第15話:ここはハワイか?

ドールは駄々をこねるだけで帰ろうとしなかったため、放っておく訳にも

行かず結局、太陽君は彼女を教室に連れて行った。

って言うか、あとのドールとのチューのほうに興味を注がれただけだった。


「ドール、誰かが話しかけて来ても無視しろよ」


「ほ〜い」


太陽君は理科室から組み立て椅子を持って来て、その椅子にドールを座らせた。


「授業が終わるまで、そこで大人しくしてろ、いいな?」


「分かった・・・」


みんな、とりあえずドールを見ていたが、ザワついただけで、まあ誰も文句を

いう生徒はいなかった。

これから授業がはじまるから、そっちに集中しなきゃいけなかったからだろう。


むしろ、ここにゲームのキャラとそっくりな女の子がいるってこと自体

ありえないことと半信半疑だったのかもしれない。

それでもドールは絶好の見世物になって、みんな太陽君の後ろにいる彼女を

代わる代わる見ていた。


授業がはじまって、ドールがごそごそやってると当然担任にも見つかるわけで・・・。


「そこの日ノ本の後ろ・・・君は?」


すかさず太陽君。


「あの、転校生です」


「転校生?・・・聞いてないぞ・・・」

「まあいいわ・・・机がいるな、ま、しばらくはそこで授業を受けるように」


スルーした。

アホな先生でよかった。

って言うか先生もなにかと忙しい、余分なことで自分の仕事を増やしたくないのだ。


そしてようやく授業が終わった。

ドールはやっぱり退屈を持て余していた。


折りたたみ椅子は、とっくにビーチベッドに変わっていた。

横にあったゴミ箱はビーチパラソルに変わっていて、そこでドールは水着を着て

ゴロゴロしていた。


授業が終わったってんで、たちまちドールの周りは人だかりになった。

誰彼なしにドールに質問した。


「ちょっと、ちょっと・・・おまえら、そんなにいっぺんに 喋ったら

分からないだろ」

「はいはい、散って、散って」

「何も言うことはないし、何もしないからな・・・散れ!!この子にかまうな」


野次馬はブツブツ言いながらラドールの周りから少しづつ散っていった。


「ドール・・・あのな〜、ここはハワイか?」

「なんだよこれ?・・・くつろいでることろ、悪いけどな・・・帰るぞ」

「それから、ベッドとパラソル元にもどせ!!・・・」

「なんでも、勝手に変えちゃだめだろう・・・」


「ほら、帰るぞ」


「歩けない・・・」


「なんだって・」


「あ・る・け・な・いって言ったの」


「なんでよ・・・?」


太陽君はベッドで横になってるドールの手を引いて起こそうとした。


「横着してるだけだろ・・・ここに置いて帰るぞ」


「ここに、チューして・・・そしたら帰るから・・・」

「あとでチューしてあげるって言ったでしょ?」


ノルは自分のクチビルを指差した。


「え?いいのか?」


「自分の彼女でしょ・・・なに躊躇ためらってるの?」

「キスって恋人同士の大事なコミュニケーションだよ」


「そんなことは分かってるよ、だけど、こんなところでなんかできないだろ?」

「みんな見てるんだぞ」

「それはさ・・・家に帰ってからでいいんだよ」


「おい、早く帰ろうぜ」


そう言って、いいところに横槍を出すのはやっぱりヨコチだった。


「おまえは隣のクラスだろ・・・ひとりでとっとと帰れよ」


「ドールちゃん、あとで太陽んちにお邪魔するから、ゆっくり話そうね」


ヨコチが太陽君とドールの間に割り込んで来て余計なことを言った。


ドールは露骨にヨコチにアカンベーした。


「おお〜アカンベーも可愛いね、ドールちゃん」


ヨコチは知らなかった。

自分のママチャリがドールによって衣装に変えられてしまってることを・・・。


つづく。


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