第12話:自主的に浮いてる?

それは一時間目の授業の最中のことだった。


太陽君の席は、窓際だったこともあって窓から差し込む日差しが眩しかったので

遮光カーテンを閉めようと何気なしに外を見てびっくりして、二度見した。


なんと窓の外にドールが窓ガラスにへばりついて太陽君のほうに手を振ってる

じゃないか。


(え?・・・ドール?・・・そうだよな・・・あれ?・・・ドールがなんで

学校にいるんだよ・・・ん?・・・しかも、あれ?・・・服が変わってないか?

セーラー服は?変わってるよな・・・いつ間に?)

(こんなとこでなにやってんだ?)


って言うか太陽君にバレないようにって衣装変えたのに自分でアピール

してたら意味ないって。


(なにか言ってるし・・・)

(なんだって?)


(あ・い・し・て・る・・・?)

(なに呑気なこと言ってんだよ・・・来るなって言っといたのに・・・)


(それはそうと、ここ2階だぞ、どうやって上がったんだよ・・・)

(・・・ま、まさかだけど自主的に浮いてるとか?)


(え〜そんなこともできるのか?・・・聞いてないし、知らないし)

(なんでもできる子だな〜・・・魔法使いみたいじゃん)


ドールはもともと有機体だから大きい生き物に変身しても普通に空中を

浮遊する能力をもってるのだ。

太陽君はのんびりドールの能力に感心している場合じゃなかった。


(学校まで付いてきたんだ・・・)

(宙に浮いてるところなんか誰かに見られでもしたら大変だぞ)


そこで、太陽君はジェスチャーでもって窓越しに人差し指を下に差して

ドールに、下、下、って合図した。


(ドール、降りろ・・・下に、地上に降りてそのままそこで待ってろ)


「こら、そこ、日ノ本・・・何やってる、よそ見なんかしてないで

ちゃんと先生の話を聞きなさい」


「あ、はい、すいません」


(ヤッバ〜)


もう少しでドールのことが先生に見つかりそうになった。

こっそり窓の方を見たら、もうドールは消えていた。


(俺の指示が分かったのかな?)

(うろうろしないで、ちゃんと待ってろよ・・・)


対処が早かったから窓の外のドールは誰にも見つかってないだろうと太陽君は

タカをくくっていた。

だけど、それは甘い考えだった。

あいつに見つからないなんてことないから・・・。


またドールが派手な衣装着てきてるし・・・まるでアイドルみたいだから

めっちゃ目立ってるし・・・。

派手な衣装を着ると、アイドル育成シミュレーションゲームの中のキャラに

似てなくもない。

って言うかまんま、そっくりだった。

なんせアイドル育成シミュレーションやってる太陽君の脳内にいた子だからね。


一時間目の授業が終わると同時に太陽君は廊下を疾風にようにかけ階段を

カモシカのように飛んだ・・・。


本人はそのくらいの気持ちだった。


ドールがいるはずの教室の窓の下に太陽君が急いで行ってみたら肝心のドールが

いない・・・。


「いないじゃないかよ・・・どこに行ったんだよ、もう」

「人騒がせな子だな・・・」


つづく。

 

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