第5話 これからの同好会

≪真理奈視点≫

 

「ただいま」


 私は家のドアを開ける。

 1人の女の子が奥の部屋から顔を覗かせ、私の方へ走ってきた。


「おう! お姉さま! お帰りよ!」


 この男くさい口調でお出迎えをしてきたのは、妹の白崎澄玲しらさきすみれだ。


「毎回言ってるけどその口調どうにかなんない?」


 私はため息をつきながら澄玲の方を見る。

 まぁ今更感あるのだが……


「なに!? この口調を嫌いな女がいるのか!? わかってないなぁお姉さまは。 これは性格なのだよ。 どうだい? 素晴らしいだろう!」


 澄玲はいったい何を言っているんだろうか……

 まぁ、家族から仕草と口調については、私と妹はかなり怒られた。

 有名な白崎家ということで、口調と仕草にはかなり厳しいのだ。


「ところでお姉さまよ。あの件はうまくいったのかい?」


 澄玲は右手を脇腹に、左手で私を対句表に指を指しながら質問してくる。

 あの件というのはあの事だろう。


「よかったと思う。私も久しぶりにすっきりしたし、アイスおいしかったし」 


 思い出すだけで恥ずかしい。

 いわゆる間接キスをしてしまったのだ。


「ほほーう! お姉さまずいぶんと充実してますなぁ~! でもその男の子も素のお姉さまを見てさぞ驚いただろうよ! この私だって毎回びっくりしてるのだからな!」


 それはよくわからない。

 見たところ明君は普通だったが。


「別に」

「なんだってええ!? あのお姉さまを見て動揺しない奴なんてこの世に存在するのか!?」


 澄玲は頭に両手を掲げながら叫んだ。

 そこまで驚かなくてもいいと思うが。


「何その反応。澄玲も学校では私と一緒でしょ」


 澄玲は私とは違う高校ではあるが、1年生でかつ生徒会長をしている。


「おう! なかなか清楚キャラも行けるってことがわかったぜ! はっはっは! ところでお姉さま、幸せなところちょっと口出すが、その男の子。まさかがいたりしないよな?」


 脇腹に腕を当ててたまま笑っていた澄玲だが、急に真顔になった。

 幼馴染がいるなんて聞いたこともない。

 というかまだ話をして少しだけなので知る由もない。


「もし知らなかったら気を付けたほうがいいぜ! 幼馴染の恋愛パワーはもはや爆弾だからな!」


 澄玲は大げさに両手で空に手を上げている。


「澄玲、それはさすがに誇張しすぎでしょ。はぁ……疲れたしわたしは休むわ」


 私はそのまま歩いていくと、自分の部屋に入っていった。




≪明視点≫

 

 僕は、部活部屋でとある雑誌をパラパラとめくっている。

 昨日、部活部屋が決まったばかりなので、特にすることがないのだ。

 ちなみに、机は現在3人なので、2つを向かい合わせ1つを横向きにくっつけている形にしている。

 教室が大きいのでものすごく寂しいのだが……

 そして僕が読んでいる雑誌はというと……


 ガラガラ!!


「おう! 明! 何見てんだ?」


 急にドアが開き、元気のいい大きな声が響き渡る。


「うわ!びっくりした!」

「そんな驚くことないだろ」


 いやいや、あんな大きな声でいきなり言われたらびっくりするのは当たり前でしょ……



「はぁ……」


 真理奈先輩も来たようだ。

 

「んで、何見てたんだ明」


 大和君は僕の見ている雑誌をのぞき込んでくる。

 デリカシーないのかこの男!


「メイド喫茶……ぷははは!!お前メイド喫茶行きたいのか!ちょうどじゃん。先輩と一緒に……」

「えーー……めんどくさいからパス……2人で行ったら?」


 真理奈先輩はめんどくさそうな顔をすると、予想通り拒否した。

 清楚な生徒会長ならばやってくれる……わけないか。


「ちょっと家族に電話」


 そういうと真理奈先輩は廊下に出て行った。

 令嬢ということは家かなり巨大なのだろうか?

 真理奈先輩のこと僕は何も知らない。


「それにしても何かやることないのか?」


 大ちゃんが背伸びをしながら話しかけてきた。

 

「うーん、考えてるけど思いつかない」


 僕は机に肘をつき頬に手を添えながら呟く。


「登山とか散歩とかサイクリングとかどうだ? 後は工作とかか?」


 大ちゃんにしてはまともな意見だ。

 確かにそれも面白い。


「そうだね、ということは場所を決めたりしたらいいのかな?」


 僕は大ちゃんの方を向く。

 大ちゃんは笑顔になる。


「アリだと思うぜ!」


 そういって親指を立てたので、僕は早速携帯で調べることにした。


「ただいま」


 扉を開け真理奈先輩が帰ってきた。


「お帰り! 真理奈先輩! ちょっとこれから一緒に次活動する場所を決めようと思う!」


 僕は真理奈先輩の方を向いて話す。

 

「え~、2人で決めたらいいじゃん。私別にどこでもいいし」


 と真理奈先輩が席に座る。

 もちろん想定済みの答えである。


「ダメ! それだと真理奈先輩のしたいことがなくなるから、ちゃんと真理奈先輩も参加すること! せっかくの同好会なんだから、誰かひとりをないがしろにするのは絶対ダメだよ!」


 僕は真理奈先輩が座った席に携帯を置き真理奈先輩の顔を見る。

 仲間はずれにはさせない。


「……仕方ないなぁ、2人はどこ行くつもり?」


 真理奈先輩が僕と大ちゃんの顔を見る。

 若干顔が赤い。

 熱あるのだろうか?


「ちょっとすみません。真理奈先輩」

「え?」


 僕は右手で真理奈先輩の額を抑える。

 結構熱くなっている気がする。


「真理奈先輩熱あるんじゃないですか?」


 真理奈先輩は慌てて額を手で押さえるも横に首を振った。


「これは熱じゃないし……その……大丈夫。待っててお手洗い行くから」


 そうして真理奈先輩は再び教室から慌るように出て行った。

 本当に大丈夫なのだろうか……? 呼吸も若干荒くなっていたような気もするが……

 しばらく待っていると再び生徒会長が帰ってきた。

 顔色は元に戻っていたので、何ともないらしい。

 よかった。


「じゃあ、これからどこに行くか決めるよー! の前にまず何したいかだね。ちなみに僕は登山! 理由は、小学校の時に好きになったから!」


 そう、僕は小学校のころよく祖父と登山に行っていた。

 なので結構登山は好きなのだ。


「俺はサイクリングだな、自転車でいろいろ行きたいぜ」


 まぁ大ちゃんは結構ロードバイクが趣味なところがあるので、よく風景を撮影しては、僕のメールに送ってくる。


「私は……バーベキュー。家ではしないし」


 どれもやってみたい。


「じゃあ僕から大ちゃん、真理奈先輩の順でやりたいことをやっていこうか! とりあえず今の3つで、明日どの場所に行くか決めるってことで!」


 僕はノートにメモをした。


 同好会でやりたいことリスト。

 ①登山

 ②サイクリング

 ③バーベキュー


 そうして、今日の1日が終わるのであった。


 僕はゆっくりと家の扉を開ける。


「ただいま~」


 返事はない。

 まぁ、1人暮らしなので当たり前である。

 そうして、畳部屋のある場所に正座をした。


 チーン……


「お母さん、お父さん。おじいちゃん、おばあちゃん、僕、同好会入ったんだ。良い友達も増えたよ! また紹介するから待っていてほしい。」


 僕の母親は小学校の頃、癌によりこの世界からはいなくなってしまった。

 そしてお父さんは、交通事故により僕が中学校の頃にもういなくなっている。 

 ちなみに祖父母も中学校の時にいなくなっているので、本当に僕1人で生活をしている。

 しかし、遠くで僕のことを見ている家族は、この報告を聞いて喜んでくれていることだろう。

 

「さて! 明日も元気に頑張りますか!」


 僕は伸びをしたまま、リビングに歩いていくのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

引きこもりで人見知りな僕と、清楚で可愛い生徒会長。 蜂鳥タイト @hatidori_taito

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ