山の神
これは私が10歳前半のとき
夏の帰省で親の実家に帰った時起こった事です
帰省先には小さな小中併合の学校があり
近所の友達とはよく朝から日が暮れるまで遊んでいました
あの日は日が照り肌が焼けると感じたほど暑い日でした
いつも遊ぶ友達の一人が私の父方の祖母が先祖から受け継いだ山へと入ろうと言い出したのです
特に良くあるような忠告はされませんでしたが山で遊ぶならば山の物を持ち帰るなと言われました。
これはその地に代々伝わる伝承があり
その名残なのです
その伝承とは山の神が題材だったと思います、
内容は当時山周辺に住んでいたとある女性が亭主に暴力を振るわれ山に逃げ山の神に助けて貰ったという話です
当時の女性は男性よりも圧倒的に立場が低かったですからね……
話を戻します
私と言い出しっぺの友人a、友人b、友人cへ地域の大人に報告してから向かう事になりました、
大人達は活発だねとおにぎりやその他のおやつ等も貰い受け
祖母から山の全体図が書かれた地図と山の神へお供えするお酒を貰い出発しましたりかね。
山への入り口は整備されておらず地図だよりでしたが何とか探し出し中に入りました
中では鳥や猿の鳴き声が鳴り響き青く水々しい葉を揺らす木がそこらに生えており
山の済んだ空気に魅了された私達は足を早めて奥へと進みました。
道は一本道であり数カ所のポイントを周り最終的には入り口へと戻ってくる様地図には記されています
そんな感じで山の空気と景色に見とれて歩いていくと円形に拓けた場所に出ました
中心には木が植えられて居ましたが夏だと言うのに葉は無くまるで冬の木の様な感じで佇んでいるのです
その木の根本には小さな石造りの祠があり地図には山の神の祠と書かれている
私はお供え物をして手を合わせた
友達も私と同じ様に手を合わせて次のポイントへ向かう
次の場所は祠から見て真後ろに道がありちょっとした下り坂になっている
今考えてみれば小さい坂でしたが当時の身長と初めて来た場所と言う好奇心によってとても巨大な坂であるように感じました
私達はその坂に何処か小さな違和感と恐怖を感じましたが興奮と好奇心が勝ち下りました
下ってる最中は正に体が空を舞っているような感覚に見舞われ非常に楽しい物として覚えています
その後は次のポイントでお昼ご飯を食べ
また別のポイントでは川遊びや釣りを行い大物を釣り上げたりカニを焼いて食べ盛り上がり存分にその日を満喫しました
日も傾きもうすぐ夜になると言う時間となり私達は荷物を纏めて歩き出し地図の通り道を辿りました
空は赤色から青黒い色へと変色を始め私達は慌てて走り
山を出て家へと駆け上がる事になりました
親は必死になって帰ってきた私達を見て若いなぁと笑い泥だらけになった身体を洗うため銭湯に行く事になりました
事件はその時起きたのです
私達は父達に見守られながら銭湯でもはしゃぎ水風呂に飛び込み寒さに震えたり
ジェット風呂に入り強い流れに吹き飛ばされる快感を体験するなどここでも楽しんでいました
しかしそうやって遊んでいると山に入った友人aが溺れたのです
苦しそうにもがく友人aを見た私達はふざけているのかと笑っていましたが大人達が焦った様に私達を退けてaを引っ張る様子に流石にやばい、怒られると思い三人で固まって居ました
その時叔母が男風呂に入ってきてaを救出
私達も連れられ出る事に
大人達が慌てた様に動き
外ではカラスや他の動物の入り混じった様な声が響いていたのが印象的でした
そうやって怯えながら待っていると祖母に呼ばれて案内されたのは戦闘の休憩室
既にaが正座しておりテーブルには石のような物がありました
友人cがそれが何かと聞くと叔母は山の神の財産だと言い
私達に事情を説明しました
それは伝承の続きだったのです
女性を助けた所迄は同じでしたが
その方法は山にあった金やその他の価値ある物を渡し逃がすと言う物です
そして山の神はその女性にこう約束させました
余った金で必ずこの山を買い管理する事、
そして山のモノを持ち出してはならないと言う事
理由は詳しくは語られていませんが
その後逃げた女性の亭主が山に乗り込み残っていた金品を奪い下山した所
村に災害が起こり壊滅したと言う物
それ以降この伝承が伝えられ現在まで残っていると
そして叔母は私達にこの石を山へ返してくるよう言いました
叔母曰く返せば収まると
私達はその恐ろしい伝承に恐怖しながらも使命感を覚え
4人で山へと戻りました
山の外は雲一つ無かったのに
山の中は雨が降り注ぎ緑の葉を散らしている
それが山の神の機嫌を表してるのか
そうではないのか私には分からない
4人で固まりながら歩いていると拓けた山の神の祠がある筈の場所へと到着
私達は祠に持ってきた石を置いて祈りました
どうか許してください
許してください
と
祈っている最中私の後ろに奇妙で悍ましい気配を放つ何かが居ました
到底神とは思えない程の狂気に包まれたそれは祈りの時間が長引くにつれて気配が薄まり
完全に消えようとしたその瞬間私は意識を失いました
翌日大人達から聞いた話ではいつまで経っても帰ってこなかった私達を捜索するため山に入ると祠の前で気を失っていたそうです
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