第56話「筆木シズカ-21」
◇
笹岡さんは堅田さんに対して事の顛末を話した。
このデスゲームに乗った笹岡さんがゲームに乗らなかった堅田さんと対立して殴り合いになって、
堅田さんが気を失い、堅田さん体内に潜んでいた怪異が体の主導権を握って
このゲームに乗って笹岡さんと人を殺しまわったという話だった。
というか、あの怪異は男だったのか・・・いやゆるオネエというやつだな・・・そういう人間と接したのは初めてだわ。
「怪異ですって!?そんなものが本当に実在するっていうの!?
私のことが気に食わないからって私をからかうのはやめなさい!!!笹岡!!!」
堅田さんは至極当然の反応を見せた。
「堅田、笹岡さんの言ってることは本当だよ。実は私も怪異なんだ。」
内浦さんが前へ出て怪異としての白い巨大カラスとしての姿を見せた。
「嘘でしょ・・・!?」
堅田さんはしばし絶句した。
「それじゃあ本当に私の中に怪異がいるって訳・・・!?気持ち悪ッ!!!最低だわ!!!」
堅田さんは顔を真っ青にして嫌悪感を露わにする。
そりゃあ普通に考えて見知らぬオネエに自分の体で好き勝手されるってあまりにも嫌すぎるよな。
これに関しては同情しかねえわ・・・
「この手で何の罪の無い多くの人を殺してしまったなんて・・・
気を失ってしまった私のせいで、それを許してしまったなんて・・・
とても償いきれない大きな罪よ・・・」
グスッ
そう言って堅田さんは涙を流し始めた。
その言葉を聞いて堅田さんはやっぱ善人なんだなと思った。
俺だったら全部怪異の責任にして何の罪の意識も感じることはないわ。
というか実際そうだろ。被害者以外の何者でもないじゃねえか。
こんな地獄みたいな状況になるとかマジでこの世は狂ってるな。
「私はこんなゲームは降りるわ!!!そこの黒い影!!!私を神様から外しなさい!!!」
「堅田!!!落ち着いて!!!ゲームを降りることは死ぬことでしか出来ない!!!死んじゃっていいのっていうの?」
人間の姿に戻った内浦さんが堅田さんの両腕を掴み、堅田さんを諭す。
「馬鹿じゃないんだからそんなの分かってるわよ!!!
でも、私の体で人を殺させないにはこうするしかないじゃない!!!
分かったなら離しなさいよ!!!私は貴方みたい人殺しとは関わりたくないわ!!!」
堅田さんは声を荒げて内浦さんを突き放す。
「堅田・・・」
内浦さんは何も言えずに、落ち込んだ顔を浮かべることしか出来なかった。
「堅田ユキエ様、申し訳ございませんがそれは出来ません。現在貴方がゲームを降りることは出来ません。」
「どうしてよ!!!」
「堅田様と貴方の中にいる怪異、山田ソウキチ様は2人で1人の切り離す事の出来ない運命共同体なのです。
堅田様がこの戦いを降りると宣言しても、山田様の同意がない限りはその宣言は無効です。
そして、山田様はこの戦いを降りることを拒否しています。」
「は!?何それ!?ふざけないでよ!!!」
堅田さんはこれ以上ないほどにキレている。
「チッ・・・うるせえな!!!
お前はゲームに参加せず、嫌なもんは全部怪異に押し付けておけば別にそれでいいじゃねえか。
お前は何の罪に問われることはない。一体何が不満なんだよ!!!」
喚く堅田さんを耳障りに思ったのかメジャーリーガーの風我が怒鳴り声をあげる。
その迫力に俺は一瞬心臓が止まるかと思ってしまった。やっぱ怒れる大男って怖えわ・・・
「不満に決まってるじゃない!!!こんな人間の命を玩具にしたゲームを認めろだなんて!!!
貴方もここで生き残っているってことは人を殺したのでしょうけど、自分が恥ずかしくないの!?
貴方、メジャーリーガーなんでしょ?皆のヒーローであるべきなのにこんな有様で惨めに思わないの!?」
しかし、そんな風我に臆することなく堅田さんは怒鳴り返した。堅田さんすげえな・・・
「う、うるせえな・・・」
風我は堅田さんにまともに言い返すことが出来ずに堅田さんから目をそらして黙り込んでしまった。
あれっ?メジャーリーガー弱くね?
いくらなんでも子供1人に対してレスバで即死とかクソ雑魚すぎるだろ・・・見かけ倒しかよ・・・
「貴方達も同じよ!!!こんな影の言うことに従ってしまって、情けないと思わないの!?」
堅田さんは抑えきれない怒りを今度は生き残った俺達にぶつけてきた。
「そうだね・・・、情けないよ。こんなにも自分に無力感を感じたのはこれが初めてさ。
僕だってこんなゲームを認めたくはない。このゲームを終わらせてやりたいと思ってる。
だけど今の僕には出来ることはない、それが現実なんだ。」
「『今の僕には出来ることはない』ですって?いつも諦めない佐谷君からそんなセリフを聞くとは思わなかったわ!!!
どうして勝手に決めつけてそんなに弱気になるの!?何か他に方法があるかもしれないじゃないの!!!」
「じゃあその方法とやらを教えろ、堅田ユキエ。」
「三方君・・・」
「何も思いつかないんだろ?そのザマで綺麗事をまき好きなだけ散らして満足したか?
チッ・・・温室育ちで何の苦労もなく甘やかされて育った脳みその溶けてる小娘が・・・
あいにくこっちはお前のオナニーに付き合ってやる暇は無いんだ。
アンアンイクなら一人でやってろ。」
「やめてよ隊長・・・堅田になんてことを言うの・・・」
すっかりキャラ崩壊してしまった三方、クソみたいなこと言ってるな・・・
「それが貴方の本性なのね・・・貴方のことは素敵な殿方だと思ってたのに、見る目が無かったわ。」
「ギャハハハハハ!!!三方お前、俺の口の悪さに説教かましてくるくせにお前も大概じゃねえか!!!
お前がこんなオッサンじみたセクハラかますとか面白すぎるだろ!!!」
「在原君、貴方が生き残っているのは予想通りね・・・」
「おいおい・・・そんなゴミを見るような目で見ることないだろ。
だってこのゲームに乗らないなんてデメリットしかねえじゃん。
乗らなかったら死亡確定で、乗ったら神様としてこの世界でやりたい放題できる。これで後者選ぶのは当たり前だろ。
これでこの話はおしまいだ。
それにしてもお前本当にいい眼してるよな。こういう女をボコボコにして犯すのが最高なんだわ。
おっと、流石に今はやらんぜ?なんつったってさっき発射しまくったばっかだからチャージが必要なんだわwww」
「最ッ低!!!」
堅田さんに冷たい視線を向けられても在原はもろともせず平常運転を見せた。
「尾形君は在原君と仲が良かったっけど、貴方も同じ考えなの!?」
堅田さんは今度はさっきからずっと無言を貫いている尾形君を追及し始めた。
おいこれもしかして堅田さん、このくだり全員分やるつもりか・・・?うわあ・・・だとしたら死ぬほどダルいな・・・
俺はさてどう答えようか・・・俺ってこのクラスで影は薄いほうだからワンチャン上手いことスルーされねえかな・・・
「俺は神様の力とやらにも女を犯すことにも興味は無い。ただ純粋にこのゲームに魅力を感じている、それだけだ。」
「魅力・・・?貴方はこんなもののどこに魅力を感じるっていうの!?」
「死が隣り合わせになったスリルを味わいながら、相手と勝負出来るなんてなかなか出来ることじゃないじゃないか。
戦場に行けばそんな思いも出来るかもしれんが、兵士は人間だから初見殺しの兵器であっけなく終わることもある。
その点に調整が入ってるのが評価出来るな。」
「理解出来ないわ・・・」
おお・・・尾形ってこんなキャラだったのか・・・
ぶっちゃけ尾形って高校生レーサーという肩書以外は無口で何の特徴もないから知らなかったわ・・・
俺はバトルジャンキーという表現を多用してるけど、尾形は本当の意味でのバトルジャンキーだな。
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