第〜話 悠久。ずぅぅっと一緒じゃ。ぬしさま。

(蝉の鳴き声)


(数度繰り返す、かすかな寝息と、そっとやさしく髪をなでられる音)


(ふっ、と目を覚ました大きな体が軽く身じろぎして、体勢を変える音)


「ふふ。ぬしさまや。起きたのかや? ……ん? うむ。よう気持ちようずうっと眠っておったぞえ。この白絹しらぎぬ……ぬしさまの言うところの、ぬしさまの目に入れても痛くないほどに小さくて可愛い可愛い、愛する妻のひざの上で、のう?」


(動揺。軽く身じろぎする、音)


「にゅふふふ……! どうしたのじゃ? そんなに林檎のようにあまぁくほっぺをあかぁあかぁくして。ん? もちろん知っておるよ? ぬしさまが外界そと人間ひとの年若い殿方衆と交流する際、酒に弱いぬしさまが宴席で酔ってくだを巻くたびに、ひどくひどぉく惚気ておることを。わらわのほうでも人間ひとの年若い奥方衆との茶会での交流の際、頬をあかぁくした苦笑いとともにそう伝えられたことは、一度や二度ではないからのう?」


(恥ずかしさのあまり、かぁっと赤くなった顔を両手で覆いつくす、音)


「にゅふふ……! おや、ぬしさまや? 残念じゃが、肝心なところが隠れきれておらぬ、よ?」


(ちゅくぅぅっ。隙間を縫って、少しカサついた唇と、やわらかな唇が長く長く重なる、音)


(蝉の鳴き声)


(涼やかな風鈴の音)


※↓ ちゅぱっ、と唇が解放された音から始まる。


「ふふ。ああ、穏やかで、静かじゃな……」


(そっとやさしく髪と、頬を愛おしそうに、なでられる音)


「愛しておるよ。この悠久の時の果て、共に歩むと誓ってくれた、わらわの愛しい愛しいかけがえのない、この身と心とこれから先のすべてを捧げた、最初で最後のぬしさまよ。そして……」


(小さな手のひらが大きな体の手をとって、少し膨らんだ下腹部へと導く。……心音)


「ずぅぅっと一緒じゃ。幸せに、なろうぞ。これからは、わらわと、ぬしさまと……にゅふ、にゅふふふ……!」

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都会に疲れきった限界社畜、田舎に帰って代々伝わる家守りロリ神さまにあまっあまに癒やされる。 ミオニチ(コミック電子1巻7.16発売) @sakuni

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