二度追放されたダンジョン配信者、『修練と時の部屋』スキルでレベルを上げ、配信ざまぁでバズってしまう ~一瞬で急成長したように見えるけど別時空で1000年努力してます~
第34話 その頃一方ドラゴンが覚醒していた件 ②
第34話 その頃一方ドラゴンが覚醒していた件 ②
視聴者のどよめきを肌に感じる。
瞬く間に全身が【絶刀】の黒いオーラで包まれる。
これでいつでも一撃必殺の抜刀術をこの世に降臨させることができる。
「では2体目のゴーレムを斬ってきます。【転移】」
“ふぁ!?”
“何事!?”
オレは居合の構えの姿勢のまま、その場から姿を掻き消した。
次にオレが現れた場所は、ストーンゴーレムの後方上空。
「スキル解放。【絶刀・解】」
またもや軽々と、岩の胴体に一閃くれてやる。
「はい、真っ二つです」
一刀両断された岩の体が、ダンジョンの床に墜落し、石畳をバキバキに破壊していく。
オレは無表情のまま、抜いた刀を鞘に戻した。
“開いた口が塞がらないんだが”
“そういやスキル4つって言ってたな”
“こどおじ仙人:【転移】とは……。これまた伝説級のスキルを……”
“確か半径10メートルの瞬間移動が可能なんだっけ?”
“こどおじ仙人:いかにも”
“【絶刀】発動中に瞬間移動されたらたまったもんじゃねえな”
“待機して受けることもできるし、自ら移動することもできる。なんだこれ”
“完全に【絶刀】を次のステージに引き上げた……!”
〈【異貌の門人】があなたのコメント欄にご満悦です〉
「オレは学園を卒業したら、このスキルを引っ提げて〝神渡りの楽園〟――北千住ダンジョンを攻略しようと思う」
オレはダンジョンシーカーとして遥か高みに立っていることを実感した。
“うおおおおおお!”
“最難関ダンジョン!”
“前人未到のSランク”
“マジでクリアするかもな”
“応援してるぜ、ドラゴン”
“お前の時代が来てる”
見る見るうちに、登録者の数字が増えていく。
登録者のカウントが止まらない。
オレの時代の幕開けだった――。
*
「そっかぁ~。でもお兄ちゃんが決めたことなら、姫花応援するっ!」
その日の夕方、俺は姫花に引退の話を打ち明けた。
何万人もの視聴者さんに見届けられて、俺のダンジョン配信はここで幕を引く。
「ありがとう。俺も姫花を応援してるよ」
思い返してみると、長かったような、短かったような。
でも、いろいろな経験をさせてもらえた。
また何年か経って、もう一度配信してみる気になれるといいなぁ……。
そのときはアカウントをはじめから作り変えようと思う。
とにかく今は、疲れた。
*
その日の夜、Dチューブに異様なことが起こった。
これはまさしく異常事態だった。
チャンネル登録者0人の初投稿動画が、急上昇に載って、全世界に配信されたのだから。
『こんばんは、初めまして。もしかしたらこの動画を見ている人の中で、私のことを知っている人がいるかもしれませんね。私の名前は
淡々と告げられるこの動画は、見る者を不安にさせる雰囲気を孕んでいた。
『これは告発動画です』
そして、見る者を放さない魔力を有していた。
『かつて私がパーティーで虐げられ、理不尽に学園を退学させられた、すべての物語を暴露します。ドラゴン、きらぽよ、神田、ゴキブリ、カメムシ、そして皇学園の全教師・全生徒に聞いてほしい。私は2年前、学校の屋上から飛び降りました。そしてこの事実は、学園側にもみ消されました。なので誰も知らないことでしょう。私が飛び降りることになった経緯は――』
この動画は削除されました。
「は?」
突然、動画が見れなくなった。
ボクは慌ててリロードする。
この動画は削除されました。
アカウントをクリック。
このアカウントは削除されました。
「何が起こって……」
もちろん、この動画は切り抜かれまくった。
だがその切り抜き動画も根こそぎ削除され、アカウントも根こそぎバンされていった。
強制退会の理由は、『利用規約違反があったため』。
それ以外の理由は語られない。
どのSNSに上げても、そのSNSのアカウントがバンされた。
アクセス拒否を施しても、Dネットを経由してバンされた。
みんな恐ろしくて、この動画について触れないようになった。
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