第4話 掃除は大変です
僕と大ちゃんはしばらく唖然としながら生徒会長の顔を見つめている。
「なに?」
生徒会長が首を曲げる。
ここまでギャップというか……なんかすごい。
「と、とりあえず先に自己紹介したいかな」
変に緊張してしまう。
「私は白崎真理奈、ここは生徒会じゃないから、名前でよろしく」
相変わらず低い声だ。
まじか……ということはずっとこの状態? ある意味感謝。
「おれは1年の倉崎大和だよろしくな! にしても! あの生徒会長がまさかこんなのだったとはな!」
大ちゃんが笑っている。
生徒会長にこんなのっていうのはさすがにまずいんじゃ……
「別に、これが普通だし……あとここは生徒会じゃない。私のことは名前で呼んで」
真理奈先輩は腕を組み、首を曲げながら話している。
違和感がすごすぎる!!
「僕は楠見昭です! えっと、同好会会長です! よろしく!」
3人とはいえ緊張する。
ついつい声が大きくなってしまった。
「それにしても汚ねぇなあ、ここ」
大ちゃんが周りを見渡す。
この部屋は1教室ほどの大きさがあるのだが、長年使われておらず、掃除していなかったのか埃が舞っている状態だ。
これは同好会会長として、やらなければならないことがある。
「これから掃除をします!」
僕は全部の窓を開けた。
窓からは光が差し込んでくる。
「まじかよ掃除、俺めっちゃ嫌なんだよな~」
大ちゃんは頭で手を組みながら回っている。
まぁ大ちゃんは昔からこうだ。
掃除には相当の拒否反応が出るらしい。
「私もパス~2人ですればいいじゃん」
うーん……これは困ったなぁ……
仕方ない……
「ダメです! 真理奈先輩! 大ちゃん! 一緒にやるよ!」
僕は2人の手を握った。
2人は困惑するがすぐにため息をついた。
「はぁ……なら一緒に掃除してよ。明君」
真理奈先輩が詰め寄ってくる。
近い近い……
「おい、俺は!?」
大ちゃんが自分を指さしている。
まぁ確かに置いてけぼり感はすごい。
「3人で掃除がんばろ!」
ということで3人で掃除を始める。
役割は、僕が床の掃除、そして生徒会長が周り、大ちゃんが窓ふきに決まった。
「おう! よいしょ! 重いぜこのバケツよお! ちくしょう!」
大ちゃんはゆっくりとバケツを下ろす。
まぁ、真理奈先輩にバケツを持たせるわけにもいかないので、そこのところは大ちゃんに任せた。
案外3人もいたので、掃除にはそんなに時間はかからなかった。
「は~終わった」
僕は、大きく伸びをする。
2人もどうやら終わったらしい。
「もう~手びしょびしょなんだけど……」
真理奈先輩がハンカチで手を拭いている。
真理奈先輩もなんだかんだものすごく頑張っていた。
やっぱり清楚の部分も多いのだろうか?
いまいちよくつかめない。
「なぁ~これからアイスでも食いに行こうぜ!」
大ちゃんが時間を見る。
どうやらもうあと10分で帰宅の時間らしい。
「いいね! 大ちゃん! せっかくだし真理奈先輩もどう?」
「えー……2人で行けばいいじゃん……」
相変わらずめんどくさそうな返事である。
「おい! 誰か来るぞ!」
ガラガラ……とドアが開いた。
この部屋は教室と違い、出入り口が1つだけで、それも一方通行なので窓越しに影が見えるのだ。
「みんなお疲れ~すごいね! 掃除したんだ!」
先生だった。
まぁ、この部屋に僕たちがいるのは先生しか知らないので、当たり前といえば当たり前なのだが……
「はい、同好会設立の気合を入れるために掃除をしました」
まぁ、実際これで結構距離感は縮まったと……思いたい。
「生徒会長もいますし、まぁ安心ですね」
先生が真理奈先輩の方を向く。
真理奈さんの雰囲気が変わっており、どうやら生徒会長モードである。
「いえいえ空月先生。私は何もしていません。むしろ明君と大和君にほぼ任せてました……」
お嬢様モードも、声が高くなかなかいい。
というか先生にも本性を見せていないようだ。
「それじゃあそろそろ時間だから生徒会長忘れないでね~」
「はい!もちろんです!」
そういうと先生はそのまま戻っていった。
それにしても、生徒会長モードと通常モードでつらくはないのだろうか?
「そういえば真理奈先輩って……」
キーンコーン……
僕が言い終わるタイミングで予鈴のチャイムが鳴った。
「挨拶活動行ってくる……2人も早く帰りなよ」
真理奈先輩が歩いて行ってしまった。
これから下校挨拶活動らしい。
「大変だよな」
大ちゃんが、廊下の窓から校庭で挨拶をしている真理奈先輩を見て話す。
「生徒会長だもんね、待とうか」
どうせなら待って一緒に帰った方がいい。
アイスもあるし!
「そうだな~」
大ちゃんの承諾も得たので、僕たちは真理奈先輩の挨拶活動が終わるまで、待つことにした。
あたりはもう赤色になり始めていたころ。
生徒会長が部室に戻ってきた。
「なんで帰ってないの?」
真理奈先輩が低い声で話しかけてくる。
別に怒っているわけではなさそうだ。
「おう!明が一緒に帰ろうってな」
大ちゃんは僕の方を見る。
まぁ、間違ってはない。
「一緒にアイス買いに行こう!」
僕は大ちゃんと真理奈先輩の手を握って部室の外に出て行った。
「ちょっと……まだ行くって言ってない……もう」
ようやくアイスが食べられる。
そうして僕たちはコンビニでアイスを買った。
「明って本当にそのアイス好きだよなあー」
大ちゃんが僕の買ったアイスの箱を見て言ってくる。
僕が買ったアイスはpiko(ピコ)というアイスで、中にはバニラ外にはチョコでコーティングしてある一口サイズのアイスだ。
「おいしいしお得じゃん! 6つも入ってるし。このチョコと中に入ってるバニラがおいしいし」
僕はこのピコアイスの魅力を大ちゃんに毎回のように伝えている。
「真里奈さん1個どう?」
僕は、アイスを1個、専用の串で刺し、真理奈先輩に見せる。
「……あん!」
スカッ……
真理奈先輩が飛びついてきたところを僕がわざと逸らしたのだ。
そのせいで、真理奈先輩は空中を食べるように動いた。
真理奈先輩は驚いたようにアイスを目で追っている。
そして……
「……あむ!」
スカッ!!
僕は再びアイスを横によける。
反応が可愛い真理奈先輩……
「むぅ……アム!モグモグ……ふっ(ドヤァ)」
「あ」
真理奈先輩が僕の手を掴み、そのままアイスを食べた。
そして横を向き満面のどや顔である。
「俺ももらうぜ」
隣から大ちゃんがアイスを1つ手で掴みそのまま食べた。
「ちょっと! 大ちゃんにはあげるって言ってないじゃんか!」
思わず僕は大ちゃんの方を見ながら叫ぶ。
「なんでだよ、いいじゃねえか! 俺たちの仲だろ?」
と肩に手を回してくる。
そういう問題じゃないんだけどなぁ……
「もう! 大ちゃん! 次僕にアイスおごってよ!」
「へーい」
「……おいしい」
簿行くが言うと、大ちゃんは手で肩をポンポンして返事をする。
ちなみに真理奈先輩も何かを言ったようだが聞き取れず、何を言ったのかはわからなかった。
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