第13話:ゲームの中のキャラ?。
太陽君は飛ぶような気持ちで学校の階段を降りて行った。
ドールがいるはずの教室の窓の下に太陽君が急いで行ってみたら
肝心のドールがいない・・・。
「いないじゃないかよ・・・どこに行ったんだよ、もう」
「人騒がせな子だな・・・」
太陽くんの教室は校舎の端っこにあったため、すぐに校舎の裏に回れる
ようになっていた。
もしかしてと思って太陽くんは校舎の裏に回ってみた。
そしたら・・・まさかの光景が・・・。
そこにヨコチとドールが向かい合わせに立っていた。
「おまえら、なにやってんだよ?」
「ドール、窓の下にいろって言っただろ?」
「あ、太陽くん・・・あのね」
「私が窓の下にいたら、この人がやってきてちょっと裏においでって
連れて来られたの・・・誘拐されちゃった、この人に」
「でね、私に僕と付き合ってくださいだって〜・・・」
「ヨコチ〜おまえな〜、俺の彼女をなに口説いてんだよ」
「彼女だと?」
「その前に説明しろよな・・・宙に浮く女の子なんて見たことないぞ、俺」
「おまえドールが宙に浮いて窓にへばり付いてるの見てたのか?」
「俺は可愛い女の子が周りにいると「ぶりっ子センサー」が働いて本能で
分かるんだよ」
「この子、ドールって名前なんだ」
「だけど太陽、おまえいま間違いなく俺の彼女って言ったよな?」
「一番知られたくないおまえに知られたな、ヨコチ・・・」
「説明したって信じねえだろうよ・・・説明するのも面倒くさいしな」
「もうひとつ疑問・・・」
「なんでアイドル育成シミュレーションゲームの中のキャラが実写版
さながらにここにいるんだよ」
「え?育成ゲーム・・・・なにそ・・・あ、そうか・・・まじか?」
「なに、驚いてんだよ」
「この子のこと、おまえドールって呼んだけど、どう見たってパム・ランドル
じぇねえかよ・・・この子」
(そうか・・・パムが俺の頭の中にいたんだ・・・今の今までなんで
気づかなかったんだろ・・・鈍いな〜俺)
(あ〜ゲームの中で別のキャラと浮気してたからか・・・)
「なんで、俺の大ファンのアイドル育成シミュレーションゲームの中のキャラが
ここにいるんだって話だよ」
「まじで、驚いてるのは俺だっつうの、太陽」
「太陽くん、もう帰ろうよ私、退屈になっちゃった」
「まだ授業が残ってんだって・・だからまだ帰れないの」
ヨコチやドールとそんなやりとりをしてると、いつの間にか三人の周りは、
すでに野次馬の人だかりになっていた。
「なんでだよ集まるのが早すぎだろ・・・」
教室で授業を受けてる生徒は太陽君よりは遅かったが、運動場や外にいた
生徒の誰かが窓の外で宙に浮いてるドールをいち早く見つけたんだろう。
ちょっとした騒ぎになっていた。
みんな、それぞれ好きなことを言って騒いでいたが、なんせ宙に浮いてる
女なんて滅多に見れないイリュージョンだったからだ。
しかもドールって普通の女子高生とは見た目が全然違っていた。
ドールは太陽君の理想のキャラ、ヨコチが大ファンだと言ったパムになった
ことで、ゲーム好きから注目を浴びることになった。
9頭身の上にスタイル抜群、足はめちゃ長いし・・・なにより体から滲み
溢れる七色のオーラ・・・人間の肉眼では見えないんだけどね。
しかもどのキャラにも共通した特徴、おっぱいがデカいってこと。
これは定番だな。
ドールを直に見た男子生徒は全員、彼女の虜になった。
太陽君はドールの手を引っ張って野次馬をかき分けて倉庫の裏に逃げた。
「ドール・・・こっち」
太陽君はドールを連れて学校の倉庫の裏に逃げたが、野次馬たちが、次々
ふたりの後を追いかけてきた。
「俺も驚いてんだ・・・ドール、おまえパムになっちゃってたんだな?」
「よく分かんないけど・・・」
「太陽君の理想の女の子になっただけだよ」
「でも、もう私は私でドールって独立した女の子になってるよ、パムって
子じゃないもん」
「そうか、じゃもう厳密にはパムじゃないんだ?・・・ドールだよな」
「もとの光の玉、今はもう有機体じゃないのかもな」
あの子、太陽君の知り合い?
転校生?
もしかして太陽君の彼女?
なになに、あの可愛い子、誰?
どこかのアイドル?
コスプレだろ?
みんな、それぞれ勝手なことを言っていた。
ドールがパムだとすぐに気づいたやつもいて、不思議そうにあるいは興味
深そうに彼女を見ていた。
そして、いつの間にかヨコチが瞬間移動したみたいにふたりの前に来ていた。
ひっつき虫みたいなやつだった、ヨコチ君は。
つづく。
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