでいただきありがとうございます。


この先読みたいと思っていただけましたら星★を押していただければと思います!


どうかよろしくお願いいたします!



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