第13話 新たな協力者

翌朝、リナは再びグレッグのオフィスを訪れた。書類を手に、彼女は深層アクセスの許可を得るための協力者を見つける決意を胸に秘めていた。グレッグは彼女の姿を見ると、優しく微笑んで迎え入れた。


「リナ、どうした?書類の進捗はどうだ?」グレッグは彼女の顔色を見て、何か問題があることを察した。


リナは書類を差し出し、問題の欄を指差した。「グレッグ、この『セキュリティ担当者の同行』の項目が埋められなくて…。適任者が見つからないんです。」


グレッグは書類をじっと見つめ、しばらく考え込んだ。「なるほど、この項目は確かに重要だ。私自身が同行することも考えたが、上層部の許可がないと無理だな。」


リナはうなずきながらも、失望の色を隠せなかった。グレッグは続けた。「しかし、心配するな。私の知っている数人のセキュリティ担当者を紹介しよう。きっと協力してくれるはずだ。」


グレッグはリナに数人の担当者の名前と連絡先を渡した。リナはオフィスに戻り、エリカとマイクに相談しながら一人ずつ連絡を取ってみた。


最初に連絡を取ったのはベテランのセキュリティ担当者、ジェームズだった。彼は長年の経験を持ち、信頼されている人物だったが、リナの申し出に対してはっきりと断った。


「リナ、申し訳ないが、私は今重要なプロジェクトに関わっていて、君の案件に時間を割くことができないんだ」とジェームズは申し訳なさそうに言った。


次に連絡を取ったのは若手のセキュリティエンジニア、サラだった。彼女もリナの話に興味を示したが、結局は自分のスケジュールが詰まっていることを理由に断った。


「ごめんなさい、リナ。でも、今は自分のプロジェクトで手一杯で…」サラは心から謝るように言った。


リナは次々と連絡を取るも、ことごとく断られ続けた。彼女の心には次第に不安が募っていった。最後に紹介されたのは、社内で奇人として有名な人物、セキュリティアナリストのハンクだった。


「彼しかいないわね…」エリカがため息混じりに言った。「でも、ハンクが本当に協力してくれるのかしら?」


リナは深く息を吸い込み、決意を新たにした。「試してみるしかない。もし彼が協力してくれれば、私たちは次のステップに進める。」


リナはハンクのオフィスを訪れた。彼のオフィスは雑然としており、壁には様々な技術的な図表やメモが貼られていた。ハンク自身は長髪で無精ひげを生やし、何かに没頭している様子だった。


「ハンクさん、お時間よろしいでしょうか?」リナが声をかけると、彼はゆっくりと顔を上げた。


「何だ?リナか?」ハンクは少し驚いた様子で彼女を見つめた。


リナは状況を簡潔に説明し、彼の協力を求めた。ハンクはしばらく黙って考え込んでいたが、やがてゆっくりと笑顔を見せた。


「面白そうだな。いいだろう、協力してやるよ」ハンクはあっさりと了承した。


リナは驚きと喜びで胸がいっぱいになった。「本当に?ありがとう、ハンクさん!」


「ただし、私の条件がある」とハンクは続けた。「この調査が終わったら、君たちが見つけた情報を全て共有してくれ。それが私の報酬だ。」


リナは迷わずうなずいた。「もちろんです、ハンクさん。私たちもその情報を必要としているんです。」


こうして、リナたちは新たな協力者ハンクを得て、次のステップに進む準備が整った。彼らは深層アクセスの許可を得るための書類を完成させ、再びグレッグに提出することを決意した。

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