第3話 後輩ちゃんとベッドでダラダラ配信視聴

「ほら、せんぱいー、観てくださいよ、この動画! 最近莉々菜が最推しのVtuberさんなんですよー」


「一人で観るのも推しがこっちに話しかけてきてくれてるみたいで好きなんですけど、今日はせっかくですし、せんぱいと一緒にダラダラ観たいと思いまして」


「ていうかどうしたんですか? さっきから落ち着きないですよ?」


「えっ、そんなこと気にしてたんですかー。いまさらー」



(莉々菜がゆらゆらしてベッドが軋む音)



「せんぱいがあぐらかいたところに、莉々菜が座ってすっぽり収まるの、二人きりの時にいつもやってるやつなのにー」


「どうしていまさら恥ずかしがるんですー? 変なのー」


「はっ! やっぱりスパッツ越しのお尻が密着してるところがせんぱいの萌え萌えポイントなんですか?」


「あわわ、だんだん座り心地が……」


「せ、せんぱい! ほら、莉々菜の推しVtuberのライブ配信を観て気を静めましょう!」


「まだお外はとっても明るいので、そういうのは早いです!」


「あ、でも莉々菜のことは、ぎゅーっとしてくれてると嬉しいです」※小声



(抱きしめられる莉々菜)



「せんぱいは腕が長いですね。莉々菜のことすっぽり腕の中に収めちゃえるんですから。莉々菜が小さいだけかもしれませんが」


「うふふ、あごで莉々菜の頭ごりごりしちゃっても許しちゃいますね」


「それでですねー、せんぱいに観てもらいたいのはこのVtuberさんなんですけど。あれ? 前にも言いましたっけ? せんぱいには、莉々菜が好きなこといっぱい教えちゃってるので、たまにわからなくなっちゃうんですよね」



(タブレットをタップする音)



「ありました、ありました。各里夜ヨムちゃん、ちょうど配信してますよー。初代スーパー鞠王ブラザーズのクリア耐久配信ですって」


「ほーらせんぱい、一つのイヤホンを二人で使っちゃいましょう」


「せんぱいは右耳で、莉々菜は左耳です」


「こういう共同作業もいいですよね。せんぱいの右耳と、莉々菜の左耳で、二人で一つです」



(配信を見始める。イヤホンから漏れ聞こえる8bitサウンド)



「 (配信に熱中し、しばらく呼吸音。『おお~』とか『わぁ』という感嘆の声。また、『見ました? 今の。神プレイでしたね』や『やっぱり奇跡起こしちゃいますよね~』など、囁くような声でゲーム配信に対する感想も時折漏らす) 」



「あ、どうしましょう、せんぱい。『今カップルで楽しませてもらってます~』って微妙に煽りっぽいクソコメしちゃいます?」


「ですね。こういう場はぼっちの陰キャでいるのがマナー。みんなで楽しまないといけませんもんねぇ」


「ふふ、莉々菜もせんぱいも陰キャなのは本当のことですし」


「陰キャは莉々菜のペースを変に乱さないから好きです」


「なので、大好きなせんぱいが陰キャなことは、莉々菜にとってプラスにプラスを掛けてるので無敵なんです!」


「うーん」


「観てるだけなら、莉々菜ならもっと上手くできそうって思うんですけど、実際やってみると全然なんですよね」


「まあ、最近の莉々菜はもっぱら不老夢の死にゲーばかりですけど」


「ねえせんぱい。もし莉々菜がVtuberになったら、人気が出ちゃうと思いませんか?」


「ほら、莉々菜ってアバターに起こしやすい見た目してますし」


「えっ? いやぁ、莉々菜の見た目と全然違うアバターになりたい気持ちは今はないですかねぇ」


「……だって、せんぱいが好きって言ってくれた見た目ですから? このリアルアバターは、せんぱいが一緒にいてくれる限り手放す気はないです」


「莉々菜は、せんぱいが推してくれたらそれで十分なので」


「だから~、莉々菜にいーっぱいスパチャくださいね?」



(何言ってんだ、とばかりに莉々菜の頭をくしゃくしゃする)



「わぁ、頭くしゃくしゃしないでくださいよ~」


「せんぱいは誤解してるみたいですね」


「せんぱいが莉々菜に送るスパチャは、ちゅ~のことなんですよ?」



(ベッドが軋む音)



「……今日のスパチャ、くれますよね?」※ねだるように



(リップ音)



「ふふ、ありがとうございます、せんぱい」


「にゅふ。でも、赤スパも期待してますからね♡」

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