イルミネーション


「綺麗っ……!」


僕の隣で君がつぶやく。

この想いを伝えたい。

でも、伝える方法がない。

だって、言葉に表せることが出来ないほど、君は輝いていたから。

灯るイルミネーションよりも、ずっと、ずっと。


突然君が僕に告白してきた時は、何事かと思った。

だって、クラス最底辺の僕と、クラス最上位の君。

明らかに正反対で、関わることの無い関係。

――だと思っていた。

なのに、君は僕に告白してきた。

少し考えた。

聞いたことがある。

「下の人は上に、上の人は下に憧れる。」

僕はこの意味がイマイチ分からなかった。

でも、もしかしたら。

君はあそこにいるのが辛かったのかもしれない。

もう、「クラス最上位」としての君を消したかったのかもしれない。

「クラス最底辺」に憧れたのかもしれない。

僕は、君の彼氏になった。


イルミネーションを知っているだろうか。

よく、木の周りに装飾されて景観を明るく照らす、あの電飾だ。

僕は、あの木だと思ってた。

木の周りにつけてあるって言ったって、実際目立つのはイルミネーションの光。

木ではない。

僕は一生輝かない。

そんなことから、僕はどちらかと言えば木だと思っていた。

――それは、ただの固定観念だった。

イルミネーションの光は、綺麗だけれど、あくまで木の引き立て役だ。

僕は、君の隣に立ってその事を知った。

クラス最上位の君は、当然輝くものだと思ってた。

でも、それは勘違い。

君は、周囲を明るく素敵に照らしていた。

君というライトが当たると、僕という木も美しく輝くことが出来た。

君のおかげで。

君が照らしてくれたから。

君は、僕のおかげで生きていられたってよく言う。

僕のおかげで強くなれた、本当の自分を見つけられたって。

それはね、僕が君に思っていることと全く一緒なんだよ。

僕は、君のおかげでこの世界を知った。

君のライトで、この世界が輝いて見えた。

君が、光をくれたから。

最愛の君に、今度は僕から。

イルミネーションが輝く中、僕はきちんと君に向き合う。

そして、口を開いた。


「結婚、してください。」


この夜、君というイルミネーションはいつもの数倍の、輝かしい光を放った。

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