第16話追いかけろ、0歳三か月児のケツ穴!!!(通りすがりの配信者アヤ視点)



 ――底辺動画配信者、読売アヤはおののいていた。



「み、みなさん、なんかすごい映像が撮れちゃいましたねぇ……!?」



 手にしたスマートフォンに目を落とす。

 そこに表示された動画配信画面には、『同時視聴人数:3万人』という信じられない数字が。


 チャンネル登録者十数人のアヤにとっては異次元の数である。



「いっ、いやぁ、まさかこんなことになるなんて……」



 きっかけは些細なものだった。


 何でもいいからウケるネタがないかと平日の昼間に歩いていたアヤ(※無職・家事手伝い)。

 ふとそこで公園を寄ってみたところ、突然に『決戦結界』が展開され、アヤは弾き飛ばされてしまったのだ。


 起き上がってみれば、何やらブチ切れた様子の呪術師が。


 その男の暴挙に対し、何すんじゃいこの野郎さらしたるッ! とカメラを向ければ……、



「なぜか赤ちゃんと戦いを始めて、あの野郎ってば赤ちゃんに本気キックかまして、でも効かなくて……!」



 そこからもう意味が分からなかった。

 プロの呪術師と思しき男が赤子に吹き飛ばされ、さらに本気を出して巨大怪獣のように変貌するも、今度はその赤子が片手を大王烏賊ダイオウイカに変えて男を圧倒したのだ。


 そして今。

 呪術師は赤子に殴り飛ばされ、四肢を失いながら木へと激突したのだった。



「は、ははっ。私ってば、幻術の呪法にでもかけられてます?」



 そう呟きながら配信画面を見る。


 だがそこには、いつの間にやら膨れ上がった視聴者たちが、



『幻術じゃねーよ俺たちも見たよ!』

『↑電子映像は呪法の影響受けないもんな』

『これマジでリアルなの!?』

『あいつ二等術師のイラガじゃん! クソ嫌味なヤツ!』

『二等術師ぶっ飛ばす赤ちゃんって何!?』

『え、同じ獣身呪法使った!? 息子!?』

『↑いや赤ちゃんが呪法つかえるわけねーだろ!』

『そもそもあの年で可視化されるレベルの呪力量ってなんだよ!?』

『全部が全部意味わかんねーーーーーー!!!!』



 と、アヤと同じくコメント欄で混乱しつくしていた。



「や、やっぱり現実なんですねぇこれ……!」



 とんでもない場面に出くわしてしまった。

 だが同時に、『これはチャンスだ』と、アヤは冷や汗を流しながらほくそ笑む。



(ぁ、あの赤ちゃんの足取りを追っていったら、チャンネル登録者数伸びまくるかも~!?)



 そうすれば広告料もガッポガッポ。

 もう実家の親に家賃入れろと言われて泣き喚く心配もなくなる。



「よ~しッ、あの赤ちゃんをこっそり追い回すぞーーーっ!」



 かくしてここに、『乳幼児のストーカーをする家事手伝い女』という、地獄の配信者が生まれたのだった……!



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


・恐怖、乳幼児のケツを追いかけるニート女――!(※+肖像権知識欠落)



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