オカ研日記おまけ❷

オカ研の日記おまけ❷



「おはようございます先輩!」

「やぁ後輩ちゃん、じゃあ行こうか」

私は先輩に車へと案内され後方の座席に腰を下ろす


「それじゃ!恐怖の心霊トンネル遠征へ出発!」

先輩はそう言うとエンジンを起動させ車を走らせる


「いやぁそれにしても先輩が車を買ってるなんて驚きです!」

私は尊敬する先輩が車という誰しもが必ず憧れるでしてあろう物を買い

私達を乗せてくれているのだ

この上ない幸せである


「まぁどこに行くにも車は必須だからねぇ……まぁ今回みたいな少し遠い遠征とかには便利でしょ?電車を使うよりも安く済むしね」

「流石です」

「確かにそれなら電車代で使っていた部費も安くなりますし他の事にも使えますし便利かも知れませんね」

「そうであろうそうであろう、自慢の車だ」

「何円で買ったんですか?」

「ん?まぁちょっと贅沢して900万くらいかな」

「良いですね、ちょっとした贅沢に適した値段ではありますし」

「確かに少し洗練された内装だし座り心地が良いと思いました〜」

「うちの車に後輩ちゃんたちを乗せられて幸せだよ」


先輩はニコッと笑いエンジンを吹かし車を進めるのである


車は待ち合わせ場所であった駅前から遠く離れて高速道路にも乗りいつしか山道を走っていた


「これ本当に大丈夫なんですよね」

同級生の心配した発言に先輩は元気よく答える

「大丈夫大丈夫ウチに任せたら全て大丈夫やて」

「信じますよ……」

「それにしても楽しみですねぇ、廃トンネルなんて来る機会ありませんし……」

「そだね、ウチも久々かな」

「先輩行ったことあるんですか?!」

「あぁ……中学時代に肝試しでね、とても楽しかったよ」

「怖いよりも楽しいですか……」

「結構見慣れない物とかあって楽しいんだぞ?まぁ後輩ちゃん達も今日それを体験すると思うから楽しみに待っていると良い、」

「はい!」


私達は車の中で期待と不安が入り混じった雑談をして目的地への到着を待つ


窓を見ているとさっきまで見えていた家々も無くなり木々が生い茂る神秘的な場所へと入る

光は車のライトと月の光のみ

黒い森が所々灰色の光達に照らされている


「はぁ……」

私は息を整え目的地到着に備える


「もうすぐ着くからカメラの準備お願い」

「はーい」

先輩からの合図で私はカバンに入れていたカメラを取り出し起動する


車は減速を始め

遂に停車する

「ここが例の場所ですか、雰囲気ありますね」

「そうだろうそうだろう後輩ちゃん達に喜んでもらおうと思ってね」

「私も準備できました!」

「それじゃ行こっか!」

私達は車を降り前へと進む


「この先崩落の危険により立ち入りを禁ずる……先輩これ本当に大丈夫ですか?」

「大丈夫大丈夫!あっそれと足元には気を付けてね、足場悪いから」

「了解です」

「はーい〜」

私達は先輩の背中に隠れて奥へ進む


すると

「キャッ!」

私は足元の苔に滑り前に倒れてしまう

しかし 

「大丈夫か?」

私は先輩に受け止められ

地面に激突する事は避ける事が出来た

「いい匂い……」

私は先輩の胸に受け止められる

先輩からは優しく甘い匂いが溶け出している

「大丈夫か?」

先輩は私の肩を持ってくれ立て直す

「あ、大丈夫です」

「それは良かった、さっ行こうか」

私達はトンネルへと入っていく


トンネルの中は外のかろうじてあった月の光やライトが消えて行き

生暖かい空気が流れ出す


「こ、これ……」

雨水なのか床には濁った温かい水が張り巡らされており

私の足に絡みつく

「大丈夫、ウチに付いてくれば多分大丈夫」

「た、多分……」

「先輩が居るんだ、心配する事なんて何もないよ」


私は先輩を信じ歩いていた

9分位歩いただろうか

私達は3人

入って1分程した頃から4人目がいる様に感じる

「何も出ませんね」

「今回は外れかな〜残念だ」

「え……」

私は声を出して驚いてしまった

「ん?どうしたんだ?後輩ちゃん」

「い、いえ……」

これを感じているのは私だけなのか

先輩も同級生も気付いていないのかトンネルを歩き続ける


「おっそろそろ出口かな」

「そうですね、結構長かったですね、タイマーは2分ですね」

「え?2分?10分くらいは居るんじゃ……」

「いやいや、タイマーではちゃんと2分ですよ、怖がらせないでくださいよ」

「後輩ちゃんも好きだね〜」

「……」

結局私達はトンネルを抜け記念写真を撮り戻る事にした


再度トンネルに足を踏み入れると

耳にお経のような声が入ってくる

その声はトンネルを進めると共に強くなっていき

2分後、出口前になると頬に吐息が掛かるほど近くなる


私は先輩の腕にしがみつき息を止め

しっかりと前を見て進む


トンネルを出ると先程まで聞こえていた声は消え体が少し軽くなる


「はぁ……」

「大丈夫?さっきから様子が変だったけど」

「はい〜大丈夫です〜」

「それなら良いんだけど、じゃあ車に行こうか」

私は同級生と先輩によって車に乗せられる


「うぅ……」

車に乗ってから体に倦怠感が出始める


「だ、大丈夫?」

先輩が私の手を握り問いかける

「大丈夫ですよ……風邪かもしれません」

「それなら良いけど……病院に行こうか」

「だ、大丈夫ですよ〜」

「そんな事言っても駄目だよ、ちゃんとしないと行けないんだから、それに学校からも言われてるからね」

「はい〜」


先輩は車のエンジンを吹かし病院へと向かっていくのだった

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