第29話:ドールのパパ。

それか・・・ドールは本能的にセックスすることで俺の気持ちも自分の気持ちも

確かなものだと確信したいんだ。


「ドール、愛するって意味分かってるよね?」


「分かってるよ・・・太陽君のことを思うと胸がドキドキするし、とっても

切ない気持ちになるし、寝ても覚めても太陽君のことでいっぱいだよ・・・

ずっと一緒にいたいって思うもん・・・それって愛でしょ?」


「愛だね・・・前にも確かめたけど・・・」

「俺もちゃんとドールの気持ちに応えなきゃいけないね」


「うん・・・」


「そうか・・・分かった・・・」

「じゃ〜俺もドールにちゃんと返事を返さなくちゃね」

「俺もドールのことが好きだよ・・・いや好きってんじゃなくて愛してる・・・

そう思ってる・・・」


「ほんとに・・・まじで?」


「だけど・・・だからと言ってすぐにセックスには結びつかないからね」


「それにお互いまださ・・・未成年だろ・・・あ、ノルは未成年かどうか

分かんないか・・・歳、聞いてないからね」


「聞かないほうがいいと思う」

「私たちって歳を取るのが遅いから、たぶん太陽君よりずっと年上だと思う・・・」


「え?そうなの?」

「まあ、いいけど・・・それは有機体でいる時のドールだろ?」


「今の姿はどう見たって、俺と変わんないじゃん」

「まさか有機体のドールとはセックスできないでしょ」

「でも、よかった・・・なんとなくだけど漠然としてた、お互いの気持ちがはっきりした気がする」


セックスはまだないまでも太陽君はこのままドールとラブラブの中で楽しい日々を

送るもんだと思っていた。


だけどある日のこと・・・

朝、太陽君が学校へ行った後、日向さんが玄関を掃除いていると、

黒い背広姿の品のいい、でもちょっと背の低い紳士が家の前に立っていた。

日向さんは、いぶかしく思ったが 声をかけてみた。


「あの、何かご用でしょうか?」


「あ、これはこれはこの家の奥様でいらっしゃいますな」


「はい、そうですけど・・・」


その紳士は話し始めた。


「突然のことではありますが・・・」

「こちら様にうちの娘がごやっかいになってるようで大変ご迷惑をおかけ

しております」


「は?」

「娘さん?・・・ですか?」


「名前をドールと申しまして・・・」

「ことの詳細をドールから聞いていらっしゃったら話は早いんですが・・・ 」


「いえ、何も聞いておりませんが・・・」


「あ〜そうですか・・・まあそんなことだと思っておりました」

「ドールがいきなり家を飛び出して黙っていなくなって探していたところ」

「ドールのことがネットを通して私どもの星まで届いておりまして・・・」

「それでお宅にお邪魔してるってことが分かりましてこうして迎えに来たわけ

です・・・」


「あ、申し遅れましたが、私はドールの父親です」


「まあ? あ、ドールちゃんの・・・?」


「ちょっと、ちょっとお待ちくださいね、今呼んできますから」


「ドールちゃん・・・お父様が・・・」

「そうだ、太陽・・・」


日向さんは太陽のスマホに連絡した。


「あ、太陽」

「かくかくしかじか◯×△」


日向さんはことの詳細をかいつまんで太陽君に説明した 。


「どうぞ、お入りください、今ドールちゃんを呼んできますから 」


ドールは二階にいて太陽君がいない間は本を読んだりテレビを見たりが

日課に なっていた。

もちろん太陽君が買ってきた、「カップルで楽しむセックスライフ」って本を

隅から隅まで読んでいた。

セックスに関する学科試験があったら合格してたかもしれない。


そんなエッチなようでエッチじゃない本を読んでいたドール。

すると一階から日向さんの声がした。


「ドールちゃん、ちょっと降りてきてくれる?」


ドールは日向さんに呼ばれて太陽君の部屋から降りて来た。


「な〜に、ママさん?」


ドールが二階から降りてくると日向さんと知らないおじさんがソファに座って

なにか話していた。


すると、学校へ行きかけてた太陽君がけっそうを変えて帰ってきた。

その後ろに ヨコチが金魚のウンコみたいについてきていた。


変なおじさんはいるし太陽君はあわてて帰ってくるわ・・・おまけに

ヨコチンさんまでやってきて、どうなってるのってドールは目を丸くした。


つづく

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