第8話

 一度ノックしたきりお行儀よく待っている訪問者に、心当たりは無かった。

 作物を売りに出たきり帰って来ない村人を、近くの村から迎えに来た誰かという線も無いではない。しかし、それにしては早すぎる。


 少し悩み、僕はジャンヌを居間で待たせて応対することにした。


 玄関扉を開けると、目の前には白い壁のようなものがあった。

 見上げると、それが純白の全身鎧フルプレートであり、それを纏っているのが長身の青年であることが分かった。


 端正な顔立ちをした二十歳くらいの青年だ。

 涼やかな容貌には驚きと疑問が薄く浮かび、すぐに消える。


 片手にはフルフェイスヘルムを抱えており、他所の家を訪ねる上での最低限の礼儀に則るつもりはあるらしい。見事な装いといい、さっきの傭兵崩れの仲間ではなさそうだ。

 外ではチェインメイル姿の兵士たちが廃墟の町を慌ただしく駆け回っており、無人の町を調べているようだった。


 「突然の来訪をお詫びします。私は神聖騎士団にて“白騎士”の職位を賜る、リチャード・エインハウゼンです。この町の惨状についてジョン・ライヒハート氏に幾つかお尋ねしたく、お伺い致しました」


 彼は膝を突いて折り目正しく頭を下げ、常識と礼節を弁えた来訪者であることを示した。


 僕は敢えて表情を制御せず、内心の疑念を顔に出す。

 “神聖騎士団”なんて大仰な名前の騎士団は、少なくともこの国の王立騎士団の中には存在しないはずだ。


 ただ、騎士の職位は王権の下に与えられる正式な騎士爵位だけでなく、貴族が私設軍隊を作るときに「騎士団」と名付けたり、特別な功績を立てた兵士などに騎士を名乗らせたりと、割とバリエーションに富んでいる。


 つまり、騎士団に属する騎士であることと、高い公的身分を持つことは必ずしも一致しない。

 眼前の彼が纏う鎧は見事なもので重厚感があり、しかし所作は身軽そうで流れる水のように滑らかだ。本当に名のある騎士のように見えるが、だからこそ、この国の正規軍ではないと名乗ったことが気になった。


 「……不勉強で、神聖騎士団なんて組織には聞き覚えが無いのですが。どなたが設立された私設軍なのでしょう?」

 「今は亡き教皇フルンツベルグ二世聖下です」


 答える口調に淀みは無く、嘘の気配もない。

 しかし答えの内容は嘘のようなものだった。歴史を学ばなければ知らないような過去の偉人、それも教皇などと。


 「教皇の私設騎士団? そんな話は聞いたことが──」


 世界統一を目前にした大宗教である一神教。

 その総本山である教皇庁は、軍隊を一つだけ持っている。


 僕たちの国も、戦争中の他の国も含めて、ご近所はみんな一神教を国教にしている。セクトという微妙に教義の違う分派のところもあるけれど、大元は同じだ。


 信仰は道徳を生む。

 善も悪も神が規定するが故に、同じ神を信じる者同士であれば、同じ善悪観を共有できる。


 だから言葉が違っても、思考の論理は一致する。

 僕たちが善だと思うことは隣国の人にとっても善であり、悪も同じ。


 しかし異教徒は違う。

 奴らには言葉も通じないし、思考の論理も共通しない。


 奴らは何百年も前に、一神教の聖地とされる場所を占拠していた。

 そして教皇庁はその奪還を武力を以て果たすために、一神教を信じる全ての国から優秀な騎士を集め、遠征部隊を結成した。


 それが教皇庁──国家ならぬ宗教団体が保有する、一国の正規軍にも匹敵し得る武力組織。南方征伐騎士団。


 それだけだ。

 それ以上の武力保有を、周辺国家は望まず、認めなかった。


 ただでさえ五か国入り乱れての領土戦争で忙しいというのに、更なる新勢力が参入しては堪らない。

 何代か前の教皇は野心によって全ての国を同時に敵に回し、死んだ。詳しい死因も死亡時期の不明のまま、ただ死んで、結果として新騎士団創設は取りやめになった。


 そんな事件だか事故だかもあって、教皇庁は異教徒用の遠征軍以外を持っていない。……少なくとも公表されている限りでは。


 何の冗談かと笑い飛ばそうとした僕の言葉を、騎士リチャードは遮った。


 「貴方はライヒハート家のご継嗣ですね、シャルル・ライヒハート殿。御家はコルネリウス・ライヒハート殿の代より、我々神聖騎士団と深く係わりがあります。御父君にお目通り頂ければ、私が妄言を並べていないことはお分かり頂けるかと」

 「……父は身罷りました。今は僕がライヒハート家の当主です」


 表情を慎重に制御する。

 この場に於いて僕が浮かべるべき表情は、教皇の騎士を名乗る不審人物への不信感や、言葉を遮られたことへの不快感。そして亡き父を思っての悲哀。


 気取られてはならないのは、内心の不安感や敵愾心だ。

 教皇庁の騎士。存在しないはずの武力。そんな非常識が本当に存在するのなら、その目的は簡単に推察できる。


 ──同じ“非常識”に決まっている。


 「そう、でしたか。では貴方に、教皇庁のとして、正式に情報提供を依頼します。異端審問官シャルル・ライヒハート殿」


 彼は瞠目して声を震わせたが、それも一瞬だった。

 僕が見間違いかと思うくらいに一瞬で表情を制御し、涼やかな声を取り戻す。


 父のことを知っているだけでなく、面識もあったのだろう。

 その死を悼んでくれるのなら、僕も嬉しいが──喜んでもいられない。


 「……勿論、承りましょう。取り敢えず中へどうぞ」


 僕は半ば祈るような気持ちで、彼を居間に通した。


 いきなり賭けだ。

 ジャンヌが僕の説教を覚えていて、従おうという気になっていなければ僕の負け。彼は焼き尽くされるか、彼の話が本当ならもっと不味いことになる。


 幸いにして、彼女は数分前の話をきちんと覚えていたし、従うつもりもあった。

 居間に入った瞬間に彼が発火することはなく、ジャンヌは純白の鎧を纏った騎士を不審そうに一瞥して、その視線をそのまま僕にスライドした。


 「……こちらでお待ちください。ジャンヌ、部屋に戻って。大丈夫、彼は父さんを訪ねてきた客人だ」


 取り敢えず敵ではないことだけを優先して伝える。

 細かい話は後に回して、まずは彼女を遠ざけなければ。


 ジャンヌはいつ爆発するか分からない危険物だ。

 人間との接触は、そのまま火気への接近──爆発する可能性を高めることと同義。今は彼女を速やかに隔離することが、僕たち全員の安全に繋がる。


 しかし、僕の目論見は一瞬で潰えた。


 「お待ちを。彼女は使用人ですか?」


 騎士は悠然と立ったまま、静かに呼び止める。

 ジャンヌはまだ部屋を出るどころか動いてさえおらず、聞こえなかったフリをするには無理があった。


 不思議そうに小首を傾げ、金色の髪を揺らす彼女の目には、殺意の昏さと、憎悪を晴らせる歓喜の煌めきが同居していた。


 僕はさりげなく立ち位置を変え、ジャンヌとリチャード卿の間に割り込む。

 ジャンヌの魔術の詳細はまだ未検証だが、視界を遮った程度では防げないのは分かり切っている。でなければ町全体を、そして建物内の人間をも一息に焼くことは出来ない。


 だからこれは、リチャード卿の視線を遮る意味が大きかった。


 「……いえ、父が寒村で買ってきた口減らしの子です。騎士様に給仕できるほどの教育を受けておりませんので、これも無作法ではありますが、僕がおもてなしを」


 貫禄も威厳も無いだろうが、これでも今は僕がホストだ。その意識が半自動的に台詞と振る舞いを決定する。

 詳しいことは分からないが、彼には“ライヒハート家”に対して礼儀を持って接する理由があるようだし、身体に染みついた教育が無くとも、僕は合理的判断による保身のため、“ライヒハート家当主”としての振る舞いをするのが得策だった。


 幸い、母は本物の貴族に作法や舞踏を教える教師だった。

 その薫陶を受けた僕も、貴族ばかりの社交界に混じっても「よく躾けられた子供」程度には見て貰える所作を身に着けている。全身鎧を着ているというのに動作に際して殆ど雑音を立てないリチャード卿には、流石に劣るけれど。


 そんな彼は涼しげな表情を崩さず、しかし実験体を検分する父のような無感動ながら鋭い眼光で、じっとジャンヌを見つめていた。


 「……」

 「……エインハウゼン卿?」


 無言のまま数秒は動かなかった彼に、僕は怪訝そうな笑顔を作って声を掛ける。

 振り向かずとも、ジャンヌが死ぬほど不愉快そうなのは察せられた。死ぬのは彼だ。運が悪ければ僕も巻き込まれるけれど。


 ややあって、彼はホストの意向を曲げることを目で詫びながら言った。


 「作法は気にしませんので、彼女に給仕を頼めますか。貴方とは落ち着いて話がしたい」

 「……ええ、貴方が構わないのであれば。ジャンヌ、紅茶を淹れてきてくれる? 僕も飲むから、カップは二つ……いや、三つで」


 僕とジャンヌ自身も飲むことになると言い添える。

 彼女が食べ物を粗末にする性格でないことは知っているが、殺意をセーブさせたのはこれが初めてだ。ないと信じたいが、雑巾の搾り汁とか、父の研究室から適当に選んできた薬を入れられたら非常に困る。


 しかし、僕のそんな懸念は彼女に失礼だった。

 ジャンヌは憎悪で動く大量殺戮者だが、知恵なき獣ではない。自分より賢い人間の判断に従うほうが賢明だと考えるだけの知性はあるし、状況が分からないのなら、まずそれを把握するという選択も出来る。


 彼女は「はい、坊ちゃん」と僕の演技に即興で合わせつつ、そこそこの作法で、そこそこの出来の紅茶を持ってきた。


 僕とリチャード卿はローテーブルを挟んだソファに向かい合って座り、ジャンヌは僕の後ろに使用人のように控える。

 正直、彼女の表情や姿勢を視界から外すのは不安だったが、これ以外の配置は不自然だ。彼女の自制心と演技力を信じるしかない。


 早鐘を打つ心臓と浅くなりそうな呼吸を、紅茶を飲んで落ち着かせる。


 先んじて口を開いたのはリチャード卿だった。


 「御父上から、我々のことは?」

 「いえ、何も。未だ若輩の身ゆえ、教えるには至らぬと判断されたのでしょう。差し支えなければ、ご教示頂いても?」


 残念ながら、ここは素直に出るしかない。

 多少は聞いているようなフリをするにしても、情報不足下での演技には限界がある。


 それに、相手は秘密組織だ。その存在に対し緘口令を敷いていたとしても不思議はないし、それが破られていたと思われたら、「ライヒハート家に価値無し」と思われる可能性がある。


 そもそも現状の最優先は情報を得ることだ。

 僕の中にある嫌な仮説を確定させてしまいたい。それなりに確度の高い仮説なので、棄却されることは半ば諦めている。あと欲しいのは覚悟だ。


 彼は頷き、勿体ぶることもなく説明をくれた。


 「我々“神聖騎士団”は、古く──およそ600年前から魔女と戦い、人類を守護している秘密組織です。魔女という危険な存在の跳梁を防ぎ、その存在を余人の目に触れさせぬよう闇の中に葬り去る。“白騎士”はその中でも特に優れた武勇を誇る、28人の騎士のことです」


 表情の制御が遅れた。

 とんでもなく嫌なことを聞いて、眉根が寄るのが自分でも分かったほどだ。


 しかし幸いにして、リチャード卿はそれを疑問の表出と受け取ってくれたらしい。


 「ライヒハート卿──いえ、貴方の曾祖父コルネリウス殿は、我々の戦術・技術顧問として多大な貢献をされたそうです。それ以来、ライヒハート家は神聖騎士団の一員として、魔女と戦ってきた我らの同志なのです」


 「それがどうしてライヒハート家に繋がるのか」という疑問は確かにあったし、彼の補足説明は有難かった。

 五歳の子供に断頭剣を持たせて罪人を処刑させるほど後進育成に熱心だった父が、そんな大層な使命を僕に伝えなかったのは不可解だが……まあ、本当に緘口令が敷かれていたのかもしれない。


 それはいい。

 問題は仮説が補強されてしまったことだ。いよいよ覚悟を決めるしかないのだろう。


 僕は困ったような笑みを浮かべ、肩を竦めてみせた。


 「……エインハウゼン卿、冗談は止してください。魔女の存在を秘匿するなんて、もう既に大失敗しているではありませんか。そんな秘密組織があったとして──」

 「この町で何が起こったのか、ご説明頂けますか?」


 言葉を遮られ、必死に表情を制御する。

 苦々しく歪みそうだったのは押さえつけた。だが押さえつけたことまでは隠せなかった。


 敢えて不快感を薄く滲ませて、言葉を遮る無作法が気に障ったように見せかける。年上の、恐らく社交経験も豊富だろう相手に通じるかは微妙だが。


 「……恐らく火事ではないかと。四日ほど前です。朝、目が覚めたら町はこんな有様で、町の人は誰も居なくなっていました」


 全く不可思議だと言わんばかりの表情を作り、なるべく何も語らずに済む言い訳をする。

 これなら何を訊かれても「知らん」「分からん」で押し通せるし、嘘に嘘を重ねていくリスクがないぶんバレにくい。


 「火事? 他の家や人、家畜までもが悉く炎に巻かれ、この屋敷と貴方たちだけが無事に済むなどということが、ただの火事で考えられますか?」


 彼は案の定、涼しげな表情を不愉快そうに歪めて僕を一瞥した。

 しかし、その追及は予想の範疇であり、返す言い訳は用意済みだ。


 「そりゃあ、火事以外に有り得ないのでは? 町が全焼しながらも、この屋敷と僕たちだけが助かったのは奇跡的ですね。神のご加護か、御使いの守護でもあったのでしょう」


 僕は大真面目な顔を作って言ったが、残念ながら、リチャード卿は「まあそうか」とは頷いてくれなかった。


 「……我々“神聖騎士団”が追う魔女とは、人類を深く憎んで死んだ人間が悪魔の力で蘇ったモノのことを指します。市井に蔓延している“魔女狩り”の“魔女”とは全く違い、通常の異端審問で見分けることは極めて難しい存在です」


 怪訝そうな表情を作りながら、僕は彼の言葉に逆に「まあそうか」と思わされた。

 異端審問で露見しにくいなんて、そりゃあそうだ。異端審問しようとしても、拘束する前に審問官がブチ殺されるのがオチだろう。


 ……と、そういう意味で納得したわけではない。

 

 ジャンヌ以外にも“魔女”が居るのだ、やはり。──と、そういう納得に落ちた。


 「奴らは権能や魔術と呼ばれる特殊な、極めて殺傷性の高い能力を持ちます。それは死因と深く関係があり……確かこの町では、魔女狩りの贄になった者を火刑にしていたそうですね?」


 落ち着け、と何度も自分に言い聞かせる。

 無知を装え。知識に蓋をしろ。既に知っている異常を、受け入れた非常識を、もう一度異常なものとして捉え直せ。


 魔女の存在を知っていると知られてはならない。

 この町で生き残っているのは僕とジャンヌの二人だけ。


 子供二人。

 「怪しいから殺しておこう」が十分に可能だ。怪しまれたら終わりと思って損はない。

 

 「……死者の蘇生? 特殊能力? エインハウゼン卿、僕はさっき冗談はやめろと──」

 「我々は魔女が権能を行使したとき、その大まかな位置を啓示という形で知らされます。この町に魔女がいるのはほぼ確実であり──ライヒハート殿、貴方は少し賢し過ぎるようだ」


 呆れ笑いの仮面が凍り付いたのが自分でも分かった。

 僕を見つめる涼やかな視線は今や温度を失い、打ち込み稽古の的か、解剖台に乗せられた検体でも見るような無感情だ。


 背後のジャンヌは未だ状況を理解していないのか、動き出す気配も感じられないのが幸いだった。不幸中の、ではあるけれど。


 何故、なんて、意味のない思考が頭の中を駆け巡る。

 どうしてバレたのかなんて考えるだけ無駄であり、そんな余裕はない。最優先すべきは次にどうするかなのに、思考がそこに至らない。理由を探して空転する。


 「……光栄ではありますが、何故です?」

 「これほど荒唐無稽な話をして、貴方は尚も私を警戒している。貴方の吐いた言葉に具体的な違和感や嘘の気配はありませんでしたが、姿勢や重心位置、視線、身振りなどを観察すれば、そのくらいは分かります」


 ふ、と薄く笑みが零れた。


 ほんの僅かな表情筋の反応や無意識の所作から内心を読み取る技術は、母も含めて社交界に慣れた人間はある程度の精度で身に着けている。

 そして姿勢と視線から相手の強さや次の行動を読む技術は、僕に護身剣術を教えてくれていた先生が使えた。


 だから現役の、それも教皇庁に仕えるという騎士も、当然それが使えると思っておくべきだった。


 だが事前に知っていたとしても、結果はきっと変わらなかっただろう。僕に彼を欺くだけの演技力はない。


 「貴方は魔女の存在を知っている。そしてそれ故に、“白騎士”という存在が現実的であると理解してしまっていた。……誤魔化すのなら私の話した内容ではなく、私の素性を疑うべきでしたね」

 「──あぁ、なるほど。仰る通りだ」


 答え合わせに、僕は笑ったまま頷くしかなかった。

 どうやら演技力だけでなく、思考までもが足りていなかったらしい。


 「魔女という常識外の存在を知らなければ、教皇の騎士などという、同じく常識外の存在も受け入れがたいものでしょう。事実、私はこれまでに何度も素性を疑われ、時には僭称の謗りを受けることもありました」


 リチャード卿は勝ち誇るでもなく、淡々と語る。

 彼にとって僕の欺瞞を見抜く程度、何ら誇ることでないのは分かる。しかし、それにしても、いくら何でも無機質過ぎた。


 まるで内心の感情を意識して抑え込んでいるかのよう。


 「貴方は賢い。しかしその賢さと、魔女の存在を知っていたが故に、貴方は“魔女を狩るモノ”が存在することを当然のことと受け入れてしまった」


 僕は長く、深々と嘆息した。


 彼の言う通りだ。

 僕はジャンヌのような特殊存在が、彼女の一例だけだとは思っていなかった。いるという確証は無かったが、いてもおかしくはないし、いざ対面した時に驚かない自信くらいはあった。


 そしてその仮説が正しかった場合、彼のような存在もいるだろうとは思っていた。


 「ライヒハート殿。……いや、、どうか落ち着いて、そして腹を割って話をしよう」


 リチャード卿は親身そうに、言葉だけでなく涼やかな表情までも僅かに崩す。

 彼は明らかに僕に対して歩み寄る姿勢を見せ、僅かながら同情や憐憫といった感情さえ覗かせていた。


 


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