第2話 社会活動同好会
放課後、僕と大ちゃんは教室で先生と向かい合っている。
「明君、大和君そろそろ部活決めたの?」
やっぱりそのことについてですよね。
結局、体験入部すら行けてないのだ。
「……えっと……」
僕は基本部活はしたくない。
家でゲームするのが好きな男なのだ。
「俺はまだ決めてないぜ。明と一緒に部活したいからな。一緒にするって決めたんだ」
初耳なんですけど。
そこまで僕にこだわる必要あるのだろうか?
「もう残ってるのは君たちだけだからね」
既にほかの生徒は全員部活に入っている。
まぁ、僕も好きな部活があれば入るが、この学校には僕の好きな部活がない。
そういえば部活って新たに作れたりするのだろうか?
「……部活って新たに作れませんか?」
部活を新たに作ることができるのであれば、それに越したことはない。
「うーん、少なくとも部活を作るには最低でもメンバーが10人以上、そして顧問の先生、さらに活動場所が必須になってきます」
先生が詳しく説明してくれる。
そういえばそういう規定あったような気がするようなしないような……
「めんどくさそうだな」
大ちゃんの言うとおり、今は2人なので10人集めるのは無理に近い。
「どうしようかなぁ……」
僕は両手を組み考える。
どうやら先生から提案があるようで。
「あくまでも部活の場合です。しかし大抵は、部活からではなく同好会から始めるのが一般的です。この学園は同好会を作るハードルが低いのでどうでしょう?」
同好会。
いわゆるサークル的な感じということだけは調べたことあるので知っている。
「どのくらい低いんだ?明でもできそうなのか?」
大ちゃんが代わりに質問してくれた。
「同好会の条件は部員3名以上に減ります」
え、めっちゃ減るじゃん。
そんなに緩いのか……
「あと1人か……」
それでもまだ残り1人空きがある。
うーむ……なかなか難しい課題だ。
「まぁ、生徒会長に相談するだけしてみてもいいかもしれないですね」
「明任せた」
大ちゃんがすぐさま耳打ちでささやいてきた。
絶対行きたくないんだろう。
「なんで僕が……!?」
行けない意味が分からない。
こういう役割は、いつも大ちゃんが進んでやってくれていた。
「ばっかやろう、あんな清楚で可愛い生徒会長を前に平常心で話せるかってんだよ」
まぁ……なんとなくそういう理由だとは思っていたけれども……
「僕そもそも、男女関係なく、話せないの分かってるよね?」
僕は大ちゃんに詰め寄っていく。
「だから言ってる。吹っ切れたら男女関係なく話せることも知ってる。俺は女としてみるから駄目だ」
くっ!! こいつなかなかやりやがる。
「まぁ、そういうことだから進展あったらまた担任である私に報告頂戴」
「は、はい。わかりました」
「それじゃあ頑張ってね~」
僕の返事に先生はそのまま手を振り教室を出て行った。
10分ほどたっただろうか、再び学校のチャイムが鳴り響く。
ようやく僕も決心がついた。
「てことで……」
僕は無造作に大ちゃんの手を掴む
「お、おい明? なんで俺の手を握って……」
僕は大ちゃんの顔を見てにっこり笑う。
そして……
「しばらく考えて吹っ切れた! 2人で行くよー!!」
「やめろおお!!!」
僕は叫ぶ大ちゃんを無視して、そのまま生徒会長室の前まで引っ張っていった。
そうして着いた生徒会長室前。
「おいおい……本当に話すのか??」
大ちゃんは意地でも入りたくないようだ。
「ここまで来たんだし行こうよ」
「明……ほんんっとに吹っ切れたら強いよな」
これ以上ここで話していても埒が明かないので、僕は心を鬼にする。
コンコン……
「はい」
ドアをノックした瞬間、生徒会長がドアを開けた。
あまりの速さに少しビビってしまう。
「生徒会長自らドアを開けなくても!」
僕はびっくりしたのと同時に、まさか生徒会長自らがドアを開けてくれるとは思わなかった。
「うふふ……いいのですよ。どうぞお入りください」
生徒会長が部屋に案内してくれた。
「失礼します」
「おじゃまするぜ」
「明君と大和君ですね、そちらに座っていてください」
僕と大ちゃんはゆっくりと中に入っていく。
生徒会室は綺麗に整頓されており、まさしく清楚な生徒会長!
とりあえず僕たちは生徒会長に言われたように、対角になっている3人座れるほどのソファに腰かけた。
2つのソファの間には机が置いてある
「お話は先生から聞かされております。同好会を作りたいとのことですね」
生徒会長が体面に座り話してくれた。
どうやら担任の先生からもう情報は届いているようだ。
ならば話が速い。
「はい、そうなんです。僕は人が多いところが苦手であと運動も苦手で……なかなかいい部活なくて……」
「おい明、そこまで自分を下げなくてもいいだろ。余計に通りずらくなるぞ」
途中で大ちゃんが止めてくる。
確かに少しブラック明が出てしまった……
「いえいえ、かまいませんよ。むしろいいお話を聞けました!」
生徒会長が身を乗り出しウィンクで僕のことを見てくる。
なにこの生徒会長。
かわいい……
ん? かわいい? なんで僕がそんなことを……?
僕は人見知り、女子のことなんか全然考えたことなんてなかったのに……
一目惚れは性格を変えてしまうのだろうか……
「とりあえずよ明、問題はまだ解決してないだろ? ほら同好会」
「あ、そうだった」
僕は再び生徒会長の方を向いた。
「そうですね、同好会は3人から設立可能です。一応この紙に部活名と名前を書いてください。今はまだ部として書けませんので、同好会って書いてくださいね」
僕と大ちゃんはそのまま名前を書いた。
ただし問題は1つだけ残っている。
「同好会名どうするんだ? 明」
「何も考えてない……」
いきなりの展開だったので何も考えていなかったのだ。
「おいおい次期部長!」
「部長?」
「うふふ、言うなれば同好会長ですね」
生徒会長まで乗ってきた。
「生徒会長まで……!? うーん……【社会活動同好会】」
僕は思いついた簡単な名前を書いた。
これならば一応自由に活動できるだろう。
「主にどのようなことをするのですか?」
「えっと……キャンプ行ったり……登山活動とか……旅行行ったりとか……ゲーセン行ったりとか……」
途中から何も考えず脳死で話していた。
「おいおいおい、最後遊びじゃねえか」
大ちゃんのツッコミで止まった。
確かにゲーセンはアウトか。
「ふむふむ……いいですねキャンプに登山活動、サイクリングもいいですよね……まさに社会活動というべき活動です!」
「本当かよ……」
本当にそれでいいのか生徒会長……
まぁ実際、大ちゃんと一緒の同好会を作るのは僕は大歓迎だ。
「書きましたか?」
生徒会長が首をかしげる。
「は、はい」
「では、紙とペンを……少しお借りしますね」
「え? はい」
僕は生徒会長に紙を渡した。
生徒会長は何かを書いている。
先生に2人でも同好会にできるようにお願いしてもらうのだろうか?
「先生に2人でも設立できるようにお願いしてくれるのか?」
大ちゃんが僕の思ったことを代わりに質問してくれた。
「それはできません。ですが……これならば可能じゃないですか?」
僕の前に紙を出される。
そこに書かれていたのは……
【社会活動同好会】
メンバー
・楠見昭(同好会会長)
・倉崎大和
・白崎真里奈
顧問・
「これって……」
「これで同好会設立できますね」
まさか生徒会長が入るとは思わなかった。
「まじかよ! 生徒会長!」
大ちゃんもびっくりしているようだ。
まぁ、それはそうだろう。
なにせ、この学校の生徒会長はみんなのアイドルみたいのものなのだから……
「ありがとうございます!!」
僕はおもむろに生徒会長の手を両手で握った。
ちなみにこの時僕は何も考えていない。
「え……その……は、はい。喜んでくれたならば良かったです……」
生徒会長がなぜか下を向いてしまう。
その時、僕のやっていることを頭で理解した。
「すみません!!」
僕は慌てて手を離した。
何をやってんだ僕は!!
「い、いえいえ、少しびっくりしただけです」
生徒会長は掴んでいた手を自分の胸に押し付けながら答えている。
相当嫌だったっぽい……
完全にやらかしてしまった……
「本当にすみません……それではよろしくお願いします」
「俺からもよろしく」
とりあえず、目標は達成した。
これ以上ここにいるのはまずいので早く出たい。
「は……はい、わかりました。明日先生から報告あると思います」
「失礼しました!」
僕と大ちゃんは、そのまま頭を下げて生徒会室から慌てて出て行くのであった。
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