第35話



「私たち民衆のこと守ってくれますか~~~!?」


「ゆりこ~(民衆ファーストで頑張ります)」



 さてなんだか大胆デビューを飾っちまったなぁ。

 大通りの観衆たちが滅茶苦茶ワーワーだってばよ。



 しかし、



「こうほうかくにん(後ろちら)」


『ギシャァ~~~!』



 背後に続く低級妖魔軍団をちらりと見る。


 深谷にコキ使われてた連中だ。

 あの戦いの後、最上級妖魔『白面狐ハクメンギツネ』に続いてあいつらとも主従契約を結んだんだよな。

 一応『百鬼呪法』で“人への攻撃禁止”という縛りを加えたわけだが、



『ギーギー!』

『ギャーギャー!』

『ウーウーーー!』



 なんか楽しそうにしてるなオイ。

 妖魔ってのは、人に恐れられ呪われることを快楽にするんじゃないのか?


 白と違って話し合いできるほど理性ないっぽいし、不満に感じてると思ったんだが。



「ウタ様ーーーー!? もうハイハイできますか~~~!?」


「ぷりうす~~~~~(ハイハイは無理ですが爆走はできます)」


「好きな色は何ですか~!?」


「わたみ(黒)」



 と観衆の声に答えつつ、妖魔たちを見ていた時だ。


 和服ロリ狐になったハクが側に来て、『安心せい』と笑いかけた。



『くくくっ。わらわを含め妖魔連中はすこぶる喜んでおるよ。なにせ主従関係を結んだぬしさまを介し、極上の“おそれ”が大量に入ってきとるからのぉ』



 なんだと?



『おそらく、どこかの呪術師連中がぬしさまを恐れ呪っているのじゃろう。ヤツらは呪力が高いゆえ、ナニカを呪う情念も一般人どもより濃くてのぉ。美味美味ウマウマじゃわ~!』



 ふむふむなるほど。

 誰か知らんけど、どっかに俺のことを悪く思ってるやつらがいるってことか。


 おいおい俺ってば赤ちゃんなんだが?

 可愛がるべきなんだが?



「あいふる(呪うんじゃなく愛してくれると嬉しいんだが~)」


「むっっ!? ハクちゃん何よその話ママゆるちぇまちぇーーーん!」



 ミズホがなんか叫び出した。



「ママレーダー探知! むむッ、南方よりウタちゃんに、テレビ越しに悪い視線を向ける連中がいるのを検知したわッ! マザコーン、ディフェンスモード起動ッ!」



 ミズホの胸がさらに膨らむや、そこに俺を埋まるくらい抱き締めた。

 これがディフェンスモードなのか。


 そんなミズホの言動に白がドン引く。



『よ、妖魔でもないのに身体が変化した!? なんじゃそら!?』


「女性ホルモンを大量放出することで乳腺を急膨張させたの」


『きっしょッ! しかも畏れを放つ者がいる方角がなんでわかるんじゃ! それは流石に探知系妖魔とかにしか無理なんだが!? おぬし人間じゃない!』


「きーーッ人間以前にママだから可能なのーッ! さぁウタちゃん、帰ったらお風呂で身体に絡みついた視線をキレイキレイしまちょうね!? また全身ペロペロでくまなく綺麗にしまちゅからねぇ~!?」


『捕まれおぬしは!』



 と騒ぐ二人と、「テレビに恥を晒す前に対応が間に合った……」とミズホの胸からいつの間にかピンマイクを奪っていた和服メイドのクレハさん。


 さらに背後では火を噴いたり水出したりしてギャーギャー上機嫌に観客を喜ばせている妖魔どもと、非常に騒がしいパレードになった。


 俺の周囲、すっかり賑やかになっちまったなー。


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※妖魔軍団はミズホのことを最上級妖魔だと思ってます。


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