第三章:化け物、外へ。―その危険性『名古屋走りシャコタンぷりうす(※老人搭載)』―

第10話はじめての爆走!(わーい!)



「りそな~!(見てくれミズホ)」


「ウフフ。りそなじゃなくて、ミズホよ?」



 生後三か月くらいした頃。


 俺は母上(名前呼びめちゃ求めてくる人。フレンドリーなんだね)に、ある隠し芸を見せることにした。



「ウタ?」



 数日ほど自主訓練した奥義である。

 俺は足に力を籠めると――そのまま立ち上がって、爆走した!



「じぇいえいばああああああんくッッッ!!!(うおおおおどうだミズホ~!?)」


「ってきゃああああああああああ!? 愛しの息子がハイハイ通り越して爆走してるぅうう!? 男子三日で進化しすぎぃいいいいいいーーーー!」



 あとじぇいばんくじゃなくてミズホよーーーッ! と咽び泣いて狂乱する母。


 どうやらお気に召したようだ。



「ぶぅぅぅぅうーーーん! ぷりゅぅす!(はっはっは。これも『反発強化』訓練を行い続けた成果だな)」



 呪力操作による技の一つ、『反発強化』。

 肉体の弾性を概念的に上げることで、重力の影響も軽減する防御技術である。

 これにより重力を最小限まで無効化。


 さらに、



「しゃこたん!!!(足元を見よ! この床を蹴るごとに爆ぜる呪力を!)」



 呪力操作による別の技『衝撃強化』である。


 呪力に宿る“ナニカを傷付ける”という概念効果を利用し、体術による衝撃を上げる技術だ。


 これにより床を蹴る威力を増強。

 赤ちゃんあんよでも走ることが可能になったのだ!



「ぶんぶんぶぅーーんっ! なごやぁぁぁ!!!(うーんやっぱり身体を動かすのは気持ちいいな!)」


「てっ、天才過ぎるッッッ! いくらわたくしが毎日十九時間の訓練を課してるからって、二大呪力操作技術の併用をもう行えるようになってるなんて!? あぁアナタってばまた無理して休憩時間を訓練にあてたのね!? 最高ッッッ!!!」


「ぶぶんっ! みつびし!(嬉しいかミズホ!)」


「みつびしじゃなくてミズホよ~!」



 狂喜乱舞しまくるママ上である。


 一時期は完全に正気を失っていたが、すっかり理性が戻ったようだな。


 瞳孔は相変わらずグルグルに開きっぱなしだが、まぁ大丈夫だろたぶん。



「さぁウタ、家の中で走り回るのはここまで。もしもアナタがどこかにぶつかって怪我したら、ママは自分の身体からその部位をえぐり取って移植する覚悟だから、ママを穴ぼこだらけにしたくなかったら止まりまちょうね~! あ、もちろん止まらなくてもいいわよ!? この世のすべてはアナタの自由よ!」


「きーっどん!(おっとそれは困るから止まるか)」



 呪力操作『衝撃強化』を停止っと。

 爆走モード終了。うじむしモードに移行します。



「こうれいしゃ、めんきょへんのう(すまんすまん、家の中で走り回って悪かったな)」


「あぁ~~~~ッウタが止まってくれたぁ~!? つまりわたくしの身体が大事ということなのね!? 大切に思ってるということなのね!? わたくしもよーーーーーーッ!」



 俺を抱き上げてワッショイしまくる母。


 やがて彼女は「あ、そうだぁぁ!」と満面の笑みを浮かべると、懐から携帯を取り出した。


 おっ、なんすかなんすか?



「ウタのハイハイ通り越して爆走記念に、『公園デビュー』しちゃいましょう!」


「しゅっとうめいれい!?(おぉ、公園デビューか!)」



 嬉しいなぁおい!


 なにせ葬式の日以外は外出すらしたことがない俺である。

 生後一か月以内に父が死んで、そっからは家が没落して使用人が減って母が発狂してたからな。

 でミズホが正気に戻ってからは修行漬けだったから外に出る暇もなかった。



「きけんうんてんざいのうたがい……!(『妖魔』ってヤツに襲われないか怖いが、まぁ実力者っぽい母上がいるしな。それに俺も修行しまくったから、ザコ妖魔くらいならどうにか倒せたり?)」



 危ないのは嫌だが力試しはしておきたい。

 弱い相手なら戦ってもいいかもな~。



「うふふふ。ウタのことを最近集めたママ友たちにも見せてあげたいからね。じゃ、ちょっと彼女たちに電話するわ。――あ、もしもし? えぇ、実はウチの子が呪力戦闘技術二大併用が出来るようになってね、あぁいやいやいや、十代じゃないわよ。まだ0歳」



 楽しそうに電話する母。


 やがて彼女は通話を切って、ウフウフと微笑んできた。



「色々あってね、ウタには『実戦』を経験してもらうことになったわ。あるママ友を困らせている敵とね?」


「さいばんけっか!?(えっ、マジで!?)」



 おいおい実戦っていきなりだな。

 ママ友さん、妖魔に花壇でも荒らされてるのか知らないけど、その駆除を俺がやる感じか?

 流石に不安なんだが……俺に勝てるのかよ。



「みずはらいっぺい……?(分の悪い賭けは嫌いだぜ……?)」


「まぁ大丈夫よ。っ?」


「みずはらいっぺい!!!!!!!(おッ、それなら勝ったわ!!!)」



 ザコ妖魔と聞いて安心したぜ!

 いっちょ懲らしめてやりますか~!



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 有名になる→KADOKAWA様が「おっ」てなる→書籍化する やったぜ。


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