第33話
土御門の爺さんはなぜか「クレハ元気か?」とウチのメイドを気にした後、こんな話をしてきた。
「あぁそうそう。試験終わりにイラガ……ぶふっ、『イラガちゃん』と話してのぉ!」
って笑ってやるなよ!
自業自得だけどタマがないなってるねんぞ!?
「たまねぇ(それでイラガはなんて?)」
「うむ。奥方にリードで引っ張られながら、ウタくんに対する四条家の全権委任を渋々願い出てきての。了承しておいたぞい」
あぁなるほどな。
そういえば絶対女帝ユキネママ様(※暴力夫のイラガをマジで全身美少女整形させたS級危険人妻)が言ってくれてたもんな。
俺に全部の土地とかあげますーて。
その処理をするために呪術師の資格取ったんだったわ。
「クククッ。登録試験を終えたその日に名家の一つを吸収とは恐れ入る。他の呪術家は、間違いなく貴様を危険視するじゃろうて。特に元祖『退魔七家』などはのぉ」
「んほぉ~~いぐぅ~~~?(退魔なんだって?)」
あ~……そういえば葬式の日とかに聞いたな。
名家中の名家『退魔七家』ってのがあるとか。
なんかウチもそうだったけど、上納金払えなくなったとかでやめさせられたんだっけ。
「成り上がりの
てそりゃ困るなー。俺は平和主義者なんだが。
「さて話は終わりじゃ。そろそろ戻らねば仕事を丸投げしてやったセイメイが泣くからの」
ってセイメイってメガネさんのことだよな!?
あの人のことまーた困らしてるのかよ!
「ではなーウタくんよ。襲い掛かってくるなら『特等』だろうが殺していいぞー? タマ潰して全員美少女にしてしまえ!」
「かるろすごーん!(んなアホなことするか! 帰れ!)」
俺の退去命令に笑いながら去っていくパワハラ爺さん。
こうして特等術師とやらになった俺に、領地管理生活が始まるのだった。
「――ん~不覚にも昼寝してしまうとは恥ずかしい」
あ、和服メイドのクレハさんが起きてきた。
「あぁウタ様、ミズホ奥様はどこです? 変なことしてませんか?」
あぁうん。
包丁持ってはだしで駆けてったよ。
◆ ◇ ◆
爺さん襲来から数日後。
俺は四条イラガの管理していた街の大通りをしばし借り、お披露目パレードみたいな真似をすることになった。
土地を守る呪術師が変わった時にやる恒例行事らしい。
民衆に顔を覚えてもらうためにも必要なんだと。
で、今は大通り前の店舗の空き部屋を借りて準備中だ。
「でゅへへ~この格好はどうかしらクレハ~? もうウタは何着ても似合うから迷っちゃうわぁ」
さっきからミズホの持ち込んだ衣装をとっかえひっかえさせられている。
「早くしてください……と言いたくなりますが、まぁ史上最年少で『特等術師』となった人の門出ですからね。例の動画のおかげで、民衆も多く詰めかけていますし」
そう。さっきから外の大通りはザワザワしまくっていた。
赤ちゃんの凱旋なんて誰も見にこないだろーと思ってたが、なんか話題になっているらしい。
「あぁそうだ。この蝶の意匠をあしらった肩だし黒緑ワンピースドレス風の格好なんてどうかしら? 未来の『呪いの王』にふさわしいわ! 髪型もそれにあわせてっと」
「いやそれ可愛いですけど女の子風すぎません? 呪いの女王になっちゃいますよ?」
クールなクレハさんも女子なのか、服のセンスについてさっきからミズホに口出している。
「りかちゃん(着せ替え人形扱いはそろそろ勘弁だぜ……)」
赤ん坊の服装なんて何でもいいと思うけどなー?
「もうクレハのわからず屋っ! この衣装が一番ウタに似合うの!」
「まぁたしかにウタ様は赤目で可愛らしい女顔をしてますけど、でも可愛いだけじゃ舐められますよ。ここはうーん、ちっちゃいドクロの飾りでも胸元につけます?
「わぁ呪いっぽい! あぁそうだ、ママとおそろいで買った指輪もここで嵌めさせましょ。ふふ、
どうやら格好が決まってきたらしい。
どんなふうになるか知らんがよかったよかった、とそう思っていた時だ。
実家に待機させていた狐ロリ最上級妖魔『
「こんるしー(よぉ白、どうした?)」
今日はお留守番の予定だったはずだ。
人間どもにじろじろ見られるのは嫌じゃ、とのことでな。
『ふん。別に
って人間界生活満喫してるなぁおい。
『ただのぉ』
そう言って、白が困った顔で溜息を吐くと、
『
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