第4話「筆木シズカ-4」



「は・・・?どこだよここは?え!?何が起きてるんだよ!!!」


突然の事態に俺は混乱を隠せない。


「なんで教室で席に座っていたはずの俺が今ベットに腰かけてるんだ・・・?

瞬間移動か!?他の奴らはどこいったんだよ・・・!」


周りを見渡す、どうやら俺は今ホテルの部屋のような場所に一人でいるようだ。


「ふかふかだな・・・滅茶苦茶寝心地が良さそうだわ。」


今の状況を受け入れられないあまり逆に呑気なことを口走ってしまった。

だが、実際見た感じ設備はかなり良いっぽい?薄型テレビとか馬鹿デカいしソファーとか椅子もオシャレで丈夫そうだ。

これ買おうと思ったら金持ちしか無理なやつだろ・・・

清掃も隅々まで行き届いており、綺麗な部屋だ。旅行で来たらこんな所に泊まってダラダラスマホとか弄りたい。

ひとまず部屋を物色してみる。

ベッドの横にリモコンが置かれていた。

テレビは映るのかと、試しに電源ボタンを押してみるが反応はない。


「う~ん、壊れてんのか?それとも、電池が切れてるのか?」


次に冷蔵庫を覗いてみる。何種類かの飲料が入っていた。俺の好きな炭酸もある。


「うわ、ちょうど喉乾いてるから滅茶苦茶飲みたいんだけど、

でもこういうのってうっかり飲んじゃうと後々すげえぼったくられるんだよな。

嫌なこと思い出したけど、ガキの頃の俺がやらかして父親に怒鳴られたことがあるんだわ・・・

それによくよく考えると危険だしな・・・毒とか入ってたらその時点でジ・エンドだし・・・」


引き出しにはティーパックやお菓子、カップラーメンもあった。

勿論ポッドも常備されているが、今は手を付ける状況ではない。


「ここ結構高いな・・・何階だろう・・・」


大きな窓から景色を見渡す。厳重に施錠されており開くことは出来ない。

雲一つない青空と穏やかな海岸が見える。


「なんだここ?観光地なんかね。その割には人は全くいないが。スマホも圏外だし・・・」


ホテルといえば俺的にはユニットバスの印象が強いが、ここはトイレと浴槽が別になっているようだ。

洗面台の蛇口を捻ると水が出てくる。いや、正確には水らしきものか。

これに触れてしまったら肉体が溶けるだったらマジで恐ろしいな・・・さっさと閉めておくか。


「出口へ扉は・・・開かないか・・・こりゃあ俺閉じ込められてるな。」


これはかなりまずい状況だ・・・


「なんだよ・・・脱出ゲームでも始めるのかよ・・・?」


強行突破を試みて、扉に体当たりを試みるがびくともしない。


ドンドン


「誰か!!!扉の外にいませんか!!!助けてください!!!俺はこの密室に閉じ込められてしまっています!!!」


俺は必死に助けを求めるが人の気配は一切しない。耳を澄ませてみても俺の出す音以外は何も聞こえない。


プルルルルルルルルル


「!?」


ベッド横に備え付けられてある内線が鳴る。これは出るべきなのか・・・?

現状を打破するためには出たほうがいいのかもしれないが、俺電話苦手なんだよな・・・

両親不在時に家に掛かってくる時も、

コンビニに行ってたとかトイレに行ってたとかいうことにしておいてガン無視決めてるし。

そんなこんなで迷っている内にコール音は途切れてしまった。


「これやっぱ出ておくべきだったかね?ま、もう終わった話だ。」


もう少し部屋を調べてみようと俺は後ろに振り替える、すると。


「誰だッ!?」


現れた黒い人影に俺は言葉を失う。


「どうなってるんだよ・・・これ・・・もしかして幽霊ってやつなのか・・・?」


人影は本当に影そのものだった。この世界の物理法則が完全に無視されている。


「あなたは今日から神様です。」


俺が驚くのに気も留めず人影は声を発す。男の声だ。

その辺にいそうな声ではあるが少し気持ち悪いな。陰キャ感が強すぎる。


「は?お前喋れるのか?神様ってどういうことだよ!?」


「神様とはこの世界を支配する存在です。この世界には貴方の他にも32人存在しております。」


「多いな!唯一神もクソもねえじゃねえか。

てかそんな怪しいもんになる気とかねえから、さっさと開放してくれよ。」


「それは出来ません。神様の座を降りる方法は死しかありませんので。

もし貴方がこの場で死を選ぶのなら、その選択を尊重します。その手助けも致しましょう。」


人影は淡々とそう言って右腕を鋭利な刃に変形させる。


「おいちょっと待て!!!元に戻せよ!!!とりあえずは死なねえから!!!」


「畏まりました。」


正直こんな意味不明な状況でこれから何をされるのかも分かったもんじゃねえし、

ここで死ぬのもアリだとは思うが、やはりビビってしまう・・・


「・・・それでその神様とやらになって俺はこれからどうなる?」


「ひとまず貴方にはこれから世界を守る戦いに参加してもらいます。それが神様の義務ですから。」


「は?戦い?そもそも誰とどういう形式で戦うんだよ?」


「貴方はパラレルワールドをご存じですか?」


「ああ、知ってるけど。なんでいきなりそんな単語が出てくるんだよ?」


「パラレルワールドはこの宇宙に実在しており、今この瞬間も新たなる世界が誕生し続けています。

貴方達33人の神様は1つのチームとしてその別の世界の神様33人と殺し合いを行ってもらいます。」


「殺し合い!?」


脱出ゲームどころではない・・・まさかデスゲームに参加させられるとは・・・

これは本当に現実なのか?本当の俺は今学校で寝てて、これはただのヤバい悪夢とかだろ。

しかし夢にしては感覚がはっきりとしすぎている。


「いやちょっと待て、なんでそんなことさせんだよ!!!」


「選別の為です。

この宇宙に存在できるパラレルワールドの数は限られていますので、増え続ける世界を減らす為に、

どの世界が消滅するのかを勝負の結果で決める必要があります。」


お、おう・・・

話の規模があまりにも壮大すぎるな・・・

なんか逆に笑えて来た。


「要するにその別の世界の神様とやらを33人を全滅させれば俺らの勝ちで俺らの世界は存続して、

逆に俺ら33人が全滅してしまったら俺らの負けで俺らの世界は滅亡するってことか?」


「その通りです。後、貴方達の勝利条件はもう一つあります。

貴方達は攻撃側ですので、相手の世界に乗り込んでもらいます。

そしてその世界に住む一般人を貴方達33人で合計200万人殺害しても貴方達の勝利となります。」


「200万人!?」


こいつ俺にバトルロワイアルだけじゃなくジェノサイドもさせる気かよ・・・

普通に嫌すぎるに決まってるだろ。

そろそろドッキリカメラに出てきてほしいところなんだが・・・


「はい、ちなみに制限時間は合計180分です。この戦いは6日間に分けて1日30分行います。」


は?短くね?


「いや待てよ、無理ゲーだろ。

お前たまに人混みでナイフ振り回す通り魔とかが出てくるけど、

そいつら殺せて1人とか2人とかで大抵0人じゃねえか。

明確な殺意を持って首とか胸を刺しても人って意外と死なねえし、

多分5人目襲う辺りで周りの人間に取り押さえられるから人殺しって絶対難しいだろ。

車とか使えば変わってくるけど、それでも2桁乗るか乗らないかぐらいにしかならねえんじゃねえの?

それをたった3時間で200万人とかさあ・・・馬鹿言うんじゃねえって話だ。

それともあれか?武器でも貰えるのか?例えば銃かあるいは手榴弾とか?

いやそれでもまだキツイな・・・戦車とかか?でも扱い方が分かんねえだろうしなあ・・・」


「確かに貴方のおっしゃる通り、人間には到底不可能な行為です。

ですが心配ありません。貴方はもう既に有効な武器を手にしています。」


「は?」


何言ってだこいつ?今の俺は何も持ってねえんだけど?

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