第10話:いってらっしゃいのチューなんかあたりまえ。
「おはよう、父ちゃん、母ちゃん」
「おはよう太陽・・・ドールちゃんもおはよう〜」
朝陽さんと日向さんは同時に挨拶した。
「ま〜息が合うわね〜私たち♪」
気が合うって、たまたまだろ?
朝陽さんと日向さんはいくつになってもラブラブでそんな些細なことを日向さんは
喜んだ。
日向さんは、そう言う単純で陽気な人なのだ。
そこが日ノ本家が平和でいる秘訣でもあるのだろう。
「おっはようございます〜朝陽さんに日向ちゃん」
「さあ、早く朝食食べなさい・・・学校遅れちゃうわよ」
「あ、その前にちゃんと顔洗って歯も磨いて・・・」
おお〜母ちゃんに俺たちが一緒に寝たことバレてないんだ・・・ラッキー。
「ドール、洗面所へ行こう」
太陽君は今日は学校だった。
「ドール、今日は俺、学校に行かなきゃいけないから家でおとなしくしてなよ」
「やだ・・・」
「やだじゃなくて・・・」
制服着てるからって、さすがに生徒でもない子を学校には連れて行けないからな。
「俺の部屋でテレビでも見てろ、学校終わったらなるべく早く帰ってくるから」
「早くご飯食べないと学校遅れるわよ、いつもギリギリなんだから」
「ほいほい」
太陽君は新幹線のような速さで朝食を平らげた。
「もっと、ゆっくり、たくさん噛んで食べないと体によくないわよ 」
「早くしろって言うし、ゆっくりって言うし・・・どっちなんだよ」
「早く、ゆっくりよ!!」
若者と言うのは得てして母親の言うことは聞かないもんだ。
逆に親の言うことをきちんと守るほうが、それはそれで問題がある気もする。
育ち盛りというものは複雑なのだ・・・。
太陽君はドールのことがちょっと心配だったが、しかたない。
朝食を平らげて後ろ髪引かれる思いで学校にでかけようとしていた。
「行ってきます」
「行ってらっしゃい、車に気をつけてね」
「太陽君早く帰って来てね・・・はい、いってらっしゃいのチュー」
「チューって・・・父ちゃんと母ちゃんが見てるし・・・」
「いいじゃん・・・悪いことしてる訳じゃないんだから」
「それに恋人同士なんだから・・・チューなんて当たり前でしょ」
「私たちに遠慮してるなら気にしなくていいわよ・・・どうぞチューでも
なんでもしてください」
「なんでもって・・・」
でもって太陽君は自分の理想のドールにチューで送り出されて気分良過ぎで
学校へ出かけた。
あまりに気分良すぎて浮かれてて通学路を忘れてしまうところだった。
太陽君はお気に入りのジャイアント・エスケープ(クロスバイク)でもって
高校に通っていた。
いつからか、どこからかジャイアントと言えば高校生が乗る自転車って
イメージがついてしまっている。
事実、太陽君はジャイアントに乗っているわけだけど・・・。
(今日が休みだったらよかったのに・・・)
太陽君はもっとドールと一緒にいてあれこれしゃべっていたかった。
だけど、そのドールは家でおとなしくなんかしてる訳がなかった。
彼女は太陽君が玄関から出て行ったところを見て、朝陽さんと日向さんに
見つからないよう勝手口から、こっそり外に出た。
太陽君は、ドールが太陽君の自転車の後ろからって言うか、上からついて
来てることなんか、ち〜っとも知らなかった。
ドールは、元は光の玉だったわけだから空なんか自由に飛べるのだ。
つづく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます