(15)私が勝ったら

「どーしても、花火大会の日じゃないといけない?」


 戻って早々、お姉さんがゴネた。


「ダメです。満場一致です」

「満場なんてどこにもなかったよ。マー君だって渋々だったじゃない」

「なにか不都合でもあるんです、お姉さま?」


 不都合というか、とお姉さんが頭をかいた。言いあぐねていることがある、といったご様子。私に対してか、みんなに対してか、両方か。


「当日はも多そうだし、うってつけだと思うの。お姉さまは、反対?」


 朝日が猫背になった。上目遣いでお姉さんに迫る。当のお姉さんは顔を引き攣らせ、あとずさりしている。


「でもねでもね、お姉さん的にはあまり目立つのもどうかなー、なんて思ったり。それにさ、年に一回の花火大会なんだし、あなたたちも普通に楽しんだほうがいいんじゃない?」

「そっすよね!」


 すかさずマー君が助太刀に入る。往生際の悪いことに、まだ諦めていなかったらしい。


「マー君?」

「お姉さん一度決まったことですから観念しましょう土曜日です決行は土曜日」


 朝日の一声で離反はすぐに裁かれた。尻に敷かれてるなぁ、マー君。


「昔っからある花火大会ですから、今さら特別感もなにもないですよ」

「でも、ほら。今年は真新しい出し物とかやるかも」

「なんでそんなことわかるんですか?」

「ええとええと……あっ、ほら! 私ってば未来から……来てたらいいなぁ」


 話してる途中で、朝日とマー君に未来人設定を明かしていないと気づいたようだ。別に言ったところで状況が好転するわけでもないが、これ以上のカオスは避けたい。


「なんだったら、ドローンだけ貸してもらえれば、あとは私たちだけでやりますけど」

「そのドローンがなぁ……」


 この後に及んでまだ、お姉さんは煮え切らない。隠しごとが多いから、にっちもさっちもいかなくなるのだ。


「お姉さん、麻雀に自信ありましたよね」

「なになに、急にどうしたの」


 息を深く吸い込む。ちらりと朝日、そしてマー君を見た。2人ともきょとんとしている。私がなにを言い出すか、見当もついていないようだ。


「明日また、麻雀しましょう。それで私が勝ったら、決行は土曜日で」


 えっ、と3人の声が重なった。

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