第5話 後輩ちゃんと手を握り合って押し倒すか倒されるか勝負

(ベッドに並んで腰掛ける二人)


(苦悶するような莉々菜の声)


「んん~」


「あのー。せんぱい?」


「さっきから、莉々菜のお腹をつんつんしてるのはなんなんですか?」


「えっ? 寄りかかってくる時重みを感じた?」


「そ、それって、莉々菜が太ってるって言いたいんですかー?」※ちょっと憤慨したように


「そんなはずありません! 確かにお家にいることが多いですが、ちゃんと運動だってしてるんですから! ほら、そこに輪っかみたいなコントローラーが落ちてますよね? リングでフィットしてシェイプアップしてるんです!」


「わかりました。莉々菜をそんなヨワヨワの運痴扱いするなら、してみます? 腕相撲!」


「自信? 満々ですよ~。これでも結構腕の力強いんです」


「この前なんか、お母さんが開けられなかったジャム瓶のフタ、莉々菜の手できゅきゅっと軽く開けられちゃいましたし?」


「せんぱいは真面目に学校行ってますけど、運動苦手ですからね! 莉々菜の方がフィジカルつよつよかもしれませんよ?」


「なんか乗り気じゃない顔ですねー」


「怖いんですか~?」


「おっ、勝負します? そうこなくちゃ面白くないですよ」


「いいものがあるんです」



(ベッドから降りて、とたとた部屋を歩く音)



「じゃん! 折りたたみテーブル! いつも一緒に勉強する時に使ってるやつです」


「んしょっ、と」


「わ。せんぱいも手伝ってくれるんですね。じゃあそっち側の脚を開かせてください」



(折りたたみテーブルの脚を開いて設置する音)



「はい、できました。ええ、これはバトルフィールドです」


「ささ、腕相撲しましょ」


「にゅふふ。せんぱい。こうしたらどうでしょう? 勝った方が相手の言うことなんでも聞くっていうのは?」


「ただの勝負じゃ面白くないですから」


「え? 後悔なんかしませんよ。だって勝つのは莉々菜ですもん」


「さぁ、やりましょう、せんぱい」


「デュエル、スタンバイ!」



(テーブルの上で、互いに手を組み合わせる)



「じゃ、行きますよ~。合図は…ええ? 莉々菜がやっていいんですか? せんぱいはさっきから余裕綽々ですね」


「でもその余裕が命取りになっちゃうんですよ。今日は油断大敵ということを、せんぱいにわからせてあげますから」


「では……しっかり握っててくださいね」


「…………スタート!」


「…………んっ!」


「ふんっ! んん~!」


「ど、どうしてですか~、せんぱいがビクともしません~」


「バカな! まさかこの莉々菜がせんぱいに負けるなんて~」



(力を込めるあまり、変な声が出てしまう莉々菜)



「ふんっ、ふーんっ! おふん!」


「んほっ! んっ……おほ~っ!」


「おふっ、おう~ん! おうん!」


「へ、変な声じゃないですよ……真剣に勝ちたいがための……勝利を目指した咆哮です……!」


「んんんんっ~、ほほ~~~っ! ほひょっ」



(コツンとリスナーの手がテーブルに当たる音)



「あっ!」


「か、勝っちゃいました!」


「大逆転勝利ですよ~。やっぱり莉々菜の方がつよつよなんですね」


「あれ? せんぱいはどうして笑ってるんです? 負けたはずなのに」


「えっ? な、なんですか! 莉々菜が変な声出して笑わせる反則技使ったってどういうことですか。別に笑わせてないですよ~」


「そうやって真剣に勝負する人を笑うなんて、せんぱいは酷い人です」


「そんなせんぱい、もう知りません」


「……え?」


「……そうでした。勝った方は何でも言うことを聞かせるんでした」


「じゃあ、莉々菜を笑った罰です」


「せんぱいの体をおもちゃにしちゃいます」


「これからせんぱいは、莉々菜に思う存分体をモミモミされることになるんです」


「うふふ。せんぱいが、触られるとぴくんぴくん大げさに反応しちゃう体質なのは、莉々菜よーく知ってますし?」


「さーあ、せんぱい? そこのベッドでうつ伏せになってください?」


「莉々菜を忘れられない体に魔改造しちゃうんですから」

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