第20話はじめての神社参拝!(ぱんぱん!)



 五本の尾が生えた女型妖魔。

 そいつによって、村の人たちは血や皮膚を献上させられているそうだ。



「何か月も前から四条家には連絡しとりますが、一向に術師をよこしてくれませぬ……! おまけに村から逃げようとしたものは、指を一本食われる始末」


「村長、もしやその指も?」


「うっ……はい。恥ずかしながら、自分も村を捨てようとしてこの始末ですわ……」



 顔を下げてしまう村長さん。


 いや逃げ出したくなる気持ちはわかるわ。

 悪いのは対処しない四条家だろ。



「大文字家の方々とおっしゃいましたね。どうかお願いします、この村を救ってくだされ……!」



 そう言って、村長さんはミズホと和服メイドのクレハさんに頭を下げるのだった。


 あ、違う違う。



「村長。妖魔と戦うのはこちらの方です」


「はい?」



 クレハさんが俺へと視線をよこす。



「きょうせいしっこう!(やったりますわ!)」


「なっ、はっ!? そ、その赤ちゃんが妖魔と戦うのです!?」



 そうだよ。



「えー……すみませんが、そういう冗談を聞いてる余裕は……」


「信じられないでしょうが、マジです。ウタ様はこう見えて優秀な術師なのです」


「いやいやいや」



 村長さんの目が胡乱げになる。


 こりゃちょうどいいかもな。

 信用得るついでにやることやっておきますか。



「そふとばんく(ミズホ)」


「あらママのこと呼んだぁ!? ちなみにそふとばんくじゃなくてミズホよー!?」



 クレハさんじゃなくミズホに呼び掛ける。

 この人のほうが、俺の舌っ足らずな赤ちゃん言葉を読み解いてくれるからな。


 というわけで、




「しゃざいかいけい、ひらきます(皮膚を剥がされた村人全員集めるよう言ってくれ)」




 その人たちみんな、『肉体再生』で治すからよ?




 ◆ ◇ ◆




「行ってらっしゃいませウタ様ぁーーーーッ!」

「信じてますッ!」

「動画見ました! CG赤ちゃんじゃなかったんですねぇー!?」




 はいというわけで、村人全員にガチ応援されて討伐に出発である。



「さ、流石ですねウタ様。まさか村人数十人を治癒した上、村長の欠損した指まで生やすとは。どんな呪力量してるんです?」


「ふふんッ、わたくしが毎日20時間も呪力上げをさせてるおかげね!」


「教育虐待毒親は黙ってろ」


「む~!?」


「いや『む~』で済ませられる毒性超えてますからねアナタ?」



 とクレハさんはミズホに厳しいが、まぁ実際毎日呪いのイメージをみちみちやってたおかげである。

 妖魔退治前に浪費しちゃったが、まだまだ呪力はパンパンだ。



「ぷりうす(俺は無駄に元気だぜ!)」


「ウタ様、力こぶ作っても腕に肉団子できるだけですよ? はぁ……これは『呪力鑑発かんぱつの儀』の時には、どんな結果が出るか」



 お、なんすかそれ?



「あぁ、『呪力鑑発の儀』とは、呪力量を数値化して調べる儀式です。呪力上げの修行を始める三歳、続いて五歳、最後に呪力上昇の止まる七歳までやるのですよ」



 はえ~。

 この世界流の七五三みたいなもんか。



「呪力量の平均値は『100』といったところでしょう。まぁウタ様は明らかにそれを超えてるでしょうけどね」


「ママのバストも女性ホルモン出すぎで100超えたわ♡ 息子想い乳育法♡」


「ウタ様、この人の脳にも『肉体再生』お願いします」



 ふむふむ、呪力測定かぁ楽しみだなぁ。

 一体俺はどれくらいあるのだろうか?


 そう思いながら、ミズホの脳に再生かけつつ歩くこと数十分(※ミズホは何も変わらなかった)。


 やがて俺たちは、妖魔が根城にしているという廃神社にたどり着いた。

 



「びっぎゅもたぁ、はままつみなみてん……!(うおっ。すごい呪力の波動を感じるな……!)」


「やはり上級妖魔がいるようですね。人を脅迫できるほど知性があるあたり、もしやとは思ってましたが」



 クレハさんがピンと指を立てる。


 ミズホが「しゃぶれってこと?」と首を捻った。



「奥様はそのへんで死んでてください。――いいですかウタ様、これから注意説明をします」



 お、真面目な話か。真面目に聞くぜ。



「呪術師に四等、三等、二等、一等、そして準特等と最上位たる特等の『六階級』があるように、妖魔にも等級がございます」



 ほうほう?



「人とは逆に『危険度レベルワン』『危険度レベルツー』『危険度レベルスリー』『危険度レベルフォー』『危険度レベルファイブ』『危険度レベルシックス』と、数字の大きい順に強さが上がります」



 指折り数字を示しながら彼女は続ける。



「レベル:フォーの妖魔までならそこまで脅威ではありません。ですがファイブ以上の上級妖魔となると、あちらも何らかの呪法を使ってきます。モノによっては一発アウトの場合も」


「にんてんどうほうむぶ……!(そりゃ怖いなぁ……!)」



 敵のタネが割れてたらよかったが、四条イラガの野郎がまったく手つかずできちまったからな。


 これから俺は初見殺しも覚悟で挑まにゃならんわけか。



「ゆえにウタ様。“やばい”と感じたらすぐに撤退するのですよ? 幸い、奥様も呪術師です。ウタ様が逃げるまでの時間は稼いでくれますよ」


「えぇ。ウタと、ついでにクレハのことは命懸けで助けると誓うわ。約束する」


「おや、生意気メイドの私も助けてくれるのですか?」


「えぇ、嫌々だけど息子を一人にさせたくないからね」



 ふむ……クレハさんもミズホも、かなり覚悟をしているようだ。


 それほどまでに上級妖魔ってのは強い存在なんだな。



「じゃあウタ、行ってらっしゃい」


「ぷりうすみさいる!(ああ、やってくるぜ)」



 ミズホの胸からベチャッと地面に落ちる俺。


 そうしてうじうじ這いながら、神社の社に近づいていく。


 すると、




『おや誰じゃぁ? わらわしとねに無許可で近寄る、愚か者は』




 瞬間、五本の『白尾』が槍のごとく迫ってきた!



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