第31話
「うおおおおおお~~~~ッ! どーですか皆様ッ!? またいい映像が撮れちゃいましたよぉ~!」
術師登録試験の場『呪術総會』大屋敷にて。
茂みからこっそりとスマホを覗かせ、赤ん坊を撮影するゲロヤバ女(※無自覚)がいた。
彼女の名は読売アヤ。
家事手伝い無職のネット配信者である。
「へっへっへ……! いやぁ。まさかまたウタくんのバトルが撮れるなんて……!」
以前のトンデモ赤ちゃん撮影(※無断)で
結果、
そして躊躇なく『呪術総會』本部に侵入。
無駄に隠密の才能を発揮させ、ウタへとカメラを向けることに成功したのだった。
「ふぇっふぇっふぇ。いやぁ、ウタくんの試験映像さえ撮れれば大満足だったんですけどねぇ。また戦いが見れるなんて」
相変わらず凄まじいバトルだった。
敵の青年が低級妖魔を何十体も飛ばしてくるのには驚いたが、よもや例の赤子はそれをあざ笑うように、素人目にもわかる『最上級妖魔』を召喚してくるとは。
おかげでコメント欄も大賑わいだ。
『えぇぇぇぇええ、最上級妖魔って従えられるものなの!?』
『↑普通は無理。極悪な妖術師が生け贄用意したりで、協力して“いただく”ケースならある』
『おいおいおいおいおい尾が複数のシロ狐妖魔ってやばいだろ!?』
『間違いなく九尾伝説をモチーフに誕生した寓話型妖魔じゃん!』
『↑九尾本人ってことはないだろうけど、伝承への畏怖から生まれたパチモンの時点でやばいよなぁ……』
『数十年に一度、やべー規模の人災もたらす類じゃん』
『鬼に金棒、ゲロヤバ赤ちゃんに最上級妖魔かよ!』
いやはや今回の配信も成功だ。
驚いたリスナーたちにより動画は瞬く間に拡散。
それにより生まれた『接続数:5万』という数字に、アヤはニッコニコ笑顔になるのだった。
「でゅへへへ! これは働かずに動画配信だけで食べていく道も開けてきましたねぇ! もうご飯のたびに『お腹は空くんだねぇ』って言ってくる母にビクつく日々とはさよならですよ!」
と気持ち悪く笑うアヤ。
「さて続きを撮影しましょう。って、うぉおおっ!?
地 獄 の 所 業 で あ る 。
「いやぁ~いいことしましたねー。天国行き不可避ですわ」
などと、深谷青年とその師匠の事情など知らず、とんでもない鬼畜ムーブをかましている時だった。
ふとどこかから焦げ臭い匂いがするのに気付いた。
「ん? これは……って、あぁッ!?」
気付けば茂み前の芝生が燃えていた。
おそらくはロリ狐の呪法が飛び火したのだろう。
火は瞬く間に燃え広がり、アヤの潜む茂みにも向かってきた。
「うぎゃーッ、死んじゃうので逃げます逃げます!」
茂みから立ち上がるアヤ。
するとそこで、前方より高速で駆けてきたメガネの青年と目が合った。
「むッ、誰ですかアナタは!?」
「あ、あんたこそ誰よっ!?」
「私は監督代行の土御門セイメイという者で……って、アナタ明らかに部外者ですよね!? 芋ジャージなんて着てますし!」
「い、芋ジャージで悪いかっ!? 高級な屋敷にいる人間はみんな良い服着てなきゃダメなのか!? じゃなきゃ怪しいのか!? この差別男性が!」
「って主語デカくして話そらそうとしないでください! 絶対にアナタ不審者ですし……むっ!?」
握り締めたアヤのスマホ画面が青年に見られる。
ああ、そこには『配信中』という文字が映りこんでいて……!
「ぁッ、ああああああああーーーーーーーーーッッッ!? ただでさえ始末書まみれな一日だったのに、最後に情報漏洩問題がーーーーーーッ!? どうじでごんなごどにぃいい~~~~!!!」
「うわいきなり喚きだした。大人として恥ずかしいわよ?」
妖怪『赤ちゃん追いかけ不法侵入女』が言うな。
「今日はゆっくりと過ごす予定だったのにっ、もう嫌だあああああーーーーッ!!!」
「なっ、なんか知らないけど今のうちに逃げるわ! それじゃぁリスナーの皆様、また会いましょう~!」
「あぁ待て不審者!? って、追う前に火を消さなきゃだし……っ、チクショォーーーーーーッ!」
逃げるアヤと叫ぶメガネ。
家事手伝いゲロヤバ女配信者と苦労性メガネ青年の因縁は、赤ちゃんをきっかけにこの日より幕を開けるのだった……!
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・ふかやくん、 生 き 恥 全 国 配 信 決 定 【終焉】
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