第15話はじめての呪法発動!(ぱくり!!!)

 呪法。

 それは呪力操作とは全く別の『個人技能』らしい。


 呪力が一定量以上に達した者が、5歳ごろに脳の構造デザインが完成しきったタイミングで目覚めるとか。


 最初はわけわからんと思ったが……“呪力を脳に走らせることで発動する”と聞いて、思いついた。



 それ、『プログラミング』じゃないかと。



 呪力という名の電流を、脳という形の決まった電子回路に走らせる。

 それで発動するのが個別の呪法。

 

 そう考えたら、まさにプログラミングそのまんまじゃないかと。



 つまり、逆に言えば。

 他人の脳への呪力の走らせ方プログラムを、真似してしまえば?




「――なんだその呪力量はッ!? こっ、殺す! これ以上成長する前に死ねぇぇッ!」




 十数メートルもの足を振り下ろすイラガ。

 それに対し、俺はプニプニ赤ちゃん右手を伸ばすと、



「『しょうひょうけん』しんがい。“ゆっくりゆずは”(『獣身呪法』疑似発動。モデル“大王烏賊ダイオウイカ”)」



 瞬間、右手の質量が一気に増大し、変異しながら分裂。

 吸盤さえも再現された深海巨大イカの複腕になり、イラガの四肢を絡めとった。



「はぁッ!? そ、それは私の呪法!? なぜっ!?」


「おしえてやるぜれいむ(お前の呪力の流れを把握して真似たんだよ。俺の顎に一撃入れた時にな)」



 血液をⅩ線で見透かして、間接的に血管の這い方を見極めるように。


 イラガが俺を蹴った瞬間、纏われた呪力を通して経絡系の流れが読めた。

 つまり、脳に呪力を流すためプログラミングの回路の形もだ。



「だちょうは、さいだいきゅうのちょうるいだ。すぐれたしんたいのうりょくをもつが、あたまがすさまじくわるいぞ(ここで俺の未熟な赤子の脳が役に立った。まだ構造が固まりきってない分、呪力を自由な形で流すことが出来る)」



 それにより奴の『獣身呪法』をコピー。

 けっこう多いらしい俺の呪力を込め、世界最大級の無脊椎動物の腕を再現したわけだ。



「ばちくそあたまがわるいため(ま、所詮はコピーだがな。四肢全部を変えるのはちょっと無理っぽいが)」


「クソッ、身動きが出来ん!? ぉ――おいッ、ユキネに妻よ! このガキを止めろッ、私を助けろ!」


「かぞくのかおも、おぼえられないそうだ(このDVクソ野郎をぶっ飛ばすには、十分だ)」



 叫ぶイラガを、当然ユキネさんたちは助けない。

 ただただ冷めたような視線を送るばかりだ。

 それが答えだった。



「おい貴様らッ!? 当主の危機なのだぞッ!? おいっ!」


「ゆっくりもんだい(さぁ決着とするか)」



 触手腕で奴の四肢を拘束したまま、俺は左腕に全力の『衝撃強化』を掛けた。


 そして『反発強化』で肉体の弾性を上げ、一気に跳躍。


 泣き叫ぶイラガの胴体へと接近し、



「かい、けつ!(食らっとけこのボケ野郎!)」


「がはぁあああああーーーーーッ!?」



 どてっぱらに全力の拳撃。

 その威力に拘束されていた奴の四肢が引き千切れ、胴体だけがぶっ飛んでいった。


 

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