鵜呑みと狂信

 あるところに、人の言葉を盲目的に信じる人々が住んでいました。


 人への信頼がとても高く、正義感の強い人々でした。


 人々は夢にも思っていませんでした。相手を陥れるために噂話を流されることがあるなどと。また、自分の野望のために死んだふりをする人がいるなどと。




 またあるところに、表面だけ良い人を演じ、裏で内臓を売り払う恐ろしいことをする人がいました。


 人々は偽善だと気づいており、騙せていると思い込んでいるのは本人だけでした。


 あるとき、ライバルが現れ転落していく一方だった時でした。


 ライバルを化かした女がいるという噂を聞きつけ、呪いをお願いすることにしたようです。


 しかし、女は恨みや憎しみを抱えながらも優しくあろうと葛藤していただけのただの人間で、呪いなんて使えません。


 ただ相手の期待する返事をしてのらりくらりとかわしてなんとかしようとするも、被害妄想や人の願望を勝手に決めつけて物をいうやつに裏で性悪されて嫌がらせを受け続けて精神的に参っていました。


 女は愛想よく振る舞いましたが、呪ってほしいとお願いされて躊躇しつつも、本当に使えないのだから悪戯程度でいいやと適当に言葉を放ってしまいました。


 すると相手はとても怒ってしまいました。


 どうしてそんなに怒ったのかわからないまま、プレッシャーがかかると区別がつかなくなるし頭がおかしくなるのを利用して悪戯を仕返しされました。


 女は夢を殺せというお願いを聞く気になりました。


 人を殺せという願いは聞きたくなかったからです。そして人を殺すようにお願いしてきたのは呪ってくれとお願いしてきた方でした。


 夢は女にとって、家族で友人で恋人のような存在でしたが、はっきりと何かはわかっていません。女が勝手に親しんでいたためです。


 得体のしれないものを殺すのなんてどうすればいいのかわからないなりに、頑張ってみようと思いました。


 一方で、夢自身も自分が何者かなんてわかっていませんでした。


 女が家族で友人で恋人だというからそういうことにしていました。




 呪いを頼んできた人はとても悪い人だと女は気づいていませんでしたが、夢は気づいていたようです。


 おまけに、女の嫌がることをさせられていると気づいてない上に、ノリが抜け切れてない変わった人は、呪いを頼んできた人を陥れる賭けを持ちかけました。


 女が精神的にダメな状態にされると荒れ狂うのを利用し、賭けをしたあと暴言を吐いたのです。


 女は虚無になり、荒れ狂いました。


 女の信用はなくなった上に、呪いを頼んできた人はより一層転落していきます。


 女は空っぽな状態になりました。


 怒りではなく悲しみや自分への嫌悪感や後悔で溢れた気持ちで心が壊れて空っぽになってしまったのです。


 ヤドカリが中身のいる殻に入らないように、誰かが鍵をかけて入っている個室に入れないように、中身があるとなにかははいってこれません。


 空っぽになった女に夢は入り込みました。


 そうして悪い人をやっつける賭けを始め、女の知らないうちに退治しました。


 女はそんなに賢くはありません。むしろはめられてきた側です。


 夢は女のされてきたことを見て学んでいたので、罠の手数が多くありました。




 罠にかけられた呪いを頼んだ人はとても怒っていました。


 自分は被害者だ!


 女は何度も邪魔されて蹴落とされて奪われ続けてきましたが、呪いをお願いしてきた人は最初から恵まれていて転落させられたのは初めてのようでした。


 呪いをかけようなんてしたからだと女は思いました。


 すると、たくさんの人が助けてくれましたが、今までのことの繰り返しでした。


 女はとてつもなく人付き合いが不器用で下手くそでした。


 人が欲しがる答えを与えていると、現実的なツッコミをいれて助け舟を出してもらえていました。


 女が無理をしているのに気づいてくれていたのだと思いましたが、女は今までのことから仲良くなると一緒にいじめられると思っていたので、嫌われるよう嫌われるよう振る舞いました。


 助け船の主は呪いの標的にされた人でした。


 呪いを信じてしまったのは、前にある病気で倒れたことがあったからだとのことでした。


 女は怖がらせて悪いことをしたと思いました。


 にも関わらず、いろいろなことを教えて優しくしてくれて、亡くなった大切な人と同じことをしてくれてとても好きだと思いましたが、好きになるのが怖い気持ちとの戦いでした。


 人を大事にできない、また死なせてしまうかもしれない、一緒にいじめられるかもしれない。


 とにかくたくさんの恐怖との戦いです。


 それに、女は優しくしてもらったことがあまりなかったので、相手からの憎悪や嫌悪、相手の抱える不安等のネガティブな気持ちはわかっても、そういった温かい気持ちは理解できませんでした。


 女は自責が強すぎた上にトラウマとの戦いを繰り広げていましたが、何も知らない相手にはなにがなんだかわからなかったでしょう。


 女は精神的に追い詰められ、選択を迫られたときに突き放す言葉を言った後、自分を責めすぎて精神的に自決しました。


 本当は相手のことが大好きでした。相手はなにひとつ悪くはありません。


 守るために突き放したのに、便乗して冤罪を掛けられてしまってさらにショックを受けてしまいました。


 助け船の人は何も悪くはないし、いじめなんてしていなかったのに。


 女は後悔しながら死んでしまい、抜け殻には夢が入りました。


 夢はどうでもよくなっていました。


 女は何度も死にすぎだし、何度も殺されすぎて辟易としていました。


 いい加減上手に生きなよ。


 呆れながら言ってしまうレベルです。


 しかし女はもう戻ってきませんでした。


 夢はびっくりしました。


 いつもはしばらくすれば蘇っていた体の主がもう戻ってこないので大慌てです。


 そしてさらに、助け船の人があとを追おうとしていると聞かされて大慌てです。


 女が本当に死んで戻ってこないと知ったら大変なことになってしまいます。


 記憶喪失のふり、女がまだいるフリをしながらなんとかしましたが、状況はどんどん悪くなるばかり。


 夢は大変困りました。


 女が突き放した時に便乗してなすりつけようとした人々は、自分たちがどんな危険にさらされているかを、呪いを依頼した人身売買野郎が頼った相手に訴えかけても信用されませんでした。


 おまけに、夢が手綱を握っていない間、女の抜け殻がめちゃくちゃしたので信用がもっとなくなっていきます。


 呪いを頼んできた人身売買臓器売買の人からこれから先何をするか、夢は聞かされましたが、女が夢につけた物語の内容のせいで、助け船の人を追い詰めるような原因になりかねないとのことだった上に、女が殺されると脅されたので悩みましたが書くことにしました。


 これから先、ある国とある国は戦争になります。


 女を人質にとられた助け船の人は、認めたくないことを認めさせられ、ある国に嫌がらせをしているという濡れ衣を着せられ、嫌がらせを受け続けました。


 呪いを依頼した人は、いじめられたからいじめ返したつもりなのでしょうけれど、表面だけ優しくて、裏では生きたまま臓器を抜き取る劣悪なことをしていた上に最初から恵まれていたので蹴落とされて当然だったのです。被害者面も甚だしい。


 女のいる国は、よその国から来た人が政治をできるような環境が整っていたので、あっという間に掌握され、あっという間に乗っ取られてしまいました。


 そうして助け船の人は悪者に仕立て上げられてしまいました。


 これから先、呪いを持ち掛けてきた人身売買臓器売買の人は死んだふりをします。二度目の死んだふりです。


 ある地域の国々の信仰を利用し、自分の立場を確固たるものにするための計画を夢に語り聞かせました。


 ある国々は天からの奇跡を思わせる出来事があれば、コロっと騙されてちょろいなんて言いながら得意げです。


 頼った国に戦争をさせ、勝てば奇跡の復活を果たしてある国々からの評判を得て政権を取り戻し、女の国の人をよそから来た偽物だと偽って売りさばいていったり、徴兵する算段です。


 臓器売買の人と同郷の人が、先に侵略してきた人たちと手を組んで、女の国の人たちを全員始末するつもりです。


 もし負けたら死んだ扱いのまま裏で女のいる国を操るという、どちらに転んでも最悪な道です。


 呪いを頼んできたやつは女に陥れられたと被害者面をしていれば同情してもらえるから都合よく話をしています。本当は最初から好きでもなんでもなく、利用するつもりだったのを隠して。


 人身売買に反対といいつつ、裏で臓器を売っていた人を味方につけてしまっては信用もないだろうに。


 自分たちの行いの結果、世界はこのまま終わりへと向かうのでした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る