第14話:しつこいヨコチ。

いつの間にかヨコチが瞬間移動したみたいにふたりの前に来ていた。

ひっつき虫みたいなやつだった、ヨコチ君は。


「さあ、太陽、俺の納得のいくよう説明しろよ」


「あのな・・・なんて言うか・・・この子は俺の頭の中のキャラなんだよ」


「はは・・・・なに訳の分かんないこと言ってんだ・・・違うだろ・・・」


「あ、そうそう、ポップカルチャーのイベント。

「埼玉スーパーアリーナ?」

「コスプレ大会に出るって、田舎から出てきた幼馴染・・・で俺の彼女」


(宇宙から来た生命体だなんて言えないだろ?)


太陽君は苦し紛れにいい加減なことを言った。

自分で、そんなことバレるって分かってるくせに・・・。


「太陽、埼玉スーパーアリーナのコスプレ大会ってそのイベントって

ついこの間、終わったと思うけどな・・・」


「それに、おまえに彼女なんていたっけ?」

「ゲームの中のキャラによく似た彼女なんて・・・どう考えてもおかしい

だろ?・・・

「いつからこんな可愛い彼女ができたんだよ」

「三日前か?・・・一昨日か?・・・それとも昨日か?・・・」

「太陽いい加減なこと言ってごまかすなよ」


太陽君はヨコチにだけは本当のことを話したほうがいいかなと思った。


「パムがいるのは大歓迎だとして・・・太陽とパムができてるってのが

腹たつよな」


「パムじゃねえよ・・・ドール、この子の名前はドールだ」


「ヨコチ、分かった、ちゃんと事情説明するからあとで俺んちへ来い」

「頼むから学校では騒ぐな・・・なにも言うなよ頼むから・・・」


太陽君はヨコチを無視して退屈そうにしてるドールに言い聞かせた。


「こう言う面倒なことになるんだから学校に来ちゃダメだからな、分かった?」


「なんで?」


「別に悪いことしてるわけじゃないけど・・・ドールのことは、あまり

人には知られたくないんだよ・・・人間じゃないんだからさ」

「今のドールはアイドル育成シュミレーションゲームの中のパムってキャラ

に似てるんだからさ」


「育成シュミレーションゲームやってるやつもいるから、そいつらに

もうバレてるんだよ」

「目ざといヨコチには、一番にバレたけどな」


「よくしゃべるね、太陽君」

「大丈夫だよ、普通ならこんなこと現実にあるわけないんだから」

「誰も信じないと思うよ」


「ここにドールがいるんだから現実だろ」

「ドールがパムそっくりかどうかは置いといたとしても、ラビみたいな

普通の女子とは違うオーラ出してる子がここにいるだけで問題なの」


「そうなの?・・・そんなの私のせいじゃないし・・・」


「ドール、朝より身長も伸びてないか?・・・」

「こうして、きちんとドールと並ぶと俺とあまり変わらないな?・・・」

「ブーツ履いてるからだろうけど・・・素足でも170センチくらいあるよな」


って太陽君は関係ないことに感心した。


「あ、そんなこと言ってる場合じゃないわ・・・」


「そうだよ・・・ねえ、おうちに帰りましょ」


「俺、まだ授業があるって言っただろ?」

「空飛べるんだから先に家に帰ってろよ」


「やだ、ひとりでなんか帰ったら途中で迷子になっちゃう」

「私、その授業ってのが終わるまで待ってる」


「ダメダメ、気が散って授業になんかならないだろ・・・」


「じゃ〜一緒に授業ってのが終わるまで、そばにいる」


「そばになんかいられるくらいなら俺が早退するわ」


「お話中恐縮だけど・・・」


「ヨコチ、まだいたのか?」


「太陽・・・おまえ・・・この子と一緒に住んでるのか?」

「どこで知り合ったんだよ・・・どうやって彼女にした?」


「だから、あとで俺んちへ来いって・・・」


「要するに・・・これはにわかには信じがたい出来事的な?」

「でもこの子可愛いから、そんなことどうでもいいか」

「太陽、絶対あとでおまえんちに行くからな、顔洗って待ってろよ」


「ヨコチ・・・しつこいぞお前・・・おまえはさっさと教室に戻れよ」


太陽君はさらにヨコチからドールを遠ざけようとした。


ってか、太陽君とドールがもたもたしてるから次の授業はじまっていた。

ヨコチは、覚えてろよ的な顔をして校舎の中に消えていった。


「夢中になってたからチャイムが聞こえなかったわ」


「私も教室ってところに行っていい?」


「ダメダメ」


「行きますぅ〜〜〜〜」


そう言ってドールは太陽くんの顔の前でクチビルを尖らせた。

ドールのクチビルを見て太陽君はその誘惑に負けそうになってもう少しで

思わずチュってしてしまうところだった。


「あ〜チューしてえ」

「おまえな・・・男心を惑わす方法知ってるな」


「行きましょ教室・・・あとで好きなだけチューさせてあげるから、ね?」


つづく。


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