(20)プランB

 私たちの作戦はとてもシンプル。


 クラゲを見ている人たちの気をひいて、誰も見ていないうちにドローンをセットして、映像を投影。以上。


 でも、こんなに人目があるとは想像していないかった。クラゲの鑑賞スペースは入り口が少しすぼまっていて、奥に行くにつれて丸く広がっていく。そこにぎゅっ、と人が詰まっていて、人の流れがうっすらとできていた。


 ドローンを飛ばしても、すぐに見つかる。水槽の前で待機していたら、私がやったってバレる。


 捕まって、通報されて、さらされて、見世物になって、私と朝日の一夏の思い出はおしまい。


 そんなのは、いやだ。


 ゆえに、だからこその。


「プランB。プランBに変更です」


 耳元が、ざわざわしだした。


「あらま。でもお姉さん了解。飛行プログラム書き換えとくねー」

「えぇ! また俺のやることが増える……」

「文句言わないの! マー君、さっさとお願いね」

「人に物頼む感じじゃないだろそれ……」

「では各自、移動をお願いします」


 朝日の手を引いて、少し離れた通用口へ。堂々としていれば意外とバレないものだとマー君が言っていた。やや頼りないが、その言葉を信じて、さも自然を装ってバックヤードに入る。


 誰にも、なにも言われなかった。


「なんか、ドキドキするね」


 朝日が目を爛々と輝かせている。まずい。ちょっと幸せ。この顔が見られただけで十分かもしれない。


「気を引き締めていこう」


 自分に言い聞かせるように、バックヤードを進む。


 目指すはペンギン館。プランB——別名絨毯爆撃作戦のスタートだ。

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