二度追放されたダンジョン配信者、『修練と時の部屋』スキルでレベルを上げ、配信ざまぁでバズってしまう ~一瞬で急成長したように見えるけど別時空で1000年努力してます~
第33話 その頃一方ドラゴンが覚醒していた件 ①
第33話 その頃一方ドラゴンが覚醒していた件 ①
♠ ◆ ドラゴン視点 ♣ ♥
完全にオレの時代が来ていると確信していた。
神様のフォロワーが、『ゴキブリ、二度追放してみた』の配信をきっかけに、次々とオレのチャンネルに転がり込んできた。
結局神様は、極限状態の人間がどういう反応をするのか興味があるのだ。
――どん底に落ちて壊れていく人間を。
オレに支援をし続ければ、ゴキブリと同じように絶望していく人間を、今後も愉しむことができる。
人を壊すコンテンツは稀有だ。
世界中でオレしか配信していないかもしれない。だから神々が、このコンテンツの火種を弱めないために、こぞってオレにサポートしてくれる。
おかげで、ユニークスキルを新たに授けていただけた。
『ユニークスキル4つを組み合わせたら最強な件ww』
新しいライブ配信のタイトルはこれで決まりだ。
「どうも皆さん、ドラゴンです」
オレは妖精カメラに向かって笑顔を振りまく。
“おつ”
“こどおじ仙人:ユニークスキルの紹介配信助かる”
“4つもあるのかよw”
“ユニーク狩りに気をつけろよ。最近殺人事件増えてるぞ”
今のオレなら、ユニーク狩りが来ても返り討ちにできる。
それどころかオレがユニーク狩りを行って、神様たちを愉しませるのもありかもしれない。ユニーク狩りを好む神様は、強力なスキルをお持ちだともっぱらの噂だ。それに動画配信中における殺人は、神様がよしとすれば合法となる。オレにリスクは何もなく、一方でリターンはでかすぎる。
「今日は土属性のダンジョンに来ています」
オレは石造りの土臭いダンジョンに視線を巡らせた。
“西多摩ダンジョン?”
“西多摩、封鎖されてなかったっけ”
“されてる。現在立ち入り禁止だよ”
“Sランクモンスターが出た原因を究明中らしい”
「ここは西多摩じゃないですが、同じモンスターが出るんですよ」
あの日から大きく変わったものだ、とオレは思う。
登録者は50万人から220万人に増えたし、神様のフォロワーも1桁から2桁になった。
ゴキブリを食い潰すことで。
「【絶刀】を最大限に活かすスキルの組み合わせを考案したので、実際に披露してみようと思います。かるーくストーンゴーレムを斬ってみますね。その前に、チャンネル登録とイイネボタンよろしくお願いしまァす!」
“うるせえ、あくしろよ”
“四の五の言ってねェで斬れ”
“視聴者の民度ヤバすぎw”
“これが悪名高きドラゴンチャンネルだ”
“サポートなしで【絶刀】行けるのか?”
“身動き取れないままボコられるぞww”
「それを証明するためにソロで潜ってるんですよォ!」
この前はパーティー四人で探索したが散々だった。
でも今は違う。
オレは一人でも無双できる力を手に入れた。もう神田や綺羅子に見下されることもない。カメムシにぐちぐちと文句を言われることもない。今のオレは、さらに上の次元にいる。ゴキブリを追放して、この境地に立てた。
もうオレに、パーティーは必要ない。
「あ、噂をすればストーンゴーレムが来ましたね」
ずしん、ずしん、と足を踏み鳴らす音。
灰色の岩で構成されたモンスターが、オレの目の前でその足を止めた。
「ユニークスキル【絶刀・縮】」
オレは腰を落とし、居合抜きの構えを取る。
目だけで岩の巨体を見上げるが、オレに恐怖心など微塵も沸かなかった。
“ここから1分か。間に合うのか?”
“1分経つ前に死ぬ、に5000ペリカ”
“溜め時間ね。ちょっとトイレ行ってくるわ”
コメント欄が弛緩している間にオレはさらなるスキルを発動させる。
「ユニークスキル【ヘイスト】」
“!?”
“!?”
“!?”
オレの全身から【絶刀】の黒いオーラが放たれる。
「はァい。これで【絶刀】の1分が短縮されて、即座にスキル発動できます」
“Yabeeeee!!”
“【絶刀】の欠点が消されたww”
“いや待て、まだ欠点あるぞ。身動きが取れない”
“ゴーレムさん近づいて来てますねー”
“ちょww後ろから2体目現れた件ww”
〈【冒涜なる愁雨】があなたのコメント欄を見て微笑んでいます〉
神様はご満悦のようだ。
「では、ストーンゴーレムのパンチを受けてみようと思います」
オレの発言に、コメント欄が一瞬固まった。
“は?”
“何言ってるのこいつ”
“死ぬ気か?”
“ちょ、マジでヤバイって。逃げろドラゴン”
“振りかぶってる! ゴーレムさん振りかぶってるって!”
ストーンゴーレムが巨石と見紛うほどの拳を振り上げ――
そして、オレを目掛けて叩きつけてきた。
「ユニークスキル【
ガキィン――!!
“なに!?”
“ふぁ!?”
“受け止めた!?”
踏み留まるオレの足の下で、床に亀裂が入り隆起するが、
オレは、潰れない。
「【鉄固】は自身の体を鉄のように固くします。ストーンゴーレムの拳くらいならノーダメージで受けきれます」
ユニークスキルは発動するのにKPを支払うがそんなの安いものだ。
オレには支援してくれる神様が大勢いる。
“すごすぎワロタ”
“こどおじ仙人:【鉄固】は〝アンヴィル兵団〟の宮本が持ってたユニークスキル”
“【鉄固】の神様がドラゴンに鞍替えしたのか”
“鞍替えっていうか、宮本さん亡くなっちゃたから、推し変的な?”
“宮本さん……”
“嫌な事件だったね”
誰だか知らねェが、死んでくれてありがとう宮本。
「敵の攻撃を受けきったところでスキル解放。【絶刀・解】」
オレは軽々とストーンゴーレムの胴体を一閃する。
「はい、真っ二つです」
轟音と共に、ストーンゴーレムの巨体が崩壊していく。
“すげえ。【絶刀】の弱点を二つとも消してる”
“この組み合わせはチート過ぎる”
“ゴキブリがいないと何もできないって言ってすみませんでしたぁ!”
“ソロでも最強な件”
「【絶刀・縮】【ヘイスト】」
オレはさらにスキルを続けた。
二連続発動だ。
“お?”
“ん?”
“また?”
“何する気だ?”
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます