第38話 ︎︎【フェニックス】アンチ大歓喜!フェニックスがモンスター、探索者に攻撃されるシーンまとめ①【切り抜き】
「『完全体』である事も勿論脅威だが、重要なのはそこではなく……【不死鳥】自体の能力、その圧倒的な強さの由来だ」
敵意の籠った瞳を閉じ、数秒の沈黙の後にバエルは魔人達に言った。
「モンスターとは、『イメージ』によって成り立つ存在……」
何やらこれみよがしに語り始めたので、俺は今のうちにあの子の安全確保だけしてしまおう。
「よいしょ」
精神性は異常と言えど、この場にいる唯一の人間であるシツキちゃんの身体を端の方へと運び、再び魔人達の方を向く。
「モンスターとは、『イメージ』によって成りt」
「聞こえなかったわけじゃねぇよ、俺は知ってる話だし。さっさと話せって。っつーかそんな基本的な事話してなかったのかよ……」
確かに気になる語り口ではあるかもしれないし、一般人や探索者達ですら知らない話だが、俺にとっては常識だもん。
「どういう事です?『イメージ』とは……」
「『認知』とも言える。モンスターを構成するのは────『人間が抱くモンスターへのイメージ』なのだ」
「「「…………?」」」
────ボス部屋に、沈黙が流れる。
「え、あの……王よ……」
「ちょーッと突拍子が無さすぎるんじゃねぇの?」
「意味分かんねぇですわ」
「嘘吐くにしても変過ぎる嘘だし、本当の事言ってんだろうけどさ~……」
苦笑い、困惑の声。
それも当然の事だ……急にイメージやら認知がどうのこうのって言われても、ねぇ。
「……まぁ良い。重要なのは『最強』とも言えるユニークモンスターが魔人となり、さらには『完全体』に到達しているという点だ」
「さ、最強!?……王よ、それは────────」
「『最強』、だ。かつてダンジョンを支配していた七体のモンスターですら、【不死鳥】には勝てなかった」
「で、では……」
「勿論この私よりも強い」
「……そ、んな……事がっ────」
一番大きなショックを受けているのは、ヒュドラちゃんに見えた。
親がサンタのフリをしていた事を知った時のような、薄々気づいてはいたけど受け入れたくない……しかし、自分の理性は既に受け入れてしまっている。そんな感じの顔だ。
気持ちは分かるよ。小さい頃は『プレゼント持ってきてるのはどうせパパとママなんだろ!!』って言い続けてたら、否定してほしかったのに『そうだよ、パパとママがキョウマのサンタさんだよ』と返された時の虚しさと申し訳なさと言ったら。
「だが────今は違うかもしれない」
「ほー?」
「私も貴様も人間と融合した……
「勝算はあるってか、随分と弱気フェニね」
「あぁ……この戦いは私にとって最大の挑戦となるだろう」
「ハッ、戦う前から気で負けてんじゃねぇの?」
と、言いつつ────俺の背筋には冷や汗が伝っていた。
……このバエルとかいう男、何を考えているか全く読めない。
コイツの『勝算』とやらを早めに突き止めなければ───。
「さて、足りねー鳥頭を働かせて考えてみよーか」
……一連のコイツらの発言から、推測出来る情報を洗い出す。バエルはともかく、魔人達の反応からボロが出るかもしれない。
「まず、『完全体』つったよな。魔人とやらについて詳しくはねーけど、恐らくそっちの『完全体』はバエル、お前だけだろ」
「あぁ」
「つまり予想通り、他の魔人達の戦力はカス同然って事だ。ヒュドラ、メドゥーサがワンチャンあるくらい。なのにここに連れてきたって事は────何らかの利用価値がある」
「あぁ」
「知識を与える悪魔、バエル。魔人を連れてきた理由として、味方をバフする力があるんじゃないか?そして不死である俺相手に戦いを挑んだ事から、何らかの手段で俺の『封印』が出来るんじゃないか?」
「あぁ」
「……」
やはり、馬鹿が頭良さそうな奴に心理戦を持ち込むんじゃなかった。
顔色一つ変えずに肯定ばっかされると、より一層何がマジで何が嘘なのか分かんなくなる……。
「……そ、そして!そこのラタトスクちゃんとやら」
「……あ、あたし?なっ、なんだよっ、やるってのかぁ〜……!?」
ビビりすぎて変なテンションになりながら構える、リスのようなシッポが目立つ緑髪の女の子。
「さっき言ったよね、『グレモリー』って。君の後ろに座り込んでる子がグレモリーなのかな?」
「え、ちげ〜けど」
「は、違うの?嘘、確信して自信満々に喋ってたから流石に恥ずい……」
「その子、嘘吐きだから、気にしないで」
「嘘ォ!?この状況でよくナチュラルに嘘吐けるな君……」
「……チッ」
すっかり俺にビビり散らかしてるもんだと思いこんでたけど、自惚れだったか。嘘を吐いているとは疑いもしなかったくらいに平然としていて、完璧なまでの演技だった。
「すっかり『トリ』のお仲間だな〜、貧乳スネーク……この恥知らずが」
「おいラタトスク!そんな言い方……!」
「まーまー、どうでも良いフェニよ。君達の事情は────ってちょっと待っ、ぶふっww今なん……ひはっ、今貧乳スネークっつった!?w」
どうやらツボに入ったのは俺だけのようで、他のみんなは平然と受け流していた。なんで?真面目な話してる途中に突然貧乳スネークとか急に言われたら流石に笑うしかない気がするんだけど。
「それは、ラタトスクがいつも、勝手に呼んでる、ただの私のあだ名。……早く、話を、進めて」
「んふっw、ふぅ。はいはい。んで、グレモリーについてだけど。そいつは俺やバエルと同じソロモン72柱の─────」
「彼の治療を、頼まれてくれるか」
「……あ?」
「治療だ。見ての通りグレモリーは負傷していてな」
血を流してる奴が一人いるとは思ってた。
近くにいる子……ラタトスクが軽い回復魔法を使っていたようだが、それでも応急処置にしかならないくらいに深そうな傷だ。
「……おい、いい加減にしろよ。魔法が得意なアンタが治してやれば良いだろ?なんだってそんな、『トリ』に頼んだりなんて……」
「そうだそうだ。訳分からん事言うな」
「────────治すだろう?」
「……」
見通されている。
俺とマミレちゃんの関係を見抜かれている。
家族を死なせたくないというマミレちゃんの願いを、俺は叶えなくてはならない……だからこそバエルは強い確信を持って言えるんだ。
「き、きょ……ふぇ、フェニックス……」
「分かってる。言われなくても」
「……ごめん」
バエルの思い通りに進んでいるというのは、マミレちゃんにも伝わったのだろう。
沈む彼女の声を背中で聞きながら、グレモリーと呼ばれた子の前に立つ。
「……マジで治す気か、アンタ。何考えてるわけ?」
「良いから良いから。黙って見てろフェニ」
「変な事したらただじゃおかね〜からな」
一歩引いてグレモリーから離れるラタトスク。しかしその厳しい目線は俺を捉えたまま。
……フェンリルがあっさりマミレちゃんを見捨てたから、魔人同士に絆なんか無いものだと思っていた。
この様子を見るに、ただただあの犬っころがカスなだけな気がしてきた。
「傷、見して」
「……お願いします」
アイテムボックスから短剣を取り出し、手首を切り裂いて血液を溢れさせる。
グレモリーの抉れた肩にそれを垂らすと、気持ち悪いくらいの速度で再生が始まる。
「ありがとうございます。正直、結構痛かったので……助かります」
「そりゃどーも」
バエルは殺す。
だから、マミレちゃんの精神状況を考慮すると他の魔人は一体も死なせられない。
────いや、もちろんそれ抜きでも誰も死なせたくはないけど……。
「まさか、本当に治すとは」
「うるさいフェニね……黙って感謝しろや、保護者なら」
「もちろん感謝している。だが……ククク、そうか。その様子では元の【不死鳥】の記憶や意思は貴様の中に無いようだ」
バエルは、喜んでいるのか悲しんでいるのか分からない表情だった。
「────ふむ。そろそろ探り合いは終わりとするか」
「あらそう?俺としてはもうちょっとお喋りしてても良かったけど」
……一歩、そして一歩。
バエルが進む度に……場の空気が冷たくなるのが感じられる。
「最後に一つ、確認させてもらっても?」
「何だ」
「『侵略』をやめるつもりは」
「無い」
「おっけ、じゃあ─────」
動機なんてどうでもいい。どんな理由があろうと地上を脅かそうとするのなら。
殺すしかないんだ。
「「────」」
視線がぶつかり合う。
互いを標的と認識した、獣の眼光。
身体が震え上がる。鳥肌が立つ。
殺意を受け、殺意が高まる。
(……やるか)
……かつてないほど近くに感じる、戦いの予感。
戦いが始まると────本能的に察知した。
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