第2章: 記憶ストレージの深層調査の始まり

第12話 深層アクセスの許可

リナはオフィスで上司のドアをノックした。深層アクセスの許可を求めるための書類を手に、彼女は少し緊張しながらも、決意を胸に秘めていた。上司のグレッグは彼女の申し出を聞き、深くうなずいた。


「リナ、君の要請は理解した。だが、この書類を完成させるには、かなりの手間がかかるぞ」と彼は言った。リナは黙ってうなずき、電子書類を受け取った。


オフィスに戻ると、エリカとマイクが彼女を待っていた。二人ともリナの同僚であり、長年の友人でもあった。


「さて、これからが本番だね」とエリカは笑顔を見せた。「どこから始める?」


リナは電子書類をデスクの端末に投影し、項目を一つずつ確認した。


「まずは基本情報の入力から始めよう。エリカ、君はセキュリティ部門のコンタクト情報を収集してくれる?マイク、君はアクセス権限を申請するための理由書をまとめてくれる?」リナは指示を出し、三人はそれぞれの役割に取り掛かった。


エリカは迅速にセキュリティ部門のコンタクト情報を収集し始めた。彼女の効率的な作業ぶりにリナは感心しながらも、自分のタスクに集中した。アクセス権限を申請する理由書を書くのは簡単ではなかった。リナは慎重に言葉を選び、説得力のある内容を心がけた。


「リナ、この部分なんだけど、もう少し具体的な例を出したほうがいいかもしれない」とマイクがアドバイスをくれた。


リナはうなずき、マイクの提案に従って文章を修正した。彼らは協力し合いながら、書類の項目を一つ一つ埋めていった。


「よし、これで大体完成だね」とエリカが言った。「あとは提出するだけだ。」


リナは電子書類を再確認し、必要な情報が全て正確に入力されていることを確認した。これで、深層アクセスの許可を得るための第一歩が完了したかのように思えた。


しかし、最後の項目に目を向けた瞬間、リナの顔に陰りが差した。


「セキュリティ担当者の同行…」リナはため息をついた。「この欄を埋めないと書類が完成しない。」


エリカとマイクも同じ欄を見つめ、困惑の表情を浮かべた。


「セキュリティ担当者か…誰が適任なんだろう?」エリカが疑問を口にした。


マイクも眉をひそめながら考え込んだ。「我々の知っている人で、こんな高レベルなアクセス権限を持っている人はいないな。」


リナは深く考え込んだ。彼女たちは全ての準備を整えていたが、この一つの欄が原因で書類を提出できない状況に立たされていた。


「仕方ない、何とかして適任者を見つけなければならないわね」とリナは決意を新たにした。


「誰か心当たりは?」エリカが尋ねた。


リナは首を横に振った。「いいえ、まだ誰も。でも、このまま諦めるわけにはいかない。上司に相談してみよう。もしかしたら適任者を紹介してもらえるかもしれない。」


三人は同意し、リナは次の日に再びグレッグのオフィスを訪れることを決めた。彼女たちはまだまだ先の見えない挑戦に立ち向かう準備ができていた。

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