脇役

「自由ですか?」


俺に君は問いかける。

――そんなわけ、ないじゃないか。

毎日作りたくもない笑顔を作って、使われたい時に使われて。

俺は、この世界の奴隷だ。

ここにいる限り、誰かが俺を認めてくれることはない。

愛してくれることはない。

この世はいつも、残酷だ。


さぁ、今日も朝が来る。

どうってことないことで笑って、使われる。

使うだなんて俺が勘違いしているだけかもしれない。

そう思ってしまっているだけだ。

あぁ、退屈だな。

笑う必要のないことで笑い、必要のないことを口にする。

俺の日常は変わらないのだろう。

一生、ずっと。


それは、勘違いだった。

俺はこき使われる奴隷ではなかった。

強制されて、動くだけの道具じゃなかった。

だって、君がこう言ってくれたから。


「頑張ってるな。ありがとう。」


今まで、雇い主と奴隷の関係だと思っていた。

というか、それしかないと思っていた。

だって、君らは輝いているのに比べ、俺の輝きは、張りぼての偽物だから。

俺に君らといられる資格なんてない。

そう思ってた。

でも、それは違った。

俺も、みんなの力になれるんだ。

俺も、輝けるんだ。

君たちみたいな輝きじゃない。

そんな、輝かしいものじゃない。

でも、俺だって自分のやり方で輝くことはできる。

君たちみたいな一等星イチバンボシじゃなくていい。

そんなまばゆい光を放たなくてもいい。

君たちがこの世界の主役だ。

それは覆すことのできない事実。

でも、この世界で輝けるのは、何も主役だけじゃない。

俺は紛れもない脇役だ。

あったってなくたって変わらない存在。

でも、俺はこの時代を生きている。

脇役なりに、努力して。

真ん中センターで輝く君たちに勝つことなんてできない。

でも、俺だって光りたい。

主役がそばにいるからって遠慮したくない。

俺も、一人の人間なんだから。

だから――脇役も光って、いいですか?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る