第4話小さな魔王は寂しくて

ヤリチン勇者を倒した夜、俺は用意された自分の部屋で伸び伸びとしていた。

外を見れば丸々のお月様がにっこりとこちらを見て笑っている。

異世界来たからケータイとか漫画とかなくて暇つぶし出来なくて、返って寝れないんやろ?ぷーくすくす、と嘲笑っているかのようだ。

確かに暇だよ。寝るに寝れなくてゴロゴロしている状態だ。

既に晩御飯や風呂なんかも終えて、遂にやる事がない。

──コンコン。

自室のドアがノックされ、俺は気怠げに返事をすると魔王エリナが入ってきた。

んんん??え!マイクロビキニアーマーじゃ、ない・・・・・・だと?!


「お、おい。エリナちゃんよ。いつものエッチな格好は?」

「あれは公務で着る服よ。今はフリーだし、寝る前だからパジャマ。なんか変?」


いや変じゃない──寧ろ似合っているし、こっちの方がエロいまである。

なんでかって?スッケスケのネグリジェだからだよ!!!

お前狙ってんだろ?!TIKEBI見え見えなんだけど!あーダメだ勃〇不回避。避けれないわこんなん無理ゲー乙。

俺はすぐに視線を逸らし、別方向を見る。

でも結局磁石の如く、何かの引力のせいでチラチラ見てしまう。

お前さっき、俺達の事チラチラ見てたよな(?)


「はぁ〜もしかしてネグリジェが気になるの?本当に童貞っぽいわね」

「・・・・・・うっせ」

「まぁいいわ。私のお話相手になって」


あーそういえば、この魔王様ボッチだったわ。

確か幹部のユニさんは門番のトリダの事が好きで、最近話してないんだっけ?

偶に会話する程度だって晩御飯の時に聞いた。

ちなみに晩御飯は二人きりで過ごした。

ユニとトリダは疲れたから帰るって言って、その場を後にしたし。

絶対ヤッテルヨネ(大人の事情)。


「私って何歳に見える?」


何その質問、ちゃんと答えたらご褒美とかあるの?

まぁいいや、外見的には十四歳辺りに見えるのだけど。それが本当なのかは分からない。

だからこういうのは適当で良いんだよ。


「百四十歳ぐらいかな」

「うーん惜しいわね!もうちょい上よ」


は?いやいやいやいや、冗談を冗談で返してらっしゃる?

もしかして聞こえてなかったのか。

でもはっきり言ったに間違いないと思うのだが。


「・・・・・・エリナおばあちゃん」

「うっさいわね!誰がババアよ!」

「ババアなんて言ってねぇ。俺はおばあちゃんって言ったんだこのババア!」

「今ババアって言った!ババアって言った!」


何なんだよこのやり取りは。

ガキの喧嘩じゃあるまいし、あーめんどい。

つか色気ある大人のお姉さんが良いんですけど?お姉さんに押し倒されて「弱すぎ♡」って言われたいんですけど。


「はぁ。トーマって一体どんな子が好みなのか、分からないわ。ユニのおっぱいをチラチラ見てるし、私の身体をジロジロ見るし。ハッキリさせなさいよ」


いや究極的な問いかけやめてください。

男ってのは女性の色んな所に惹かれる生き物なんだよ。

まぁ人によって偏ったりもするが、俺は巨乳でも貧乳でも良い。

どっちかと言うと貧乳が好きな俺である。

大き過ぎても、俺自身「おぇ」と脳内キャパオーバーして吐き気するからな。

大き過ぎるってのは、ユニちゃん以上の胸の事だが。


「アンタの今の顔、いやらしい事考えてるわね」

「いやらしい事を考えさせる言い方をするからだ。実際の所、俺は大きな胸よりちっぱいの方が好きだ」

「どっちもじゃなくて?」

「確かにどっちも好きだけど、貧乳の方が良い」

「理由を言いなさいよ。根拠ないと信じられないわ」


ほう?この俺にそこまで言わせるのか・・・・・・。

良いだろう!なら教えてやるよ!!

俺が何故、貧乳が好きなのかをな!


「桜がぷくっと咲いたのを軽く摘んだ時さ、ピクンって身体が跳ねるんだよね」

「つまりは感度が良いって事よね?」


ストレートに言うんじゃねぇよ!結構に頑張って濁したんだぞ!

まぁ根拠は言えたかなと実感は持てるな。

いやよく考えると、こんな実感持ちたくない。


「トーマと話していると、退屈しなくて楽しいわ。召喚して良かった」

「お、おう。つーか本当に友達とかいなかったのか?」

「いるわけないでしょ?私は魔王で、私以外の魔族はみんな頭を垂れて、気を使って機嫌取りなんかして。そんなの友達って言えるかしら。私は気を使わなくていい、魔王として見ない存在が欲しかったの」


うん、エリナちゃん・・・・・・俺、友達になるわ。

エリナの場合はよくある話なんだが、大抵それは家族がフォローしてくれる。

友はいなくても家族がいるから寂しくないってのは、結構聞く話だ。

でも彼女に対して、家族は?とは聞きたくなかった。

勇者との戦いが終わった後、色々と城を見て回ったんだ。

中庭で休憩しようとしたら『 最愛の父と母』と彫られた墓石があった。

きっとエリナの両親は、既にこの世にいないんだろう。

ぽっかりと空いた穴は自分で誤魔化せても、限界が来るのは当たり前。

だから俺を召喚して、少しでも寂しさを埋めたかった。


「なぁ、エリナ」

「どうしたの?襲う気でも起きた?」

「襲わねぇよ!ったく・・・・・・夜、寂しくねぇか?」


エリナを見たが、返事は帰ってこなかった。

でも察する事は出来るし、ちょっとモジモジしてるし。


「今夜だけでも良いから、俺と寝ろ」

「・・・・・・いいの?」

「二度と言わねぇから」

「ありがと。でもまだ眠たくないわ」

「ならテキトーに話でも続けりゃいいだろ?時間が過ぎれば眠たくもなるって」


そう言うとエリナはクスッと笑った。

今考えれば、魔王に召喚されるって珍しいケースなのかと思ってしまった。

俺も勇者として召喚されたかったと最初は思ったが、今はそうは思わない。

だって勇者になったら、こんなにダラダラ過ごせないもん。


「そうね。じゃあ、トーマの性感帯ってどこ?」

「それを聞いてどうするつもりだ?!」

「将来の為に活用しようと」

「アホか!」


正直に答えるところだったわ!


その後、ダラダラと話していたら夜中を過ぎ、気づけばエリナはスヤスヤと満足気に寝顔を見せていた。

しかも俺の膝枕で・・・・・・俺の場合、筋肉ついてるから固いだろうよエリナちゃん。


「・・・・・・ママ・・・・・・パパ・・・・・・」


ん、やっぱりまだ寂しさは拭えないよなぁ。

こればっかりは時間が解決してくれる事を願うしかない。


「・・・・・・トーマの・・・・・・えっち・・・・・・」


お前夢で俺が出てくるのは良いんだけどさ・・・・・・どんな夢見とんねん!!

結局、俺は寝れなかった。俺もお人好しなんだろうな。

一度起こして横になってまた寝ればいいものを、そのままにしてあげるんだからさ。

はぁ・・・・・・眠てぇ。

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