第34話「明智セシル-6」
◇
「ここが良いかな・・・」
ガチャ
「あっ。」
私が潜伏場所として良さげな周囲を草木に隠された小さな倉庫を見つけ扉を開けるとそこには先客がいた。
「なんだ明智か。お前すげえことになってんなwグロすぎて一瞬怪異かと思ったわw」
「在原君か・・・何してんの?」
「何って?見ての通りだろ。この女良い体してたからな。使わねえのは勿体ねえだろ。」
在原君は下半身を丸出しにして一般女性の死体に性的暴行を働いていた。
「勘違いしないでほしいが別に俺が悪趣味って訳じゃないぜ?。
当然俺だって生きてる人間を犯した方が良いに決まってる。死んでたら反応とか見れねえからな。
殺すのは絶頂決めた後だろ。
ただ、この神様としての体が強すぎて抵抗してるのを取り押さえただけで死なせてしまうんだよ。
だからしゃーなしだ。状況に応じて人間の体に切り替えられるとかだったら便利なのにな。」
「いや、そのことじゃなくてさ・・・まだゲームの途中なんだから戦わなきゃ勝てないじゃん。
私達の勝利条件は一般人200万人、あるいは神様33人の殺害、この条件を満たす為にはサボってる時間なんてないよ・・・」
「そのことなんだけどさ、別に俺達が勝つ必要なんて無くね?
なんか明智はその感じじゃやたらガチってるけど。
俺達が負けたところで、全滅さえしなければ特にペナルティとかは無い訳だろ。
そのことによって貰える報酬とやらは減るみたいだけど、それぐらいじゃん。
確かに報酬は大量に欲しいけどそれで派手に動いて死んじまったら元も子もない。
このゲームは戦果を上げないとあの影に殺されるって話だけど、聞いてみたらたった一人殺すだけで良いって話だぜ?
ノルマが緩すぎて爆笑だわ。なおさら張り切る気がしないぜ。
自分で言うのもあれだが、俺は滅茶苦茶強い。
だからこそ生き残り最優先でコソコソと雑魚狩りに徹することでリスクと避けて安牌をとる。」
「・・・なるほどね。確かに在原君の言う通りだよ。」
バタリ
一言答えて私は立っているのも限界となり壁に倒れこんだ。もはや自由に体を動かすことが出来ない。
口だけは動くので私はそのまま続ける。
「だけど、私は一回世界を滅亡させてみたかったんだ・・・
だから、このゲームに勝ちたい。
本当はもっと自分でも戦うことが出来たらよかったんだけどね・・・
あいにく私は他力本願しか出来ないクソ雑魚だよ・・・
だからこそ、組織で日頃から破格の活躍している在原君が全力を発揮してくれたら、
それ以上に嬉しいことはないんだけど・・・」」
「そうか・・・でも、例えお前の頼みであってもこれを曲げるつもりはない。
というか、もう頼みを聞く必要も無いよな?
俺はお前の指示に従うかわりに、俺のいくつかのやらかしを揉み消してもらってたけれど、
今の俺は人間社会から解脱した神となった訳だからよ。
なんならここがお前を消すチャンスでもある。そんなに瀕死だと一撃で行けそうだわ。」
在原君はニヤついてみせた。
「在原君は私を殺すんだね・・・ま、自分の悪事を脅してくる人間なんて邪魔でしかないか。
私もここで終わりか。振り返ってみると今までが上手くいき過ぎてたよ・・・
美味しいものを食べたり面白いものを見れたり、散々良い思いをしてきた訳だし、悔いはないかな・・・
いやそれはやっぱ嘘。
そもそも在原君のいるこの倉庫にうかつに入り込んだのが悔やまれるよ・・・
よくよく考えれば生え茂っている草に思いっきり人が通った後があったし、そもそも鍵が破壊されてた訳だし、
こうなる可能性は予測出来たはずだったんだよね。
普段の私ならこんな見落としは絶対にしなかったはずなのに・・・」
「バツが悪そうだな・・・そんな明智の顔を見るのは初めてだぜ。
惨めな表情を見るのが好きだと日頃から言っていたお前の気持ちが今よーく分かる。
俺があのメンヘラぶっ殺した時にお前に泣いて縋り付いたときもさぞ最高だったんだろうな。
今じゃ立場逆転だ。
あの時の俺みたいな感じで俺に命乞いした上でこいつを喜ばせてくれたら、殺さないでおいてやるけどどうする?」
在原君は自分の股間を私の顔に近づける。
やたらと女が集まる理由を理解できる大きな図体にふさわしいイチモツだ。私は特に興味を抱かないけれども。
「それだけは絶対に嫌だね・・・私の事を殺したいならさっさとやりなよ。
幸いなことにもう残り時間も少ないと思うからも私にじっくり苦しみを与えながら殺すなんてことも出来ないでしょ。
体の感覚も馬鹿になってるし犯したいなら好きすればいいじゃん・・・」
「もっと可愛げのある反応をしてくれよ。つまんねえな。」
「あいにく私はそういうのとは無縁なんでね・・・」
「チッ・・・まあ、どのみちお前は殺すつもりなんてねーよ。これから先のことを考えてな。
このゲーム、三方の野郎とソイツにぞっこんな内浦は絶対に生き残ってくる。
たぶんアイツらは一般人相手に好き勝手する俺のことを許さないだろう。
アイツらを敵に回した以上、俺も一人で対抗するのはキツいから少しでも味方が欲しい。
お前だって、こっち側の人間だろ?
世界の改変行為に本性をさらけ出す必要がある以上、三方の怒りを買うことは不可避だぞ。
そういう訳で俺達は手を組むべきだ。」
その言葉に私は思わず目を開く。
「驚いたね・・・このザマの私を味方だとみなしてくれるんだ。
そりゃあ三方君はこれから私のにとって邪魔者以外の何者でもないから、立ち向かっていくつもりだけどさ。
はっきり言って私は戦力外だよ。『昔から無能な働き者は殺せ』って言うじゃん。」
「俺はお前のことを買ってるんだ。一応恩人として色々助けてもらった訳だしよ。
お前はここで生き残れさえすれば無能な働き者で終わるような奴じゃないだろ。
確かに今のお前はこの戦場じゃ生まれたての小鹿でしかないが、それはそのまま伸びしろになる。
お前の頭脳と与えられた超人的な肉体で経験を積んでいけば、
お前はアイツらにも肩を並べる存在になれると俺は確信してる。俺って戦力を見る目はかなりあるんだぜ。
無能と有能を見極める点に関しては三方に絶対勝ってる。」
「まあね・・・私だって次はもっと上手くやるよ・・・これが終わりさえすれば1年の準備期間もある訳だし・・・
格闘だの武道だのに対する見識を深める機会はいくらでもある。」
「だろ?そしてそれはここを生き残った他のクラスの奴らにも言えることだ。
今後脅威になり得るのは三方と内浦だけじゃなくなるだろうからな。
このことを考えてもやはり俺達は同盟を組むべきだろ。」
「そうだね・・・その通りだと思うよ・・・」
「そういう訳だからお前は後は寝ておけ。正直俺はプレイを見られる趣味はねえんだよ。
今敵が来たらちゃんと俺が守っておいてやるからよ。」
「私だって人のプレイを見る趣味は・・・いや、状況によるか。
まあ全部在原君の言う通りにするよ。どうせ今の私には何も出来ない訳だし、それじゃあおやすみ。」
「おう、おやすみ。」
そして私は意識を失った。
◇
目を覚ますと私が一番最初に連れてこられた部屋に戻っていた。
目の前には私の姿や声を模った影が立っている。
「これで1日目の戦いが終わったんだね。」
「はいそうです。神様を1人殺した貴方のご活躍は大変素晴らしいです。報酬も弾みますよ。お疲れ様です。」
「活躍ねえ・・・私としては赤っ恥でしか無いよ。
完全に生殺与奪の権を在原君に握られて、あまりの情けなさに何も言えないね。
実質一回死んだようなもんだよ。もし在原君の機嫌が悪ければ私は滅茶苦茶にされてたね。」
私は首を傾げながら苦笑いを浮かべ、その後大きく息を吐いて、両手で顔を覆う。
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