第3話 ドライでクールな生徒会長


≪真理奈視点≫


「それじゃあ、真理奈さん、明君と大和君が来るからよろしくね」

「かしこまりました」


 そうして先生が離れて行った。

 私はゆっくりと生徒会長用の席に座る。

 どどど、どうしましょう!!

 そ、そうです! 部屋は?? 綺麗……うん、髪型……表情……いけますね。


「準備は満タンです!」


 なんの準備なのかは自分でもわかっていない。

 とにかく! あの2人がここに来る……また明君に会える!

 その気持ちでいっぱいだった。

 

「~~」


 静かな生徒会長室のドアの奥から声が聞こえる。

 この声は……明君!

 私は飛び出していこうと思ったがぐっとこらえる。

 まだノックもしていないのに飛び出したらビビらせてしまう。

 ということで、私は扉に耳を当て会話を聞いている。


「もう……何話してるのですか……早く来てください……」

 

 心臓がどきどきいっている。

 いつ来るのかと。

 

「すーはー」


 1回深呼吸。

 コンコン……

 きた!


「はい」


 私はほぼ反射で扉を開ける。

 おかげで明君は驚いた表情を見せる。

 思わずかっこいい! という言葉が出ようとするが何とかこらえた。


 「~どうぞお入りください」


 私は2人を中に案内する。

 あわわ! 入れてしまった……

 とりあえず2人にはソファに座ってもらう。

 

「お話は先生から聞かされております。同好会を作りたいとのことですね」


 私も対面するように腰かける。

 大丈夫!? 噛んでない!?

 2人の反応を見るに大丈夫そうだ。

 

 大和君の話だと、どうやら明君の部活理由は引きこもり+運動苦手+人見知り。 

 ということらしい。

 イケメンで引きこもりの可愛い声。

 ギャップ萌えとはまさにこのことです!!

 

 「いえいえ、かまいませんよ。むしろいいお話を聞けました!」


 私は思わず身を乗り出してウインクしてしまった。

 あああああ!!! やめてええ!! やっちゃったああ!! みないでえええ!! 明君そんな見たらダメええ!! 言いたくても恥ずかしくて言えなーい!!


 「とりあえずよ明、問題はまだ解決してないだろ、ほら同好会」

 

 よく話を遮りました!! 明君の友達!! 最高です!!


 ということで私は2人に気づかれないように深呼吸をした。

 

「そうですね、同好会は3人から設立可能です。一応この紙に部活名と名前を書いてください。今はまだ部として書けませんので、同好会って書いてくださいね」


 何とか言い切った……

 いつもならば、このくらいスラスラ話せるのに、今回はちょっと話すだけでも緊張してしまう。

 

「同好会名どうするんだ? 明」

「何も考えてない……」


 どうやら同好会名を考えていなかったらしい……

 

「おいおい次期部長!」

「部長?」

「うふふ、言うなれば同好会長ですね」


 また余計なこと言っちゃったあ!!

 同好会長って何!? まぁあってるけど!

 今は口出すところじゃないでしょ私!


「生徒会長まで……!? うーん……【社会活動同好会】」


 ですよねぇ! 困惑しますよねぇ! ごめんなさい! 明君! あと! その同好会名気に入りました!


「主にどのようなことをするのですか?」


 一応生徒会長の仕事のため、何をするかだけ聞いておかなければならない。

 まぁ、どんな理由でも設立させる予定なのですけどね!


「えっと……キャンプ行ったり……登山活動とか……旅行行ったりとか……ゲーセン行ったりとか……」


 私の質問に明君が顔を挙げて答えてくれる。

 明君の顔と声がかっこよすぎて何も頭に入ってこない。

 本当にかっこいいですからね?? 声もいいですし。

 

「ふむふむ……いいですねキャンプに登山活動、サイクリングもいいですよね……まさに社会活動というべき活動です!」

「本当かよ……」


 明君に見とれほぼ聞いていなかったが、とりあえず社会活動同好会ということで、それらしいものを話しておいた。

 ただ大和君には若干疑われてるようで……


 とりあえず私は書き終えた紙とペンを明君からもらう。

 ペンがあたたかい……ずっと握っていたい。

 私は紙を見ると、メンバー欄と顧問枠に自分の名前と先生の名前を書いて再び明君に渡した。

 これで一緒の部活になれる!

 私はワクワクした思いを抑えながら接する。


「ありがとうございます!!」


 と私の手を 明君が握ってきた。

 !!!!!????

 心臓の鼓動が跳ね上がり、体が無性に熱くなる。


「え……その……は、はい。喜んでくれたならば良かったです……」


 さすがにこのままだとまずいです!

 私は顔を下に向け、今の表情を髪の毛で見えないようにした。

 いきなりそれはダメですよぅ! 明君!


「すみません!!」


 と手が離される。

 私は無意識に握られていた手を胸に包んだ。


「い、いえいえ、少しびっくりしただけです」


 正直、危なかったです……あのままいけば意識が飛ぶところでした……

 

「本当にすみません……それではよろしくお願いします」

「俺からもよろしく」


 え?あ。

 2人は早速立ち上がる。

 まだ話していたいのだが、もう要件は終わっている。

 なので呼び止めたところでこの思いがばれる危険性の方が高い。


「は……はい、わかりました。明日先生から報告あると思います」

「失礼しました!」


 私が言うとすぐに明君が走っていった。

 

「はわああ~私は幸せな生徒会長です~」


 私は握られた手を上に掲げながらクルクル回っている。

 

 「そうです! 明日の部活どうしましょう!? うーんこのままだといつぼろ出すか分かりませんね……明君に思いがばれてしまうと……絶対ウザがられますし……」


 私はおもむろに携帯を取り出した。

 【男の子が好きそうな人】

 

「これは……行けますね!! 私の心もばれずに済みそうです!」


 ということで、私は早速明日実践してみようと思うのだった。





≪明視点≫


 生徒会長と話した次の日。

 僕と大ちゃんは、先生に職員室まで呼び出される。

 どうやら同好会についてお話があるらしい。


「まさか私が顧問になるとは思わなかったけど、活動方針はまぁ社会を経験すること。を目的とした同好会で良いのかしら?」


 先生がメンバー表の紙を見ながら話している。


「はい、まぁ……そんな感じです」

「おう。基本はな」


 特に間違っていないので、僕と大ちゃんは頷いた。


「まさか生徒会長まで参加するとは思ってもみなかったけど……」


 やはりそうなのだろうか?

 てっきり先生に相談してから参加したのだと思っていたが……


「そうなんですか?」

「あの生徒会長は、基本、部活に参加しないし……この紙を見て先生一同動揺したわ」


 先生全員が驚愕したとなると……

 相当なレアケースなのだろう。

 てか部活参加しなくてもいいんかよ!


「まぁ……あの生徒会長が部活をしているのは、俺も想像できねぇなぁ」


 大ちゃんの意見もわかる。

 生徒会長が入る部活だとしたら……

 ん? 大体アニメとかの生徒会長って万能でなんでもできるのでは?

 けどあれか……性格的に無理がありそうでもある。


「とりあえず同好会用の部室は4階の旧準備室にしましょう。今はだれも使っていませんので」


 先生がカギを渡してくれた。

 4階は行ったことないので気になる。


「わかりました」

「じゃあ行くか」


 僕と大ちゃんは先生に頭を下げ職員室を後にした。

 実際まぁ……生徒会長が部活に参加するとは僕も思わなかったけど……


「ここ?」

「みたいだな」


 階段を上り、しばらく歩いていると、ようやく見つけた。

 階段から距離あるところだったので、なかなか大変だった。

 ガラガラ……


「はぁ……遅い、待ちくたびれたんだけど?」


 低い声が中から聞こえてきた。


「「え?」」


 僕と大ちゃんは同時に首をかしげる。

 そこに立っていたのは腕を組んだ生徒会長……なんだけど雰囲気が若干違うような?

 ちなみに部屋の広さは、普通に教室1個分はある大きさなのでかなり大きい。


「その……先生と話をしてて……」


 僕は恐る恐る話す。

 相当昨日のことを怒っているのだろう……


「ふーん。私とは話ししないんだ。お茶入れてきたら許してあげる」


 ?? あれ? 拗ねてる?

 え? 生徒会長って普段こんな性格!?

 清楚で可愛い生徒会長だと思っていたのに。

 まさかのドライでクールだった!?


「……おい明、なんか生徒会長の性格変わってないか??」

「……うん」


 大ちゃんの言うとおり。

 全然違う。

 しかし……ドライでクールな生徒会長も僕は大好きである。

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