第2話 後輩ちゃんとベッドでダラダラ漫画読み

(ベッドが軋む音。2人分)



「うふふ、せんぱい~、莉々菜の隣でうつ伏せになってくださいねー」


「せんぱいの方が身長おっきいですけど、横になれば身長差なんて関係ありませんよね」


「じゃあせんぱい、このタブレットで一緒にマンガ読んじゃいましょうよ。ちょうど今日配信の週刊少年ジャンプウをダウンロードしてありますから」


「10インチ超えタブレットですから、一緒に読むのでも問題ありませんよね。ダラダラカップル向けタブレットですよ」


「タブレットはせんぱいに任せます。好きにページをめくってくださいね。カレシのやりたいようにさせてあげるなんて、できたカノジョだと思いませんか?」


「このままじゃちょっと読みづらいのでー、もうちょっとせんぱいに近くに行ってあげます」


 

(ベッドが軋む音。くっつきに行く莉々菜)



「寄りすぎて莉々菜の体が半分せんぱいに重なっちゃいました。でもせんぱいからすればむしろご褒美ですよね」


「ふふふ、せんぱいはどんなマンガ読むんですかねえ? 莉々菜は寛大ですから、ちょっとえっちなマンガで手が止まっちゃっても許しますよ?」


「ああっ、フードを引っ張って目隠ししないでくださいよぉ。目が、目が~」


「なんて、莉々菜の目が見えなくなってるスキに女の子がお風呂入るシーンを読んじゃおうとか考えてませんか?」


「でも残念ですね! 今週はせんぱいが好きそうなお色気ラブコメマンガは作者取材のため休載ですから!」※嬉しそうに


「あーあ、せんぱいの楽しみがこの世から一つ減っちゃったー」


「……代わりに、莉々菜でお色気ラブコメマンガしてもいいんですよ?」


「莉々菜のリアルボディなら、不自然に邪魔が入って肝心なところが見えない~なんてこともありませんし?」


「あー、無視して読み進めないでくださいよ~」


「しかもさっきから全然構ってくれないじゃないですかー。ガチで読むことに集中しないでください~。もっと構って!」



(頭を撫でられる莉々菜)



「んん……ふぅ」※気持ちよさそうに


「……せんぱい、頭を撫でれば機嫌を直すようなチョロい女と思ってませんか?」


「だいたい、せんぱいによる女の子の機嫌を取るテクニックっていつも一本調子で同じことしかしないんですよね。レベル低すぎですよ」


「ふふ、でもそんなレベル低いせんぱいのテクニックでもなんだか気持ちよくなってしまう莉々菜も大概ですが」


「せんぱい、昔から異能力系バトルマンガ好きですよね。今も授業中に暇な時は、テロリストが攻めてきて突如目覚めた力でそいつらを撃退する妄想してるんですか?」


「そこは否定しないんですね」


「好きなものを素直に好きと認められるせんぱいはいいと思いますよ」


「じゃー当然、莉々菜のことも素直に好きって言えちゃいますよね?」



(好き、と正直に口にする主人公)



「…………」


「う、うふふふ……」


「……にゅふ」


「ま、まさか本当に言ってくれるとは思いませんでしたね……」※照れ声


「ひょっとしたら莉々菜って恋愛マンガよりマンガしてるんじゃないですか」


「せんぱいのヒロインは莉々菜なんですね」



(ベッドでうつ伏せになったまま、機嫌よく両足をパタパタさせる音)



「んふふ」


「――ええっ!? せんぱい何してるんです!?」


「そんなどうでも良さそうな背景を拡大表示するなんて!」


「アシスタントさんの仕事ぶりをチェックしたい? そんな楽しみ方するのせんぱいくらいなものだと思いますけど」



(しばらく無言で読む二人)



(読み進めているリズムでタブレットをタップする音。それに付随して莉々菜の呼吸音が規則正しく)



「おっ、来ましたね。恋愛系です。ラブコメですけど、少年誌では珍しいくらい恋愛描写が濃いんですよね~。莉々菜の一推しです」



(早めのリズムでタブレットをタップする音)



「あ、せんぱい、早いです。今のところ、まだ読んでたんですけど」


「せんぱいにとってはどうでもいいシーンかもしれませんが、今はヒロインさんがどうやって思いを伝えるか苦悩してたシーンじゃないですか。もっとじっくり読んであげましょうよ」


「まーでも、なんかせんぱいが告白してくれた時あまり迷いなさそうでしたもんね」


「せんぱいには、もうちょっと情緒がほしいかなと」


「おっ、今度は推理漫画ですね。吹き出しいっぱいですから読み応えがありますよ」


「これはせんぱいもお気に入りですから、読み飛ばしちゃうようなことはしませんよね」



「 (ゆっくり目のリズムでタブレットをタップする音:それに付随して、『ふんふん』とか『んふー』というような興奮気味の莉々菜の鼻息を) 」



「えっ? 莉々菜の鼻息が? 気のせいです。莉々菜がそんなぶひぶひ豚さんみたいなことするわけないじゃないですか」


(何度かタブレットのタップ音)


「…………」


「んふぅ」


「……な、なんですか、せんぱい。止めてください、その疑わしそうな目」


「そうですよ、鼻息ふんふんしちゃいましたー」※開き直る


「……しょうがないじゃないですかー、真剣に読もうとするとなっちゃうんです」


「逆に、せんぱいの方こそおかしいですよー。こんな犯人を追い詰める白熱の推理シーンなのに無反応なんて」


「せんぱいの好きは、その程度なんですか?」


「な、なんです? 莉々菜を見たと思ったら、急に鼻息荒くなって……」


「あっ! せ、せんぱいが興奮するのはマンガよりも莉々菜だったってことですか!」



(顔を赤くする莉々菜)



「もうマンガは止め、止めです~! 違うことしましょう!」


「お昼から莉々菜をいただいちゃおうとするのは、早いんですからね!」

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